和泉式部日記(上)全訳注 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061584730

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  • 長年本棚に入れっぱなしになっていた。確か何年か前に上巻の半ばで投げ出した記憶がある。その理由については忘れていたが、今回読み始めて思い出した。
    冒頭、一段に添えて著者が書いた「参考」がとにかく長い。
    数行しかない一段とその訳は2ページなのだが、その後延々47ページも解説が続く。その内容は一段そのものについてというよりは和泉式部日記全体を鑑賞するうえで関わってくる情報で、和泉自身のことや恋人の師宮について、また当時の時代背景や文化意識など様々なことに亘る。確かに重要な情報ではあるのだが、単に「和泉式部日記」の内容を知りたい私はかなり面食らった。
    同じ講談社文庫から出ている「更級日記」や「蜻蛉日記」にも勿論語釈や鑑賞の参考情報はあるが、せいぜい一段について数ページ。5ページを超えれば、多いなと思うくらいだった。そういった形式に慣れていたので、著者がここまで前に出てくるのには抵抗を覚え、また「早く先を読みたいのに」という気持ちもあって早々に投げ出した。
    しかし「大鏡」同様、今回はその著者の解説含め、不思議とすらすら読めた。
    著者の饒舌さに慣れれば、他の作品と比較して当時の文化を解説してくれたり、和泉や師宮の歌が材をとった漢詩や古歌を記してくれたりと、なかなか楽しい。
    「日記」そのものについては、和泉と師宮の恋の駆け引きがいい。この日記がそもそも師宮との愛について記されたものなので、他の「日記」群よりも、人の恋文を読んでいる楽しさがある。それにしても二人の仲が深まるのが思ったよりゆっくりなのには驚いたな。
    あと、和泉が歌の中で時折見せる積極的な姿に、読んでいて何度かはっとした。平安女性の恋歌というともっと婉曲的なものという印象があったので、彼女の真っ直ぐな言葉には驚かせられる。
    山ごもりしてる時に師宮に贈った「試みにおのが心も試みむいざや都へと来て誘いみよ」とかね。

  • 平安時代を代表する歌人である和泉式部にふさわしく、日記のなかに和歌の贈答の場面が頻出。

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著者プロフィール

大正11(1922)年、 東京市小石川区(現東京都文京区)で生まれる。昭和23(1948)年、東京文理科大学文学部文学科国語学国文学専攻卒業。元跡見学園短期大学教授。著書に、『校註伊勢集』(昭和27年・共著)、『和泉式部集全釈』(昭和34年・共著)、『寝覚物語全釈』(昭和35年・共著)(昭和47年)、『和泉式部日記全訳注』(講談社学術文庫)(昭和55〜60年)、『和泉式部の研究 日記・家集を中心に』(笠間書院)(平成7年)等。

「2012年 『和泉式部集全釈 続集篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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