- Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061585126
感想・レビュー・書評
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身体と悟り、智慧の関係を考えたい人は必読だと思われます。
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東洋の伝統的な思想や芸道のなかで語られてきた「勘」をめぐって、心理学の立場から考察をおこなっている本です。
著者は、「心理学をもって自証あるいはもっとくわしく言うと自内証の事実を記述する学であると見る」と述べており、内観の心理学に近い立場に立っています。ただし、自証の対象となるのは「識」と「覚」の二つの領域に区分され、全体性や含蓄性といった性格をもち無意識につながっている「覚」において「勘」の働きが認められると論じています。著者は、ジェイムズに倣って意識の表層を流れる「実質的部分」とその底を流れる「推移的部分」を区別し、この二つの観点から「覚」の具体的な働きかたを解明することをめざすみずからの立場を「立体心理学」と呼んでいます。
本書の中心的なテーマは、この「立体心理学」の立場から「勘」とはなにかを明らかにすることです。著者は、沢庵禅師の『不動智神妙録』や世阿弥の芸能論における「無心」や荘子の「無為」、臨済の「無事」などの思想をとりあげ、「勘」の具体的な働きが東洋の伝統的な思想のうちでどのように語られてきたのかということを紹介するとともに、その心理学的な意義について考察をおこなっています。
「覚」は「識」とともにわれわれに親しく体験されるものであり、内に証しうるものであると著者はいいます。そして、「覚」の働きにおいて物の真の姿が認得され、その姿におうじてわれわれの心が正しい働きをするときに自在の境地に到達することができると考えており、「勘」をこのような特殊な認識作用として理解することができると考えています。
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