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- / ISBN・EAN: 9784061585379
感想・レビュー・書評
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前著『勘の研究』への批判に対する反論をおこなうとともに、「勘」の働きについてより広い観点から考察をおこなっている本です。
『勘の研究』への批判として、哲学者の高山岩男から寄せられたものがとりあげられています。高山は、著者の心理学上の立場が現象学におけるノエマだけを対象としており、ノエシスの位置づけが明確にされていないことへの不満を語っていたようです。ただ、著者は「自証において主観と客観とを認めるのは、……二元の対立を仮定する意味ではない。直接与件としての自証の事実を、あるがままに記述したにすぎないのである」と述べており、意識現象を内観によって把握するという、哲学的にはやや素朴な立場に立っており、議論はすれちがいに終わっているように思われます。
また本書では、「那一点」という概念についての考察がおこなわれており、「那一点」とはものごとの「急所」「甲所」(かんどころ)であるという見かたが提出されます。そのうえで、主体と対象との交渉がおこなわれる実践的な場面において「那一点」を把捉することが、たとえば骨董や俳句といった具体的な活動のなかでなされていると論じられています。
このほか、複数のタスクを同時におこなうという課題を被験者に課し、内省可能な「識」と内省は不可能だが自証することのできる「覚」を区別することで、そのときの被験者の意識の働きかたについて考察をおこなっています。これなどは、やや突飛な試みのようにも思えますが、おおむね前著で示された「勘」についての理解にもとづいて、より掘り下げた議論がなされており、おもしろく読みました。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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