徒然草を読む (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061587199

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  • 『徒然草』の序段は、次のような言葉で始まる。「つれづれなるままに、日ぐらし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」。これに対して、第75段には「つれづれわぶる人は、いかなる心ならん」という言葉が置かれている。ここに著者は、兼好の「つれづれ」理解の深まりを読み取る。もの狂おしさと一つになっていた「つれづれ」から、「わぶ」という心理的条件が消し去られたのである。そしてこのとき、「無聊の否定の中から、閑暇という虚の空間があらわれる」のだと言う。ここに著者は、兼好の特異な時間意識を見いだそうとしている。「つれづれ」そのものに徹することで、時間が透明化され、閑暇を「しばらく楽しぶ」境地が開かれてくるのだと言う。

    こうした兼好の時間意識を、著者は『一言芳談』のそれと比較している。『一言芳談』が語っているのは、現世の空しさを言い立て、ただ後世の到来を願う「後世者」たちの生き方である。しかし兼好には、後世を頼んで現世を否定するような態度は見られない。逆に、一期は不定と思い定めた人の、ひたすら死までの短い時間をいとおしむ姿が認められると著者は述べている。

    さらに著者は、こうして死までの切迫した生を生きる兼好の、名、色欲、味わいといった「楽欲」に対する柔軟な態度や、名人・達人の生き方への共感、さらには、峻厳な覚悟を持って仏道を志した盛親、性空、明恵といった人びとに対する敬意について考察している。

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