東洋の理想 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061587205

作品紹介・あらすじ

西洋の先進文明が怒涛のように我が国に押しよせてきた明治近代黎明期に、当時の知性の代表者のひとり岡倉天心は敢然と東洋の素晴らしさを主張した。有名な「アジアは一つ」の文章から起こし、インドに発する仏教、中国における儒教等に言及しながら、それらの宗教がいかに日本の美術と融合し発展し新たな伝統文化を生成したかを論じる。「我々の歴史の中に我々の新生の泉がある」とする本書は日本文化の本質を再確認させる名著である。

感想・レビュー・書評

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  • 「アジアは一つである」から始まる日本文化史を俯瞰する一冊。訳出が回りくどいせいか、言葉は平易でも内容が理解しにくいのが残念。




  • 講談社学術文庫
    岡倉天心 「東洋の理想」


    日本の芸術の中に 東洋の理想たるアジアの思想を見出した芸術史の本。序文「アジアは一つである」の意味は 文化や政治の一体性というより 思想の共通性を言っているのだと思う


    飛鳥時代に中国やインドから思想や文化を輸入してから、徳川時代に至るまで その影響を受けつつ、明治時代にヨーロッパの科学に接近したという流れ



    明治時代の脱亜入欧を批判しつつ、弱体化したアジア回復のために、日本が中心となれ という論調。政治的なメッセージも含まれているが、大東亜につなげて読むのは拡大解釈だと思う








    本の意図は、日本は 大陸から孤立した島国でありながら、征服されなかったことにより、アジアの理想(思想や芸術)が 貯蔵されており、日本の芸術から 一つのアジアを見るということ


    平安時代まで 仏教などアジアの影響を受けながら、鎌倉時代の「もののあわれ」あたりからアジアと日本の境目がなくなっていき、浪漫主義や民衆芸術を経て、明治時代で アジアの理想から離れ、ヨーロッパの科学に接近する構成


    明治時代において、ヨーロッパの脅威が強まり、アジアの二大強国(中国とインド)がヨーロッパに征圧されると、新しいアジアの強国としての日本の使命に目覚め、アジアの回復という政治的なメッセージも入ってくる


    日本の目覚めは結文「われわれの歴史の中にわれわれの未来の秘密が隠されている〜大いなる声が聞こえてくるのは、この民族の千古の道筋を通って、アジアのものからでなければならない。内からの勝利か、外からの強大な死か」に込められている


  • 開国以後、西洋の文化を積極的に取り入れてきた日本の姿勢に待ったをかけたのが、国粋主義者をはじめとしたグループだった。しかし、彼らは西洋の芸術を否定したのではない。あくまで日本の文化を主として、西洋の文化を参考にするべきだと唱えた。本書を読むと、いかに日本が仏教の影響を受けてきたかが分かる。飛鳥時代から平安時代に至る予備的な時代を経て、藤原氏の時代に日本は大陸の文化を自国に調和させていった。鎌倉・足利時代はとくに禅宗が隆盛した時代である。徳川時代、芸術はマンネリ化の様子をみせるが、明治維新は古代の文化を復興する転機であった。

  • 我々の歴史の中に我々の新生の泉がある」とする本書。日本文化の本質とは何か?今一度、再確認させられます。

  • 仏教を中心にして書く。
    アジア全体の文化史。
    どこからその文様やら思考やらは生まれ、どこでどんな発展をして、日本ではどう受け入れられたのか。
    岡倉天心が各時代の文化をどう見ているのかが印象深い。
    最後にある明治時代、展望という2つの章にも考えさせられる。
    富国強兵の後、日本はどんな状態で戦争へと突入したのか。
    戦前の状況とはどんなものだったのか。

  • 西洋文化をコケにしている本?
    あるいは、日本文化の優位性を強調した本?
    根性はいっとるから面白い!!

  • 日本文化を東洋文化全体の流れの中に位置づけ、西洋と対比された「東洋の理想」を闡明する。「アジアは一つである」という宣言がのちの大アジア主義に与えたインスピレーションの問題もあるが、中々面白い著作。

  • ・「アジアは一つである」をテーマに日本の文化について中国やインドの学問、宗教からの影響を時代を追って解釈している。
    ・アジア文化の歴史的な富を唯一日本でのみ知ることができる、とする点は、現代人の我々の意識にあるのだろうか。
    ・日本の文化を欧州文化と比較するところはテーマが壮大。明治時代をルネサンスと重ねる視点も面白い。
    ・宗教や芸術に関する史実の知識がないと読んでいて深まらない(未消化状態になる)。知識欲求を刺激する本だ。

  • 「アジアは一つである」という有名な一文から始まる、岡倉天心作の日本文化論。読者の側に、一定の教養を要求される。その意味では、私個人はまだ読者足りうる資格を有していないと痛感。
    それにしても、今から150年前にこれだけの国際感覚、深い教養を備え、その上に日本人としての自尊心を兼ね備えている人物が存在していたことには脱帽としかいいようがない。もっと教養をつみ、自分を研鑽していかなければ、と発破をかけてくれる一冊でもある。

  • 低評価ですみません。
    面白く感じなかったのは
    私の興味のない事柄だったのと
    私の知識不足によるもので、
    本のせいではありません。
    でも高く評価されている名著と名高い本なので
    今更私が背伸びして高評価を与えなくても
    この本は全くびくともしないと信じます。

    と、書きながらも、やはり文章は退屈だと思う。
    まー、書かれた時代、また英語で書かれた本ということで
    ある程度は間引きするべきなんだろうけど。
    私は内容のみならず読みやすさ(や時には装丁)も
    ここでの評価対象としているので。

    資料としては素晴らしいと思うし、
    日本史とアジア美術が好きな人にとっては興味深いのでは。
    最後の章「展望」だけは面白く読みました。

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著者プロフィール

1863~1913年 美術評論家・思想家。本名は覚三。文明開化の風潮の中で、フェノロサとともに日本美術の復興に尽くした。東京美術学校開設に尽力し、のち校長となる。その後、日本美術院を創立し、明治日本画家の指導者として活躍、ボストン美術館中国日本美術部長などを務める。英文著書による日本文化の紹介者としても知られる。著書は本書を構成する『茶の本』『日本の覚醒』に加え、『東洋の理想』の三冊が代表作。

「2021年 『茶の本 日本の覚醒 矜持の深奥』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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