五輪書 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061587359

作品紹介・あらすじ

一切の甘えを切り捨て、ひたすら剣の道に生きた絶対不敗の武芸者宮本武蔵。武蔵は、「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす」る何十年にも亙る烈しい朝鍛夕錬の稽古と自らの生命懸けの体験を通して「万里一空」の兵法の極意を究め、その真髄を『五輪書』に遺した。本書は、二天一流の達人宮本武蔵の兵法の奥儀や人生観を知りたいと思う人々のために、『五輪書』の原文に現代語訳と解説、さらに「兵法35箇条」「独行道」を付した。

感想・レビュー・書評

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  • 五輪書は、不敗の書である。
    二十八まで、六十余回勝負したが、一度も負けなかった。
    武蔵はそれを、たまたま理にかなっていたか、相手が弱かったに過ぎないと言い切っている。
    そして、後半生をかけて、武道と向き合い、その奥義を、「五輪書」としてまとめ上げて、肥後細川家に奉じた。

    五輪とは、仏教で、地、水、火、風、空。仏教が万物を構成する要素(元素)を表しています。仏塔になどにも五輪の塔といい、仏教の世界観を表しています。

    つまり、武蔵は、武道のあまねく世界の神髄として、五輪書を世に残しています。

    ちなみに、儒教の言う、五行とは、木・火・土・金・水です。

    その本質は、次のとおりです。

     ①徹底した実利主義と合理主義 敵を切ること以外の不要なものを一切排除する姿勢
     ②朝鍛夕錬 一歩一歩、稽古を積むことにより道の深奥を体得する姿勢 千日の稽古を鍛といい、万日の稽古を錬という。
     ③自らの力のみをたのみとする独行の姿勢
     ④仏法儒道の古道をもからず 自らが認識した事実のみを用いる姿勢

    気になったのは以下です。

    ■地之巻
    ・神仏を頼まず
    ・朝鍛夕錬
    ・万事のおいて、我に師匠なし
    ・道を行う法則
     ①実直な正しい道を思う
     ②鍛錬すること
     ③広く多芸に触れる
     ④広く多くの職能の道を知る
     ⑤物事の利害損失を知る
     ⑥あらゆることについて、直実を見分ける
     ⑦目にみえないところを悟る
     ⑧わずかなことにも気を配る
     ⑨役に立たないことはしない

    ■水之巻
    ・不動な心、平常な心を保つ
    ・千里の道も一歩づつ運ぶ。
    ・ゆっくりと気長に取り組み、修業を続ける。

    ■火之巻
    ・太陽を後ろにして構える。できなければ、右の脇に太陽を置くようにする。
    ・「敵になる」ということは、わが身を敵の身になりかわって考えるということをいう。
    ・同じことを二度繰り返すのは仕方ないが、三度してはならない。

    ■風之巻
    ・他流の道を知ることがなければ、道を究めることはできない。
    ・芸によっては、極意秘伝といって奥義に通じる入口はあるが、いざ敵と打ち合うときになれば、表で戦い、裏で切るなどというものでない。
    ・人に教える場合は、その人の技量に応じて、早くできそうなところからまず習わせ、早く理解できるような道理を先に教え、理解しがたい道理については、その人の理解力の進んできたころあいにしたがって次第に深い道理を教えていく。
    ・我が兵法にあたっては、何をかくし、何をおおやけにすることなどあるであろうか。したがって、我が流儀を伝えるには、誓紙や罰文といったものは用いない。

    ■空之巻
    ・空とは兵法の極意である。
    ・空とは、きまった形がないということ、形を知ることができないものを空とみるのである。もちろん空とは何もないことである。
    ・一切の迷いがなくなった空こそが兵法の究極であり、兵法の道を朝鍛夕錬することよって、空の境地に到達できるのである。
    ・空というものには、善のみがあって、悪はない

    目次

    はじがき
    「五輪書」を読むにあたって
    地之巻
    水之巻
    火之巻
    風之巻
    空之巻
    兵法三十五箇条
    独行道

    ISBN:9784061587359
    出版社:講談社
    判型:文庫
    ページ数:264ページ
    定価:1050円(本体)
    発行年月日:2009年04月15日第55刷

  • 年末年始の休みで少しボケ気味の自分に喝を入れようと思って、手にした一冊。
    宮本武蔵が、自身が剣(=敵を斬る剣)の道を極めたと感じたのは50歳のとき。そして、その奥義を60歳の時からしたため始め、二年の歳月を経て出来上がったのがこの『五輪書』。
    「朝鍛夕錬(ちょうたんせきれん)」という言葉が何度も出てくる通り、奥義を極めるには近道などなく、朝に夕に鍛錬を重ねることがまず中心。そして、それを効果的に行うために何をすべきかを、五つの巻(地、水、火、風、空)に分けて説く。
    徹底した合理主義で、とてもここまでの真似は凡人にはできないなと思いつつも、現代でもそのまま通じる指摘があちこちに出てくるから、読むのを止められない。例えば、無心と平常心のくだり。無心とは心があっても動揺しないことであり、それすなわち平常心。真の技を発揮できるのは平常心を持っているからこそ。また、相手の動作は「見る」が、相手の気の動きは「観る」という指摘は、目先だけにとらわれていては先が見えなくなることに通じる。
    剣の奥義が様々なことに応用が効くというよりは、奥義を極めた人は物事の本質を見抜くことができている、ということなのだろう。読んでいると自然に背筋がシャンとしてきて、期待通りの喝が入った。

  • ”宮本武蔵が60歳になってから2年間で記したとされる『五輪書』。
    みずからの剣術 二天一流の道(考え方)をシンプルに、包み隠さず(奥義や裏はない)として記述した心意気に、まずうたれる。

    負けすなわち死を意味する真剣勝負の世界は特殊だと思っていたが、この考え方は武士以外にも適用できるという想いが、武蔵にはあったようだ。(大工のたとえなど)

    本書は、五輪書の原文とともに訳文+解説がつけられており、また、五輪書のもととなったとされる「兵法三十五箇条」、死の7日前に記した「独行道」も収録された一冊。

    個人的には、「人に勝つ」に向けた強い覚悟、奥表なく教える際の心のあり方 の2箇所が強く心にひっかかった。

    さらにいえば、五輪書に出てくる「我に支障なし」と、以前 父から聞いた教え「我以外皆我師也」(吉川英治版『宮本武蔵』に登場)の矛盾について、読書会で共有できたのは収穫であった。

    <キーフレーズ>
    ・★人に勝つ(p.50)
     武士の兵法をおこなふ道は、何事においても人にすぐるる所を本とし、…
     ※どんなことにおいても人に勝つ!
    ・人に勝つことは己に勝つことである(p.53)
     →自己否定に勝つ(うけながす)
    ・何人いても現在、瞬間に相い対しているのは一人であり…(p.79)
    ・拍子(p.84)
     物ごとが栄える拍子と衰える拍子とを、よくよく見分けなければならない。
     (略)
     戦闘においては、敵の拍子を知り、敵の思いもかけぬ拍子をもって空の拍子を智恵の拍子より発して勝ち得るのである。
    ★鏡のような心が無心であり平常心(p.98-99)
     
    ・千里の道も一足ずつはこぶなり(p.153)
    ・山海の心(p.178)
     ヒロさん:正解探しじゃなく色々やってみればいい。※解決思考アプローチ

    ★わが兵法を人に教える場合には、はじめて兵法を学ぶ人には、その人の技倆に応じて、早くできそうなところからまず習わせ…
     (略)
     この兵法を学ぶ人の智力を見て、正しい道を教え、兵法を学ぶうちに身につくさまざまな欠点を除き、自然に武士の道の正しいあり方を悟らせて、ゆれ動かない心にすることが、わが兵法を教える道である。(p.236)
     ※ただ、盗め!ではなく教え方も大切ととく。結果、

    ・心と意の二つの心をみがき、観と見の二つの眼をとぎすませ、少しもくもりがなく、一切の迷いの雲が晴れわたった状態こそ、正しい空であるということができる。(p.244)


    ・能々鍛錬有るべし
    ・「朝鍛夕錬」…鍛とは千日の稽古であり、錬とは万日の稽古。

    独行道より (二十一箇条の中で気になった項目)
    一、身をあさく思、世をふかく思ふ。
    一、我事において後悔をせず。
    一、仏神は貴し、仏神をたのまず。
    一、身を捨てても名利はすてず。


    <きっかけ>
    2017年5月 人間塾課題図書。”

  • 宮本武蔵の勝負に対するひたむきな姿が伝わってきた。別れや恋慕にも心を動かされてはならないというまさに勝負のために生きている。勝負は美学ではなく勝つことが目的であり、そのために剣術だけでなく、考えられるあらゆる方向から検討を加えるようにしている。他の書物を読まずともこの書物だけで理解できるよう、後継への心遣いもしているところが素晴らしい。

    以下メモ
    ・心を一か所にとめず自由にすることで柔軟性や力量が発揮できる。
    ・物事には拍子があり、流れに乗るためには良い拍子を心がけ、相手に勝つためには相手の拍子を外すことが肝心
    ・広く多芸に触れ、実直を見分ける力をつけ、わずかにも気を配り、無駄なことはしない。
    ・無心でなければならない。無心とは平常心を保つこと。鏡のようにどんな姿を映そうとも鏡自体は変化しないように。
    ・見の目、観の目で見ることが必要。目や耳は自分のとらえたいようにしか感じない。心の目で相手の気配を捉えることが大事。
    ・身を太刀よりも先に行くつもりでないと斬れない
     ⇒リスクをとらねば勝てない。
    ・先手を取ること。相手が攻めてくるとき、自分から攻める時、両者が攻める時、いずれも先手で勝負が左右される。
    ・小手先だけで踏み込まない。太刀、足、身、心全てで踏み込む
     ⇒中途半端な対応をしない
    ・敵の身になって考える。敵の立場から自分は今どのように感じられるか
    ・鼠の頭、午の首。細かいところから大局まで考える、視点を変えてみる。
    ・不動の心とは動かない事でなく、前後左右に自在に動きながら対象にとらわれず、少しもとどまらない心をいう。相手の動作に心をとめてはいけない。

  • ま、あたり前の話なんだが、こういうセンスとか勘とか、何か「言葉ならざるもの」で体得している技術を、「こういうことなんだよ」と言葉で説明するのって難しいなあ。
    現代なら、優秀なライターがなんとかものにしてくれる場合はあるのだろうけど。

    にしても五輪書、「詳しくは口伝で」って、ええー!そこを読みたいのにー!

  • 2.8

  • 朝鍛夕錬、自分の太極拳の練習がまだまだ不十分だと感じる。「万里一空」の域に達するように日々精進していくことの重要さを再認識できた。

  • 一切の甘えを切り捨て、ひたすら剣に生きた二天一流の達人宮本武蔵。
    彼の遺した『五輪書』は、時代を超えて我々に真の生き方を教える。
    絶対不敗の武芸者武蔵の兵法の奥義と人生観を原文をもとに平易に解説。

  • 読みにくい。
    昔の本だから仕方ないが。

  • 宮本武蔵の兵法と人生観がわかる本。
    「能く能く吟味すべし」「能く能く工夫有るべきなり」「能く能く鍛錬すべし」みたいな言葉多い印象。
    この本で道標はしてあげられるけど、結局は自分で考えて日々努力重ねるしかないんだよ、と言われている気がした。確かにその通りだ。
    兵法は「相手を斬る」ためのものであり、目的に対してとことん合理的に考え、本質を見失わない武蔵の姿勢は見習うべきだと思う。
    仕事などにいかせそうな内容も少しあった。
    スポーツなどの勝負ごとをやる人にとっては役立つことが多いと思う。

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著者プロフィール

1927年神奈川県生まれ。駒澤大学仏教学部卒業。東京大学大学院博士課程修了。
東京大学東洋文化研究所教授、国際仏教学大学院大学教授などを歴任。専攻は中国・朝鮮仏教史。
文学博士。学士院賞受賞。2001年没。主な著書に『般若心経講話』『華厳の思想』『維摩経講話』などがある。


「2020年 『朝鮮仏教史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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