- Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061587533
作品紹介・あらすじ
人間疎外が深刻化した1934年のフランス。ヴェイユは工場にはいった-冷酷な必然の定めに服し。抑圧と隷属の世界、悲惨な労働者の側に身を置き、屈辱に耐えつつ激しい宿痾の頭痛と限りない疲労の中で克明に綴られた日記は、底辺からの叫びであり魂の呻きに似た苦痛と怒りの証言である。絶対の愛に憑かれたヴェイユが、工場生活での体験を普遍的な人間本来の生存の条件の考察にまで高めんとした真摯なヒューマンドキュメント。
感想・レビュー・書評
-
全文が労働と人生についての省察に付いてるからこれから読む人はそっちを読んだ方がいいかもしれない
実は高校卒業した後、就活の最中校長からの推薦で、伸び筋の企業の工場に誘われたことがある
…んだが、危険でない軽作業などを志望していたはずなのに距離、時間、現場すべてが絶望的だったので残念ながら断ったのだが、この本を見てあの時の判断は正しかったと今更ながら思うことになった
ヴェイユは労働者の現場を見ない知識人たちに不満を抱き、偏頭痛と血行障害を持ちながらも、自ら彼らの苦悩を知るため一年間、プレス工として働いた。この本はその時の日記が中心だ
自分の仕事が一体何に繋がるのかわからない、感情を引きずると能率が落ちるゆえ、機械の奴隷になる感覚を受ける、にも関わらず、単純作業だけではない人とのふとした軋轢が精神と体を否応なしに蝕む
勢古浩爾が思想のつけいる余地のない生活と言ってたが、ここに描かれてるのは思考の芽すら容赦なく借りとる、考えることを奪ってしまう苦難の生活だ
『もはや考えることをしないという誘惑である。それだけが苦しまずにすむ、ただ一つの、唯一の方法なのだ(52ページ)』
この本をただの知識人の気まぐれと切り捨てるのはオレには不可能に思える。彼女は工場で働いた一年、よく仲間と語らい、関わり、見聞し、奴隷化させられる誘惑に屈しても、そこで得た体験を思索に繋げ、輝くようなあの思想に繋げた。恐らくそれが、彼女の寿命を縮めわずか34歳で夭逝させることになってもだ
これを読むにオレはずいぶん幸福な仕事を選んだと安堵する。確かに工場の単純作業だが、郵便局なら自分の仕事から疎外を受ける感覚は少ないはずだろう。今期のオレの仕事で一番よかったのは勤務時間中ずっと歩きっぱなしだったことだ。それをきついと言った同僚もいるが、歩くことは必然的に思索を誘う。思うに、思考すること、日々の楽しみに想いを走らせることこそ、労働の人間疎外に対する、最も有効な、革命的とすら言っていい抵抗なんだ
この本で描かれていて、しかも日本でも未だ大量に残っているはずの(労働基準法に守られない生活をしている友人を何人も見てきた。どころか、そういう環境では法を持ち出すことは笑い者にされることなのだそうだ)こうした野蛮はもちろんそうした次元を超えている。実にキツいものだろう。とりわけ身体の弱い、にも関わらず仕事を選べない人たちにとって
しかしオレが思うのは、そうした思想なんかつけいる余地のない、思考を奪う環境にいるがゆえ、今までそんなもの考えたこともなかったのに、そこから自前の思想と思索を求める人間がいるだろうということだ。それはすべてのスタートとすら言えるだろう詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
有名な哲学者なのに工場に働きに出ちゃった!?(当時から有名だったかどうかは分からないけど…) 哲学とか思想とか難しいことは分からないけどヴェイユの行動力やストイックさが好きだ。
-
2008/2/8購入
-
分類=思想・ヴェイユ。86年9月(72年初出)。