方丈記を読む (講談社学術文庫 759)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061587595

作品紹介・あらすじ

現代-この不確実の時代は奇しくも中世的状況に酷似しているといわれる。相次ぐ天災と、人々の心に横溢した「無常観」の支配した末法の世。その暗黒の中世に生きた鴨長明とはいかなる人物で、その代表的著作である『方丈記』の根底の思想とは何だったのか。淡々たる事実の叙述の裏に積極的な「遁世」の意志を探り、また捨てがたき妄執の中に人間の業を観る白熱の対論は、この混迷の現代に生きる我々に大きな示唆を与えるだろう。

感想・レビュー・書評

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  • 歌人の馬場あき子と国文学者の松田修が、『方丈記』のテクストにそくして、その魅力を語っている本です。

    松田は、「孤」(みなしご)という鴨長明の自己規定のうちに彼の幼児性を指摘しています。また、「正」と「反」だけが綿々とつらなって「合」が欠落している『方丈記』の文体上の特徴から、俗生への未練を断ち切れない人物像を読みとりつつも、そもそも長明に遁世を妨げるほどの現世のほだしなどなかったのではないか、「ひょっとしたら長明は、世の人が価値とみるような捨てるべきなにものをももたない、あるいはほとんどもたない遁世者であったのかもしれない」という、ある意味で意地の悪い見方を示しています。

    一方馬場氏は、歌人としての立場から長明の歌が二流のものだということを指摘し、しかも長明自身がそのことを十分すぎるくらい知っていたのではないかと述べています。

    こうした両者の対談を通じて、あまりにも人間くさい長明の姿が浮き彫りにされています。しかも、仏道にも数寄の道にも没入できず、自己分裂の中に生きた長明の「隠遁」を、そのままのかたちで救い出そうとしているところに、馬場、松田両氏の「人間」をどこまでもいとおしむまなざしが感じられます。

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著者プロフィール

歌人。日本芸術院会員。昭和女子大学日本文学科卒業。在学中より歌誌『まひる野』に拠り作歌。現在、歌誌『かりん』主宰。朝日歌壇選者。読売文学賞ほか、毎日芸術賞、朝日賞、紫綬褒章、日本芸術院賞など受賞多数。歌集の他に歌論・研究書など多数。

「2016年 『世阿弥を学び、世阿弥に学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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