- Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061587649
作品紹介・あらすじ
幾多の重要な科学的発見が、必ずしも既成の事実に拠るものではなかったことを検証した著者は、進んでトマス・クーンのパラダイム論の成果の上に立って、科学理論発展の構造の分析を本書で試みた。パラダイムとサブ・パラダイム、サブ・パラダイム同士の緊密な相関関係に着目しながら、科学の縦断的(歴史的)=横断的(構造論的)考察から、科学史と科学哲学の交叉するところに、科学の進むべき新しい道をひらいた画期的な科学論である。
感想・レビュー・書評
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今まで読んだ村上陽一郎の中で一番難しかった。勉強します
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トーマス・クーンの範型(パラダイム)などの概念も援用しつつ、科学を基礎づける思考の枠組みについて考察している。
西欧近代科学は、事実至上主義であり、実験、観察等を踏まえた事実の積み上げから理論の枠組みを作ったように考えられているところがあるが、事実そのものも、ある一定の思考の枠組みから対象として認識された産物であり、実態はまず思考の枠組みがあり、そしてこれを裏付ける事実の観察と進んでいく。
天動説から地動説へと大きく舵を切ったコペルニクスについても、例えばプトレマイオスやティコ・ブラーエのような優れた観測者というわけではなかった。彼は、新しい近代的概念を開発したというより、ギリシャ時代の考え方に戻って天体の動きを再検討し、地動説に辿りついたというのが実態であった。
現在、科学は行き詰っており、東洋的思考の再評価などが叫ばれたりもしているが、人間の科学という見地に立って、単純な範型の置き換えではなく、さらに現在の科学を発展させていくことこそ求められていることではないか、と訴えている。
この本は、多くは1970年代に書かれた論考を集めて構成されたものである。「超えて」という表現、「・・・ではないか。」というまとめ方、あるいはヒューマニズム的な考え方に当時の時代的背景なども窺われた。 -
[ 内容 ]
幾多の重要な科学的発見が、必ずしも既成の事実に拠るものではなかったことを検証した著者は、進んでトマス・クーンのパラダイム論の成果の上に立って、科学理論発展の構造の分析を本書で試みた。
パラダイムとサブ・パラダイム、サブ・パラダイム同士の緊密な相関関係に着目しながら、科学の縦断的(歴史的)=横断的(構造論的)考察から、科学史と科学哲学の交叉するところに、科学の進むべき新しい道をひらいた画期的な科学論である。
[ 目次 ]
1 科学のなりたち
2 科学と価値
3 現代科学の境位
4 科学技術の前途
5 科学の可能性
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ] -
以前紹介した「新しい科学論」よりは難しい村上氏の論文集でした。科学に対するよくある観点(素朴科学論とでも言えるか)を批判的に検討しています。僕の関心は主に前半にあったので,後半は流し読みで終えました。最初のセクションのタイトル「科学は事実を離れて成立する」を見て「???」が思い浮かんでしまう人は素朴科学論者の可能性大だと思います。現代の科学哲学の領域からするとやや古典的な議論なのかもしれないですが,これが「???」の人にとっては素朴な立場(もっと古典的)からの脱皮に役立つと思います。
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科学というものを日本人な視点で俯瞰し、人類の価値観における自然科学というものを語っている。
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著者は、わが国における科学史・科学哲学の世界を切り拓いた人物のひとりです。本書は、1970年代初頭に書かれた論文10編に、書き下ろしの終章1編を加えた、科学史・科学哲学に関する論文集です。日本経済新聞社刊の単行本を文庫化したものですが、文庫化に当たって、当初のものに若干の加筆・修正がなされています。
本書には、現在も活発に言論活動を続けている著者が、科学の本質と今後の科学のあり方について30台半ばの頃に書いた論文が収録されています。具体的には、それらは「科学のなりたち」「科学と価値」「現代科学の境位」「科学技術の前途」「科学の可能性」 という5つの章に分けられています。オリジナルが上梓されてから30年ほど経過しているにもかかわらず、著者の提起した論点の多くは、現在でもなお有効なものばかりです。
本書の特色は、繰り返しになりますが、現在は科学史・科学哲学界の「大御所」である著者が、まだ30台半ばの頃に書いた論文がほとんどを占めているということです。研究者としてまだ“駆け出し”だった時代の著者の問題意識が、本書を読むとよく判ります。そして、私と近い年齢の頃にこうした論文の数々を書き上げていた、ということに驚嘆させられます。
その一方で――人のことは言えないのですが――やはり若い時分の文章であるため、著者の近年の本に比べると、やや読みづらい箇所も見られます。
ですから本書は、著者の考えを知りたいという方がはじめて読むという本ではないでしょう。しかし、著者の本を何冊か読んだ後に、その問題意識の背景や原点を知るためには、ぜひ一読の価値がある一冊だと思います。 -
福澤一吉氏(『議論のレッスン』)推薦