日本の禍機 (講談社学術文庫)

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感想 : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061587847

作品紹介・あらすじ

世界に孤立して国運を誤るなかれ-日露戦争後の祖国日本の動きを憂え、遠くアメリカからエール大学教授・朝河貫一が訴えかける。歴史学者としての明解な分析に立って、祖国への熱い思いが格調高く述べられ、読む者の心に迫る。彼の忠告も空しく、軍国主義への道をつき進んだ日本は、戦争、敗戦へと不幸な歴史を辿った。日米の迫間で、日本への批判と進言を続けた朝河。彼の予見の確かさと祖国愛には、今なお学ぶべきものが多い。

感想・レビュー・書評

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  • 黒川清の「規制の虜」の中で「いちど読んでみなさい」と促され読んでみた。
    文体が古くてなかなか読みづらいものがあるが、中身は素晴らしい。時代的な制約も感じるが、これだけはっきりとものを言うのには、当時としては勇気がいったことだろう。

  • 2014.10.14 BLOGOSの記事で見つける。福田元首相が引用したとのこと。
    <blockquote>日露戦争で日本は、中国の主権擁護と列国の機会均等を掲げ、米英の支援を取り付けて勝利した。しかし、日本はこの二大外交方針を捨て、侵略主義外交によって満州を独占的に支配しようとした。それが国際社会での孤立を招いてしまった。</blockquote>

  • 前篇 日本に関する世情の変遷(日本に対する世評の変化;満州における日本に対する世の疑惑の由来;反動説―感情的反対者―利害的反対者;東洋における世界の要求;日露戦争以後)
    後篇 日本国運の危機(戦後の日本国民多数の態度に危険の分子あることを論ず;日本と米国との関係に危険の分子少なからざることを論ず)
    結論 日本国民の愛国心

  • 積ん読状態から解放。
    比較法制史研究者として特に欧米で知られる朝河貫一が、1909年(明治42)に著したのが本書。

    満州において、清朝の主権を踏みにじり貿易による利益を独占しようとするロシアと、清朝の独立・領土保全と満州の門戸開放・機会均等を主張した日本が、各国列強の思惑の中で「第0次世界大戦」とも呼ばれる日露戦争を戦って数年。
    「旧外交」を打ち破り、新たな潮流たる「新外交」の旗手となることで、世界史上の栄光に包まれるはずだった日本。
    その日本が、満州をめぐる問題において、今まさに岐路に立とうとしている。
    そうした背景の下、在米邦人の優れた歴史学者が論ずる分析は、もはや「慧眼」というような言葉をも超えた凄味がある。

    満州をめぐる問題と云うのは、それを“実際に経験した”あるいは“知っている”我々からすればごく簡単なことで、つまり「日本が満州における権益を独占した」ということだ。

    朝河はそれを危惧した。
    「清朝側からの発信などによって欧米で日本に対する非難が起こっているが、表に公正を謳いながら裏で私曲(本書のキーワード)をしているのであれば、日本は世界から孤立する」

    そして予測する。
    「もし日本が新外交を担う栄光の座を打ち捨てるのであれば、その座の主となるのはますます富強の国家となっていくアメリカである。日本が清朝の主権を蹂躙しようとするならば、かつてロシアに対した日本のように、アメリカが立ちはだかる。刃を交えることになる」

    ゆえに警鐘を鳴らす。
    「繁栄か滅亡か、今がまさにその岐路である。自省すべし、文明の敵となるべからず」

    諸々の報道やアメリカ大統領の言動など、提示される情報を元に同時代を分析する力、透徹した目。すごい。

    伊東博文が暗殺された際、この本を携行していたという。
    歴史に「if」は禁物だが、「もし…」と思わずにはいられない。

    また日・米・中の3ヶ国の関係についての論も圧巻。
    「日本の今後の国運の大半は、『東洋の最大問題』たる清・『世界の最富強国』たるアメリカに対する関係で定まる。そして日清・日米の関係を決めるのは、日本国民の両国に対する知識・感情である」
    とても100年前に書かれた本とは思えない。

    補筆として、本書が出版される頃の一時的な日米関係の改善について、朝河は心からの慶賀を述べている。
    生涯の大半をアメリカで過ごしながら、終生日本国籍のままであったこの愛国者の希望を、その後の日本が打ち砕いたのは言うまでもない。

    今また禍機に立つ日本において、読まれるべき本のひとつだと思う。

  • 今の日本人が1909年の日本人に投げかける言葉は…
    「一時の利益を求めて国を危うくするか、協調に長期的な利益を得るか、よくよく考えて大陸政策を決めなさい」また、
    「アメリカの国民性を甘く見るなよ、思ってるほどだらしが無かったり団結力に欠けるわけではないよ」
    そんな今の感覚から当時を振り返るような陳述を、その同時代に行っている。
    いかに、国際的な道理となっていた大陸の独立と市場開放が重要かが分かる。そもそも日露で各国が日本支持に回った理由のひとつがそれなのだから。
    日本が大陸での覇権を目指すのであれば当然の帰結として日米対立がおこるわけで。そのようなことを気付かせてくれる。
    所々平身低頭して現状の日本を諫言する様に、それとは対照的な当時の日本国内の強気な姿勢を感じた。
    この感覚を持った日本人が大勢いればよかったにのと思うが、大勢いないから本書が誕生したんですよね…

  • 100年ほど前に書かれた日本時事論。もともとは比較法制史が専門で、イェール大学教授を定年まで勤めた人物。文体が現代のものではないので読みにくいが、異国の地で母国を憂う気持ちが伝わってくる。「序」にあるように謙虚な姿勢で書かれているので、先入観なく読める。

  • 「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」から。
    第1次~第2次大戦という時代に、これだけの国際人、教養人がいたことに素直に驚かされる。

  • 内容としてはすばらしいけど、
    文体的に読み込めず。
    さすがに、よみづらい。途中でギブアップ。
    理解不能でした。すいません。

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著者プロフィール

1873年、福島県生まれ。安積中学校、東京専門学校(のちの早稲田大学)を、いずれも主席で卒業。23歳で渡米してエール大学などで学ぶ。比較法制史専攻。エール大学教授。主に米国で活躍したが、日露戦争から第二次世界大戦に至る時代に、日本外交への痛烈な批判と忠告を行った。1948年、米国バーモント州にて死去。著書に『入来文書』、『日露衝突』などがある。

「1987年 『日本の禍機』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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