- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061588035
作品紹介・あらすじ
本書は、日本の仏教史上に登場する代表的なカリスマたちがいかにして自らの宗教意識を体得したかを探る。空海における密教的な神秘思想、独得の密教解釈で新風を起こした覚鑁、道元の『正法眼蔵』の哲学的詩篇と白楽天の詩的世界の関係、常に「日本国」を発想の根底に据えた日蓮のナショナルな危機意識、風狂僧一休の虚構と真実の世界など、時代的背景と豊富な文献を巧みに駆使して、新仏教誕生に果たした姿を独自の視点から描く。
感想・レビュー・書評
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『日本仏教思想論序説』(講談社学術文庫)の続編で、空海、覚鑁、道元、日蓮、一休についての論考を収録しています。
空海については、その「入我我入」の思想がさまざまな側面においてどのようなしかたで現われているのかを比較的くわしく追及しています。とくに空海と平安国家との関係においては、仏と人との「入我我入」が国家と僧との「入我我入」に直結している問題を指摘しています。
これに照応する問題をあつかっているのが、日蓮について書かれた章だといってよいでしょう。著者は、日蓮が自己の出生を告げるのに「日蓮は日本国、東夷東条阿波国の、海辺の旃陀羅が子也」と述べていることに注目し、自己の位置決定にインドや中国といった外在的な軸を必要とすることのなかった道元と比較しています。そのうえで、日本というナショナルな位置づけをもつ自己と、「一閻浮提」というインターナショナルな視座が、彼のなかでどのようなかたちで結びついているのかという問題を考察しています。
著者は、この問題をめぐる空海と日蓮の思想に批判的な立場から議論をおこなっていますが、わたくしは著者自身の立場もこうした問題を免れてはいないのではないかという疑いをいだいています。たしかに著者は、仏教思想の内部において個と国家の応現的な関係を正統化することから距離をとっていますが、日本の民俗的な宗教意識という迂路を回っておなじ場所に立ち返ってしまうということがないか、慎重に検討しなければならないように思います。
そのほかでは、覚鑁の五臓をめぐってなされている考察など、興味深く読むことができました。詳細をみるコメント0件をすべて表示
著者プロフィール
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