影の現象学 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 661
レビュー : 51
  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061588110

作品紹介・あらすじ

影はすべての人間にあり、ときに大きく、ときに小さく濃淡の度合を変化させながら付き従ってくる。それは、「もう1人の私」ともいうべき意識下の自分と見ることができる。影である無意識は、しばしば意識を裏切る。自我の意図する方向とは逆に作用し、自我との厳しい対決をせまる。心の影の自覚は、自分自身にとってのみならず、人間関係の上でもきわめて重要であり、国際交流の激しくなってきた今日においてはますます必要である。

感想・レビュー・書評

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  • 「現象学」というタイトルがついているけれど、河合さんの専門であるユング等の世界の話を「影」という観点から考える論考集で、やはり心理学にカテゴライズされるでしょうか。「現象学」というタイトルはあとがきで河合さんが触れてますが、出版社の要請でやむなくつけたのだとか。

    そんな事情もある本ですが、心理学というよりは、文学論としても読めます。中に例えとして引かれる本は、シャミッソーとかホフマンというような岩波の赤帯に入っていそうな本たちで、そのことも個人的には好みでした。『影の現象学』の中で例として引かれる小説は、それらに通低するメッセージをしっかりとご自分の観点でとらえた河合さんによるまじりけのない印象が入っている、と感じられ、自説を強調するために、その例として(小説からしたら)いやいや引っ張ってこられた、というような仕上がりになっているような雰囲気はありません。そのため、これらもまた内容を確認してみたくなります。特に自身興味深かったのはマーク・トウェインの『不思議な少年』の読み解き。『不思議な少年』というのは、明るい作風と思われがちなトウェインからすると、確かに「不思議な」位置づけの作品だなあ、とは思っていたので、人間の影の部分で説明しようとする流れは、素直に腑に落ちます。

    4章、5章が特に興味深く、個人的には、人間は「影の部分」と上手く折り合いをつけていくことが大事なのではないか、というメッセージを読み取りました。「日本人とは…」という言い方はあまり好きではないのですが、光の部分と影の部分、というような人間の多面性、という観点から「日本人」というイメージが浮き彫りになることがあるのかもしれない、と、かすかにですが、思ったこともとどめておきたいと思います。

    確かに「影」をめぐる物語には魅力的なものが多い!

  • 2014年37冊目。

    「影」の存在の恐ろしい面ばかりに囚われている人は必読だと思う。

    世界的・歴史的に「影」はどのように扱われてきたのか、というそもそも論から丁寧に始まり、
    心理学的に「自我」に対して「無意識」に潜む「影」の正確をもの凄く分かりやすく解説する。
    病的な症例から見られる「影」、そして神話や文学作品の中に見られる「影」の具体例が豊富かつ的確に示されてゆき、
    「影」に潜む創造性を手にする可能性を示してくれる。
    (もちろん、「影」との接触の危険性も十分に論じながら)

    この本のおかげで、自分の中でいくつかの扉が開いたのを感じた。
    何度も戻ってきたい素晴らしい名著。

  • 永遠に積読のままだった本。学部2回生の独文の授業を思い出しました。

  • 18.6.2 
    日経新聞 春秋 

  • 第1章 影(影のイメージ;ユングの「影」概念;影の種々相)
    第2章 影の病い(二重身;二重人格;夢の中の二重身)
    第3章 影の世界(暗黒;不可視の影;地下の世界)
    第4章 影の逆説(道化;トリックスター;ストレンジャー)
    第5章 影との対決(自我と影;影との対話;影と創造性)

    著者:河合隼雄(1928-2007、篠山市、心理学)
    解説:遠藤周作(1923-1996、豊島区、小説家)

  • 2階心理学C : 140.4/KAW : 3410162779

  • 自分や人に向き合うきっかけになりそう。
    てきとうで温かい近年のエッセイとは違って、どろどろした中からも何かを見いだそうとする感じ。
    死は創造へ?

  • 現在の自然科学の視点にとどまらない、刺激的な論文
    知性とは、客観的・論理的な態度からのみ得るものだろうか
    河合隼雄はいつも新しい

    光と影、対立から生まれる第三の道を、人生の中で探っていきたい

  • 人間なら誰もが持っている「影」について述べられた本です。他の著作との重複箇所はありますが、興味深い内容でした。

  • ホフマン。「白い影」の投影問題。イブホワイトの統合について。ユングの幼児の頃の夢、元型的な恐怖、皮と裸の肉とでできたおそろしい高さの「人食い」。永遠の少年の元型、急速な上昇と下降の反復。中世のヨーロッパでの「愚者の祭り」、道化の重要性、それ自身自己充足的であるため両性具有的である、完璧な統一へのカウンターバランス効果。道化の分類、ドライ、スライ、ビターフール、愚鈍、悪賢さ、辛辣、順に風刺の度合いが濃くなっていき笑いを失っていく。単層構造においては笑いの余地がなくなり、王に対して道化は悪としてしか機能できない。呪的逃走。

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著者プロフィール

東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。メーカー勤務を経て、現在フリーランスの翻訳者。

「2020年 『パリジャンが教える ヒゲの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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