ドイツ語とドイツ人気質 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061588257

作品紹介・あらすじ

人はことばを通じて世界を認識し規定し、ことばによって精神のあり方を刻印づけられる。ドイツ語の、重々しく深々としたゆたかなひびきや、最後まで緊張を要する、公明正大でごまかしのきかない表現構造などは、どんな人間像をはぐくみ、また映し出すか。ドイツ人はたくましくも頑強であり、明快かつ重厚な精神を失わず、強い自己主張と旺盛な自己実現への意欲をもつ。私たち日本人とは異質な文化世界への扉を開ける鍵がここにある。

感想・レビュー・書評

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  • 1988年に発行されたものなので、現在では当て嵌まらなくなってしまっている内容も多少あるように感じられるものの、Es tut mir leid. と Enschuldigung. の大きな違い(どちらも日本語では ごめんなさい や すみません と訳される)、Ich will ~の語が持つニュアンス、Sieの語源など普通の語学学習では習わないけれど、言葉を実際に人に対して使う上で重要な、言葉が持つニュアンスや意味が分かり易く説明されていてとても参考になった。学術書というよりも随筆調の本で割と読み易く、教養が深まる様な小ネタも多いので古典文学が好きな人にはお薦めです。この本を読み終った後、きっとあなたもゲーテのファウストが読みたくなる。

  • 日本語は同じ音にいくつもの漢字が当てはまり音を聞いただけでは意味を取りにくいため、目で読む方が好まれるのに対し、ヨーロッパの人にとって詩はなによりも音の芸術である、という話は目からウロコ!だから欧州はやたら朗読CDが多いんだ!と納得。言語によって規定される人の性格、という話も、すごく面白い。

  • ドイツの勉強を始めたので、言葉と気質・または文化を知るに役立つと思い読んでみた。
    少し前の時代に書かれているため、現在とは事情も違っている箇所もあるように見受けられた。
    ゲーテの詩や『ファウスト』について論じられた箇所が面白かった。番組の裏話なども、なるほどと思った。そして著者はとてもロマンチストだなとも。

  • ドイツ語を勉強し始めたが、実際まだドイツの人と交流する機会がなく、少しでも言語とその話者の文化的背景の繋がりを理解できれば、と購入。もっと学術的な内容かと思ったがエッセイ風だった。読みやすかったが少し物足りない部分も。必ずしもドイツ語とドイツ人の気質の関係を述べてるとは言えない話も多い。
    まだ東西にドイツが分かれていたころに書かれているので実情とは異なる部分も多いかもしれないが、ドイツ人が法を重んじ、個人的責任が真にない場合は絶対に謝らないこと、ことばにすべてをかけ、対話を大事にし、批判は直接本人に面と向かって言い、本人のいないところで悪口は基本的には言わないことなど、興味深かった。また、ドイツ語は語順やアクセントに多大な自由さがある、という気づきも楽しい。

  • NHKドイツ語講座を務めてられた頃の話、「vielleicht」の話など紹介されるエピソードが面白く笑える。
    また、広くヨーロッパの詩歌や文学に興味がある人は、ドイツ語がわからずとも読んでも面白いかもしれない。文芸批評的な記述も多くある。私には難しかったが。
    あと、この手の本にありがちな、どちらかの文化圏を執拗に褒めるないし貶すような印象はほとんどなく、自分/他者の双方に敬意を持った表現であったように思う。なので不快にならなかった。

  • 本書は1982年、未だドイツが東西に分裂していた頃に書き下ろされた。
    なので内容には多少なりとも現在とのギャップを感じるが、本書はドイツ語の響きや表現構造、言語によるドイツ人の精神への影響、彼らの文化・価値観と日本人の差異などをメインに取り扱っているので、高々2、30年の経過による大きな変化は恐らくないだろう。

    著者は独文科卒とだけあって、ドイツの詩とゲーテの『ファウスト』について特に情熱的に語っている。
    それは、しばしば学術的な論調となり、興味の薄い読者にとっては堅苦しく感じる場合もあるかも知れない。
    だが、本書は基本的にエッセイの類に属するものなので、肩を張って読む必要はないだろう。

    時折挟まれるドイツでの著者または知り合いの実際の体験は読んでいて面白いものもあれば、日本との価値観の余りの違いに驚きもする。
    たとえば、彼らの徹底的に人と論議する姿勢や、自分の損になる件については決して謝らないなど、ドイツ人と日本人の違いを思い知る。

    全体的に内容は一貫したトピックであり、ウィットに富んだ文章という印象だった。
    ただ、たまに矛盾しているとも取れる箇所もあるが、それは著者の信条的なものを含んでいるようにも思えたし、余程神経質でなければ気にはならないだろう。

  • 人はことばを通じて世界を認識し規定し、ことばによって精神のあり方を刻印づけられる。(文庫カバーより)
    ことばが考え方や行動にどう影響を与えているのか知りたかった。
    そしてドイツで生まれ育った妻と共に暮らしている身としても興味があった。

    【あらすじ】
    NHKドイツ語講座を18年間担当した著者がドイツ語を通じて、ドイツ人とはどのような人々なのかを紹介する。

    Ⅰ:ドイツ語の特徴
    文法や単語の用法、詩、英語との違いを通じて、ドイツ語の特徴を浮かび上がらせ、それがドイツ人の思考や行動に結びついていることを解説。

    Ⅱ:生活と文化
    経済や法律、文学(ファウスト)、家庭生活など言語からやや離れて、ドイツ人の暮らしや文化を紹介しつつ、ドイツ人がどのような人々なのか解説。

    【感想】
    言語がそれを話す人々の思考を形作るのか、思考のくせによって言語が作り上げられたかは、鶏と卵はどちらが先かと同じことだが、言語と思考が密接に結びついていることは間違いない。
    本書はドイツ語の用法を通じてドイツ人の考え方を紹介している。翻って日本語と日本人についても考えさせられる一冊になっている。

    「あらゆる場面はトタールでなくてはならない」P26
    なぜドイツ語の本はあんなにも分厚いのか以前から疑問だった。ドイツ人にとって文学であっても、世界を語るにはトタールでなくてはならないのだろう。ことばで表現できないものは存在しないことと同じなのだ。
    ドイツ人とコミュニケーションをとる際には、とにかく語るべきことはすべて語ることが大切だ。言外の意味をくみ取ったり、行間を読んだりしてはくれない。

    「ドイツ人は何事においても徹底を好む国民性をもつ人種」P78
    その性向がナチスを生み、その反動で古典の教育を拒否するドイツ。
    (現在はゲーテなど古典を教えているようだ)
    一方、廃物希釈で昨日まで拝んでいた仏像を薪にして燃やしたり、鬼畜米英と叫んでいたと思いきや「あこがれのハワイ航路」をみんなで歌ったりする日本。
    1から10まで納得するまで議論を尽くすドイツ人と、沈黙は金とする日本人。
    まったく異なる考え方の二つの国が、同じように全員右向け右と極端に偏る動きを見せる特徴があることが興味深い。

    ドイツ人とビジネスする人やドイツの芸術に興味がある人は、本書を読むことでドイツの理解が深まるでしょう。

  • ドイツに転勤する前に母が購入し、家族で回し読みしていた思い入れのある本。実際行ってみて、必ずしもこの通りではなかったけれど、この本からたゆたうドイツの雰囲気は全く同じであった。

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著者プロフィール

1931年長崎県佐世保生まれ。東京大学文学部独文科卒。国際基督教大学、中央大学文学部教授(ドイツ文学)、フェリス女学院院長、理事長を経て、現在、東京杉並・ひこばえ学園理事長、中央大学名誉教授。その間に(大学在職のまま)駐ドイツ日本国大使館公使、ケルン日本文化会館館長、国際交流基金理事・同日本語国際センター所長等を兼務。ドイツ連邦共和国功労一等十字章、同文化功労大勲章叙勲、日本放送協会放送文化賞、ワイマル・ゲーテ賞等を受賞、ケルン大学名誉文学博士。著書に『旅人の夜の歌-ゲーテとワイマル』(岩波書店)、『ドイツのことばと文化事典』(講談社学術文庫)、『バルラハ―神と人を求めた芸術家』(日本基督教団出版局)、『トーマス・マンとドイツの時代』(中公新書)、『木々を渡る風』(新潮社1999年日本エッセイストクラブ賞受賞)、『「神」の発見―銀文字聖書ものがたり』(教文館)、『随想森鷗外』『ぶどうの木かげで』『樅と欅の木の下で』(青娥書房)、『ブレンナー峠を越えて』(音楽之友社)ほか多数。訳書にトーマス・マン『ヨセフとその兄弟』(望月市恵と共訳、全三巻筑摩書房)、ほか多数。

「2021年 『ゲーテからの贈り物』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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