内省と遡行 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061588264

作品紹介・あらすじ

外部に出ること、これが著者がめざした理論的仕事の課題である。ただし著者は、外部を実体的に在るものとして前提してしまうことと、詩的に語ることを自ら禁じた。むしろ、不徹底かつ曖昧な言説に止めをさすために、内部に自らを閉じこめ、徹底化することで自壊させる方法を採った。内省から始めた哲学理論の批判は、ここにぎりぎりの形で提示された。「内省と遡行」から「言語・数・貨幣」へ、さらに「探究」への転回を試みた画期的評論集。

感想・レビュー・書評

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    外部に出ること、これが著者がめざした理論的仕事の課題である。
    ただし著者は、外部を実体的に在るものとして前提してしまうことと、詩的に語ることを自ら禁じた。
    むしろ、不徹底かつ曖昧な言説に止めをさすために、内部に自らを閉じこめ、徹底化することで自壊させる方法を採った。
    内省から始めた哲学理論の批判は、ここにぎりぎりの形で提示された。
    「内省と遡行」から「言語・数・貨幣」へ、さらに「探究」への転回を試みた画期的評論集。

    [ 目次 ]
    内省と遡行(主知性のパラドックス;下向と上向;知の遠近法;時と場所;作品とテクスト)
    言語・数・貨幣(形式化と現象学的還元;代数的構造―ゼロと超越;順序構造―分裂生成)
    付論 転回のための8章―「探究」からの抄録

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 「マルクスその可能性の中心」と「探究」をつなぐ、著者の初期の理論的仕事から「内省と遡行」「言語・数・貨幣」の2編を収録している。また、その後の著者の思想の歩みを簡潔に示した「転回のための八章―探究からの抄録」を「付論」として収める。

    ソシュールによって発見されたシニフィアンとしての音韻は、物理的な音声とは異なっている。またシニフィエとしての意味も、外的ないし心理的な事実ではない。ソシュールは「ラングは実在ではなく、ただ語る主体の中にしか存在しない」と述べている。だがそれらは、フッサールの本質観取によって発見されるようなものなのだろうか。もしそうだとするならば、E・バンヴェニストが主張したように、シニフィアンとシニフィエとの結びつきは恣意的であるどころか、主体にとって必然的なものと考えられなければならないだろう。著者は、あらためてソシュールの言語論が何だったのかを考えなおす必要があると主張する。

    共時的なラングの秩序は、どのようにして変容するのだろうか。多くの論者は、硬直したラングがパロールの実践によって再賦活化されるという弁証法的な構図を語る。だが、そのような発想はソシュールとはまったく無関係だと著者は断じる。むしろ、そうした弁証法的な遠近法を解体するような思想がソシュールのうちには芽生えていたのであり、そのことが彼の沈黙の理由なのではないかと著者は言う。

    フッサールの現象学は、自然的態度にエポケーを施すことで、いっさいを超越論的主観性という焦点のもとで見られる「本質」へと還元しようと試みた。それはまさに、超越論的主観性という消失点に向けていっさいを本質へと還元する、一つの遠近法である。現象学が一つの消失点を持っているという問題は、「生き生きとした現在」のアポリアの中で浮上し、デリダの『声と現象』によって鋭く剔抉された。著者はデリダの批判に反して、ソシュールがすでにこうした事態を見ていたのだと主張する。ソシュールの「通時態」と「共時態」との関係は、パロールの実践に基づく弁証法的な構図の中で理解されるものではない。むしろ、一つの遠近法からもう一つの遠近法へと「飛躍」する、徹底的に唯物論的な差異化の運動を、ソシュールは垣間見たのではないかと著者は言う。それは、意識への問い、すなわち「内省」(introspection)によって始まる「哲学」という一つの遠近法から、それが隠蔽している「起源」へ向けて「遡行」(retrospection)する試みである。

    さらに著者は、こうした試みをゲーデルの不完全性定理のメタファーによって説明している。これについてはこれまで多くの論者が批判してきたが、ここでの著者の意図が、脱構築をどこまでも「凡庸化」し、ポスト構造主義を「非特権化」することにあったということは、最低限踏まえておくべきだろう。

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著者プロフィール

1941年、兵庫県尼崎市生まれ。思想家。著書に『底本 日本近代文学の起源』『トランスクリティーク』『世界史の構造』『哲学の期限』『憲法の無意識』『世界史の実験』など多数。

「2019年 『戦後思想の到達点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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