カミと神―アニミズム宇宙の旅 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061588646

作品紹介・あらすじ

カミと神と、どちらを選ぶべかということではない。人類が長い歴史の間に信仰しつづけてきた神の姿を尊いと思い、しかし同時に山河大地、草木虫魚としてわれわれをとりまき、その中から突然、カミとしての姿を現すアニミズムのカミ。そのカミをたずね、カミと出逢うためには、自然に対する原始の感情をもちつづけること、宇宙に開かれたカミの窓をもつことではなかろうか、と著者は説く。原初のカミを探求する独創的な人類文化論。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルになっている対比は
    学術的な対象としてのカミと現に信じられている神
    または、体系立てられる前のカミと教理とともにある神
    2つの対比がイメージされているように思う。

    帯にも「原初のカミをたずね、カミと出逢うために!」とある。
    この本に書かれているのは「神」を遠景に見やりながら
    「カミ」をたずねる旅行記のようなものだ。

    曼荼羅としての図を描こうとしているが
    この図は特に完成させられることはない。
    カミ所在は確かなものの、その姿が鮮明にあるわけではないからだ。
    しかし、それは手抜きではなくて、
    そもそもそのような似姿を描くことに意味がないから描かれないのだろう。

    筆者のフィールドは主に東南アジアにあるようだが
    仏教の言葉が添えられることが多く、
    アニミズムを通して仏教を再解釈しているとも読める。

    1989年出版ということもあって、
    ニューエイジ的な韜晦の匂いは否めないけれど
    旅としての読書と考えれば上出来である。
    旅は何かを得るためのものではないが、何か人の心に残すものがある。

    >>
    かれらの文化のただなかに参与して、かれらとともにかれらのカミ観念を、観念としてでなくカミとして受けいれたとき、かれらの文化はウソ、虚構を核に形づくられたものでなく、ホンモノの体系になる(p.48-49)
    <<

    これは啓蒙とは真逆の相対し方である。
    そのようにしか現れないからこそ虚像だと言っても構わないだろうが、
    しかし、現に彼らにとって存在していることも間違いのないことである。

    そして、そのカミは人との関係性の中で遍在しているという直感を筆者は確かめ続けている。

    >>
    そこに歩み寄って花の美しさにうたれたリルケが、「薔薇!」と呼びかけた時、薔薇自身が「おお!」と応じた。だから「おお!」は薔薇語である。(p.136)
    <<

    リルケの詩に対する注釈の補足。
    言葉は響く、映す。このような関係を筆者はつぶさに拾っていく。
    ここに発語された言葉は存在するもののの、誰がというのが一旦空に浮いているから
    このようなユニークな発想になる。
    とはいえ、誰の言葉であるかは確かに自明というには非常に心細くて
    主張するためには強く主張しているのも明らかだ。

    >>
    自分が自分に出会う。文化の衣装をぬいで自分が自分の本来の姿を見つめる。うちなる自己を外なる自然のうちに発見する。内部にあると思っていた自分の魂が実は外部にあったことを発見する。そういう時の感じ。自分の存在の根拠、つまりアイデンティティーを外なる他者のうちに発見したときの驚きとよろこび、そういう「折れ曲がった事態の直感」が宗教の出発点ではなかろうか。どうしても私にはそう思われるのである。(p.180-181)
    <<

    これは出発点にして急所なんではなかろうか。
    ここで、宗教の、と言っているのはかなり踏み込んでいて
    一神教も多神教もひっくるめて信仰の起源について語っているはずである。
    遠い記憶への旅だ。

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著者プロフィール

1922年,横浜市生まれ。京都大学文学部卒業。京都大学大学院特別研究生,大阪市立大学教授,東京工業大学教授,国立民族学博物館教授,大谷大学教授を経て,東京工業大学名誉教授・国立民族学博物館名誉教授。著書に『カミの誕生――原始宗教』『東南アジアの少数民族』『草木虫魚の人類学――アニミズムの世界』『コスモスの思想――自然・アニミズム・密教空間』『カミの人類学――不思議の場所をめぐって』『カミと神――アニミズム宇宙の旅』『道元の見た宇宙』『からだ・こころ・たましい――宗教の世界を旅する』『死をふくむ風景――私のアニミズム』『木が人になり,人が木になる。――アニミズムと今日』『岩田慶治著作集』(全8巻)など多数。2013年2月,逝去。

「2020年 『アニミズム時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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