社会分業論 (下) (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061588745

作品紹介・あらすじ

社会が大きくなり、密度を高めるのに正比例して、分業は必然的に発展する。分業の進歩は、一方で激しい生存競争を引き起こし、また一方では競争者たちに共存の可能性を与えるであろう。本書で、デュルケムは分業の原因を仔細に検討し、さらに分業の病理学的形態の分析を通して、社会的連帯の正しい発展方向を展望する。道徳的秩序の確立、個人的人格の開花、闘争なき人類社会の創造……デュルケム社会学の実践的主題は、大きく深い。

感想・レビュー・書評

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  • デュルケームには今まであまり感心しなかったが、今回のは凄く良かった。フロイトと同じくらい、歴史上の偉人かもしれないと思った。
    「社会」を実在として、これを人びとが意志するその結びつきの力を、デュルケームは「道徳」と呼んでいる。そしてそれは「集合意識」の次元に存在する。社会-道徳-集合意識という三角形がデュルケーム思想の中核にあるのだろう。ここでは、極めて「学問的」なやり方で、分業について考察する。
    最初の方で、「連帯」をかき乱す犯罪への懲罰を、著者は激情的な復讐であると喝破する。刑罰が犯罪に対する抑止力である、などという説に対しては、それは副次的なものであり効果もごく限定的なものだという。この指摘についてはなかなか感心した。「法」なるものもまた、人びとの<共同体(場)>における情念の結実に過ぎないという考え方には全面的に同意する。
    ただし「集合意識」とはなんなのか、哲学的に考え直してみるとこれは難しい、よくわからない問題である。デュルケーム社会学ではそういった点は追究しない。
    「同業者組合」のようなタイプの連帯という概念を導入することにより、デュルケームは近代社会的「分業」の複雑さを救い出そうと、やや楽観的な主張をしているが、この本が書かれた19世紀末ならまだしも、20世紀以降、「分業」があまりにも複雑化・断片化し、「職業」なるものがもはや意味を持ち得なくなってしまった状況に関しては、彼の理論はあまり通用しないように思う。
    しかし、多くの示唆を与えてくれた本書はほんとうに優れた書物だと思う。ただ、翻訳はあまり良くない。もともとデュルケームの文章は読みにくいような気がするが、井伊玄太郎氏の訳はちょっと古めかしいので、できればより平易な新訳でもう一度読んでみたいと思った。

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