フランス絵画史 (講談社学術文庫)

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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061588943

作品紹介・あらすじ

16世紀から19世紀に至る四百年間は、フランス精神が絵画の上に最も美しく花開いた時代である。フォンテーヌブロー派、プッサン、ヴァトー、ダヴィッド、ドラクロワ、そして印象派の画像たちによる忘れ難い名作の数々-、その抑制された画面には明晰な合理性と繊細な感覚性が宿り、人間存在の全体像が凝縮している。フランス美術の精華を辿り、本書は、豊潤なユマニスムの世界へと読書を誘う。

感想・レビュー・書評

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  • 16世紀から19世紀末までのフランス絵画の歴史を、分かりやすく解説している本。美術全集などの解説として書かれた文章をまとめたもので、おおまかな流れをつかむには最適だと思う。

    16世紀には、イタリア・マニエリスムの影響を受け入れつつ、フランドル派の健全な現実認識を同時に受け継ぐ形で、フォンテーヌブロー派の画家たちが活躍する。

    17世紀になると、アンリ4世からルイ14世に至る治世に、アカデミーを中心とする中央集権的な美術界が築かれ、プッサンらの古典主義絵画が開花する。18世紀に入ってもアカデミーの理論は大きな力を持っていたが、その合理主義精神には収まりきらない感情の世界が重視されるようになり、ワトー、グルーズ、フラゴナールらの洗練された表現が生まれた。

    そして19世紀になると、ダヴィドの新古典主義、ドラクロワのロマン主義、そして印象派と優れた画家たちが登場する。

    本書では19世紀末の、ナビ派と象徴主義までが取り上げられている。

  • 高階秀爾と言えばダンディな容貌と物腰柔らかな語り口でNHK日曜美術館でもお馴染みの西洋美術史の大家だが、随分前に名著『 ルネッサンスの光と闇 (中公文庫) 』を読んで感心した。いかにも「ザ・オーソドキシー」というところはマニアックな芸術派には喰い足りないかも知れないが、東大の先生らしく概説書を書かせればさすがに手堅い。難解な理屈や高踏的なレトリックに走らない平易な解説は見事である。啓蒙書では岩波新書のロングセラー『 名画を見る眼 (岩波新書) 』(1969年)を超えるものは未だに書かれていない。

    ルネサンスと印象派については数え切れない本があるが、フランス絵画にフォーカスを絞ったものはありそうで少ない。一般向けの通史としては本書が唯一ではないか。その意味では貴重であり、ルーブルやオルセーの予習・復習にも最適だ。特に本書は他国にはないフランス絵画の特質を探り、その淵源をフランスが最も偉大であった17世紀に見出している。一言で言えばそれはバランス感覚であり、「派手な技巧よりも充実した内面性を大切」にし、「明晰な合理精神と洗練された繊細な感覚」を兼ね備えている。

    欧州の真ん中という地理的条件とも相俟って、国際的に開かれたフランスの風土は、周囲の国々、とりわけ絵画のメッカである南のイタリアと北のフランドルから多様なものを受け入れながら、それを一つにまとめあげるバランス感覚を発達させたと著者は言う。激しくドラマチックな効果を追求した「バロック」が一世を風靡した17世紀に、厳しい秩序への意志と緻密な合理精神に基づく静謐な安定した世界を志向する「古典主義」の様式を完成させた。それはまさしく「フランス精神の勝利」であると。

    正直に白状すれば、評者はフランス絵画に見られる安定感はあるが面白味に欠ける保守的な性格に物足りなさを感じていたし、それは本書の読後でも基本的には変わらない。だが動と静、感情と理知、個性と普遍、自由と秩序、色彩と形態といった相反する諸傾向を、抑制と均衡のうちに統御せんとするところに、節度と中庸を重んじるフランス精神の真髄を見たような気がする。その意味で本書は優れた美術史であるとともに、良質のフランス文化論であると言ってよい。

  • TS4a

  • ブックオフ池袋、¥550.

  • 王の政策や市民の台頭など、当時の社会状況と絵画の変遷が密接に関わり合っていることをより実感として捉えられたことが大きな収穫だったと思います。
    絵画を知ることが歴史を知ることに、もしくはその逆につながるんですね。

  • 分かりやすい。手元においておきたい本

  • 他の高階本にことごとく5つ星をつけている私が珍しく★4つ。
    理由はたった一つ。図版が少ない&白黒・・・。特に古い時代のフランス絵画は、類書で図版を探すだけですごく手間がかかる。結果、言葉だけのイメージで本書を読む→理解することになる。

    最初のつかみと最後のまとめ(わずか数ページ)は秀逸。最初はフランス絵画の特質を一言でまとめ、最後は絵画のグローバル化をうまく表現している。

    ただフランス絵画通史を日本語で読めるのは、本書ぐらいではないか?という意味で、★を5つに戻す。どの箇所もその指摘は鋭いからだ。

  • 基礎文献

  • フォンテーヌブロー派からナビ派、象徴派の時代までのフランス美術の通史をとても丁寧に解説してある一冊。
    イタリアやフランドルの影響を受けながらもフランス美術がどのように自己のアイデンティティを確立していくか、アーティストを囲むアカデミーや政治情勢も絡めてどのようにフランス美術が花開いていくのかとても理解しやすく大変勉強になりました。
    またパリに行かなきゃ・・・!

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著者プロフィール

高階 秀爾(たかしな・しゅうじ):1932年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。1954ー59年、フランス政府招聘留学生として渡仏。国立西洋美術館館長、日本芸術院院長、大原美術館館長を歴任。現在、東京大学名誉教授、日本芸術院院長。専門はルネサンス以降の西洋美術史であるが、日本美術、西洋の文学・精神史についての造詣も深い。長年にわたり、広く日本のさまざまな美術史のシーンを牽引してきた。主著に『ルネッサンスの光と闇』(中公文庫、芸術選奨)、『名画を見る眼』(岩波新書)、『日本人にとって美しさとは何か』『ヨーロッパ近代芸術論』(以上、筑摩書房)、『近代絵画史』(中公新書)など。エドガー・ウィント『芸術の狂気』、ケネス・クラーク『ザ・ヌード』など翻訳も数多く手がける。

「2024年 『エラスムス 闘う人文主義者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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