「近代の超克」論 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061589001

作品紹介・あらすじ

座談会「近代の超克」は、昭和17年、各界知識人による"協力会議"を標榜して開かれた。"伝説的に有名"なこの会議は、不毛な体制讃美に終わったのか、それとも日本思想の極北たり得たか?著者は、西欧哲学の超克を志向した西田哲学本来の構えに立ち返り、高山・三木ら京都学派の「世界史の哲学」の役割と限界を剔括する。

感想・レビュー・書評

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  • 30年ぶりの再読。
    廣松は、「今日、ことあらためて『近代の超克』を主張しようとする者は、ー哲学の世界では半世紀以上も前から近代の超克が課題として意識されてきた事情を念頭に収めるだけでなく、ーいずれにせよ、戦時下の日本においてそれが問題にされた位相について、しかるべき認識を持つことを要求されるであろう」pp.14-15.この書、発刊時からさらに30年、廣松の要求を今でも繰り返すことは、意味があるのではないか。
     モダン、ポストモダンの議論だけでなく、例えば、林房雄の「記紀、万葉その他の古典文献の文部省的釈義によって、日本人ができるなどとおもってそんなことをやっている連中に、お前らは苦労したかと言ひたい。万葉、記紀その他の古典文献以外に、一体お前らは何を識っているか、真剣に近大といふものを通ってきたかとさえ質問したいね」(p.196との発言。そしてそれをうけtの河上徹太郎の「さっき小林(秀雄)君が『俺たちは若いときには西洋のドストエフスキイ何かを読んだが、今は古典の面白さが解かった』といつた。これはわれわれもさうなんだけど、〔日本の〕古典が面白っくなったのは、要するにドストエフスキイやボードレールを読んだからで・・・」(p.197)といった言説は、国語教育においてどのように受容され、超克されてきたのか?国語教育は、はたして「近代の超克」を超克できているのか?(T.N)

  • [ 内容 ]
    座談会「近代の超克」は、昭和17年、各界知識人による“協力会議”を標榜して開かれた。
    “伝説的に有名”なこの会議は、不毛な体制讃美に終わったのか、それとも日本思想の極北たり得たか?著者は、西欧哲学の超克を志向した西田哲学本来の構えに立ち返り、高山・三木ら京都学派の「世界史の哲学」の役割と限界を剔括する。

    [ 目次 ]
    第1章 『文学界』誌上座談会にふれて
    第2章 高坂正顕氏の所論を読み返す
    第3章 『世界史の哲学』と大戦の合理化
    第4章 戦時下「日本思想」批判の一里程
    第5章 国家総動員体制と歴史の狡智
    第6章 三木清の「時務の論理」と隘路
    第7章 民族主義的「自己偽瞞」の絶唱
    第8章 絶望の余焔と浪曼主義的自照
    第9章 京都学派と世界史的統一理念
    第10章 哲理と現実態との媒介の蹉跌

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 近代を超克するとは、
    政治においては民主主義の超克であり、
    経済においては資本主義の超克であり、
    思想においては自由主義の超克であるという。
    戦前、戦中に設定された課題としては何とハードルの高いことであろうか。
    まるで戦後に盛隆したポストモダンが掲げる課題のようだ。

    そして終着点を見出すことなく開戦した日本のように、
    同時代の近代の超克という議論も終着点を見出すことなく終わってしまった。
    両者に共通するのは、
    日本の持つ独自性こそが終わらぬ連鎖に終止符を打つ可能性である
    という祈りにも似た思いだったように感じる。

  • 廣松の論調は一貫性があるが難解であることが多い。

    高山岩男の世界史に対する論調では、 至極当然のことを分かり易く述べているので驚いた。

    廣松の論戦の場は、文学、歴史、哲学、経済学、物理学と幅広いが、 分かりやすいのは歴史についてだろう。

    廣松渉の本を読んだことがない人にお勧め。 他の廣松渉の著作は、背景となる知識ぬきに読まない方がよい。

    背景のもっとも重要なのは歴史だから。マッハの廣松渉の翻訳は読んでおくとよいかも。物理学は学問の基礎のきそ。物に関する学問だから。廣松渉がどういう物理学を理解しているかが分かるかも。

  • 1941.12.08開戦から半年というせっぱ詰まった段階における「知的戦慄」のうちに論じられた日本における<近代の超克>座談会。それは議論としても現実としても未完に終わった。
    そのような昭和思想史を廣松はどう説くか。是非一読を。

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