アラビア人文学 (講談社学術文庫)

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感想 : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061589629

作品紹介・あらすじ

『コーラン』と『アラビアンナイト』だけがアラビア文学ではない。では私たちは他に何を知っているだろう。アラブ諸国の人と文化を、必要最小限理解しているだろうか。本書には世界史をリードし続けてきたイスラーム文化の多彩で高度な達成が博く展望されており、西欧文明とはまた異質のアラブ文化の根本的パラダイムが明快に描出されている。世界的権威による最も信頼できるアラビア人文学の概説書。

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  • 原題:Arabic Literature – An Introduction (1926)
    著者:Hamilton Alexander Rosskeen Gibb
    (1895-1971)
    訳者:井筒豊子 (1925-2017)

    【メモ】
     http://ameqlist.com/sfg/gibb.htm

    【版元】
    イスラム文化・歴史理解に必読の世界的名著ギブ教授はオクスフォ-ド,ハ-バ-ドで多年アラビア学を講じた斯界の最高権威.その著者が5C~20C初頭に至るアラブ世界の文芸・思想の発展を生き生き描く

    製品名 アラビア人文学
    発売日 1991年03月08日
    価格 定価 : 本体718円(税別)
    ISBN 978-4-06-158962-9
    判型 A6
    ページ数 258ページ
    シリーズ 講談社学術文庫
    http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784061589629


    【目次】
    はしがき(H・A・R・G 一九二六年五月) [003-004]
    目次 [005-007]
    凡例 [008]

    一 序論 011

    二 アラビア語 018

    三 英雄時代(西暦500年前後~622年) 027

    四 拡大伸展の時代(西暦622年~750年) 052

    五 黄金時代(西暦750年~1055年) 072
    (一) (西暦750年~813年) 081
    (二) (西暦813年~847年) 094
    (三) (西暦847年~945年) 103
    (四) (西暦945年~1055年) 127
      (a) サイフッ・ダウラ周辺
      (b) ブワイヒ家一族統治下のイラク
      (c) 東部ペルシャ
      (d) エジプトと北西アフリカ
      (e) スペイン(西暦750年~1091年)

    六 銀の時代(西暦1055年~1258年) 173
    (一) イラクとペルシャ 179
    (二) エジプト 191
    (三) シシリー 203
    (四) スペイン 206

    七 マムルーク時代(西暦1258年~1800年) 213
    (一) エジプトとシリア、西暦1517年まで 215
    (二) スペインと北西アフリカ 225
    (三) 西暦1517~1800年 234

    エピローグ 239

    原注 [246-248]
    訳者あとがき(一九八一年十月二十四日 鎌倉にて 井筒豊子) [249-252]
    学術文庫版あとがき(一九九〇年十一月二十日 鎌倉にて 井筒豊子) [253]
    主要人名索引 [255-258]



    【抜き書き】
    [pp. 25-26]
     “次のような事実によって、アラビア語のこの難解さはさらに増大する。つまり、文章の意味を決定するには、各単語の子音構成と全般的な構文の構成を見るだけで充分であると考えられているために、書記に際して、子音と子音の中に母音を挿入することは不必要とみなされていることだ。従って、よくいわれるように、アラビア語のテキストは、志向されている意味内容の七五パーセントしか含んではいない、そして残りの二五パーセントは、読者の補充にゆだねられている。この結果、その文章に使用されているどの単語に関しても、その意味は全部知っているし、構文構成もすっかり理解していながら、なおかつ全く極端に相違する二種類の解釈のいずれを採るべきかについて迷う、というような事態が起り得るのである。このことはまた、単にこの種のことで格別不利な立場にあるヨーロッパのアラビア学者にだけ該当することではない。アラビア語を母国語とする現地学者ですら、もしたまたまその学者が、あの、文字で書かれたテキストの通読解釈を補足する口頭の伝承に常々慣れ親しんでいなければ、やはり度々解釈の誤りを犯す羽目に立ち至るだろう。
     以上述べたことは、もちろん、すべて、個々の単語の辞書的意味決定に伴う本来的な困難さや、また写本作製者の無知や不注意から生じるテキスト自体の誤記に関することなどを考慮の圏外に置いた上での話であって、おまけにこの手写本の作製については、アラビア文字の特殊性のために、他の言語の手写本文献の場合に較べて、誤記の生ずる危険度は特に高いはずなのである。”



    [61-62頁]
    “ だが、アラビア人の諸国征覇のもたらした最も枢要な成果は、何といっても、征服された諸民族のイスラーム宗教共同体への漸進的な同化融合だった。彼等はそれぞれ、自己に固有の文化に根ざした経験や風俗習慣をイスラーム共同体の中に持ち込んで来たが、それによって、彼等外来民族は、アラビア人だけの力ではとうてい到達することの出来なかったような高度の段階にまで、アラビア文学とアラビア思想を成長発展させたのであった。もっとも、外来分子のそのような影響力が実感されるようになるのは、この「拡大伸展の時代」もその終極に達する頃だ。イスラーム暦第一世紀に行われた諸研究は、僅かの例外を除いて、たしかにアラビア人の手で遂行された。だが、「イスラーム学」展開への第一歩をふみ出す端緒となった一半の原因は、非アラビア語民族のイスラーム共同体への流入にあった。
     聖典『コーラン』が編まれていた頃、アラビア語はひどく不完全な書き方で手写されていて、アラビア語を知り尽した人でなければ、とうてい解読など出来るものではなかった。第一には、もっと適当な手写法を確立し、第二には、アラビア語の文法法則を確立することによって、誤読や誤字で混乱崩壊の危機にある『コーラン』のテキストそのものを正しく保存することが急務という事態となった。かつてのペルシャ諸領で特にこの必要が痛感されていたため、緊急事態を収拾するべき最初の試みは、イラク地方の守備隊の駐屯する諸都市で始められた。〔中略〕”

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