- Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061590229
作品紹介・あらすじ
19世紀から第1次世界大戦にかけてドイツの大学は過激派学生が登場し、大学紛争が頻発した。放縦な生活を送る学生と専門研究に没頭する教授たちで大学は混乱をきわめていた。だが、こうした中で豪華絢爛たる学生文化と科学革命が花開いた。ドイツの大学は世界の大学のモデルとなり、憧れの的となったが、やがて軍国主義の波にのみこまれていった。ドイツの大学のおいたちを文化史的にさぐる好著。
感想・レビュー・書評
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これは非常に面白い。名著。19世紀のドイツの大学の様子がとてもよく分かる。
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「ドイツの大学はレジャーランド学生と専門研究に没頭する教師との共棲の上に成り立っていた。およそ異質な人種が、ただ大学という場を思い思いのしかたで利用していたところにその特色があった(p293)」
19世紀中葉以降、世界の最先端に躍り出たドイツの大学にはこのような特色があった。さらに、「高等教育のビスマルク」と言われた大学行政官僚アントホーフが君臨していた。
100年以上経った現在、ドイツは「インダストリー4.0戦略」で第4次産業革命を社会実装しようとしている。Society5.0社会を前に、日本の大学はどう行動すべきか考えさせられた。
アメリカの研究大学を創った巨額な寄附はない。限られた予算を政府から持ってこれるアントホーフもいない・・・。
それにしても、修論指導教官の本はやっぱりおもしろい! -
読み始めて、読んでも読んでも、大学の様子は描かれていなかった。
とにかく血気盛んなラディカルな学生や若手教師の博士革命といった穏やかでない事象ばかりである。
フンボルト理念の解説から期待していて、まあその前史くらいは読むだろうと予測していたが、見事に裏切られた(悪い意味ではない)。
3分の1くらいを読み進めたところで、有資格者の無給の私講師と聴講料の話になってくる。ふむふむ。
そして、学生文化・レジャーランド化・学生組合というコーア文化が高揚したとも書かれている。そのうちケーゼナー・コーアには多数の貴族指定が加入し、高級官僚がこのギルドから巣立ったという。日欧米のどの国でもこの種のコミュニティがあるのだな。
6章までは、どちらかというとあまりポジティブでない話題が多かった。法学博士の学位は価値はなくお金で買えた。官僚の試験とは関係がないため。などの話題も。
7章以降に入り、行政のことが話題になる。
1825年以降の劇的な科学革命は、大学の研究成果による。しかしそれはフンボルト理念の下で「大学の中心的な役割は研究にある」という思想が、新構想のベルリン大学にあり、近代化の成功した。ということではない!なんと観念的な哲学と実証科学は中が悪かったらしい。
つまるところ、1817年の文部省設置により大学行政が中央集権化されたことに大きな要因があるという。教員には研究業績で人事考課するため、学問に対する貢献・新知識の発見が求められた。
高等教育のビスマルクというアルトホーフが上記の人事と大蔵省から獲得した予算を握り、学問大国を治めていたというのが、科学の発展の基盤となっていたのかもしれない。
今の日本で国立大が法人化されたとはいえ、多くの共通点が見いだせるといえる。 -
ブルシェンシャフトという伝統、フォレンという人物、ヘーゲルが嫌な教官だった(?)ことなど、なかなか興味深いことを教えてくれる。
著者プロフィール
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