- Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061590663
作品紹介・あらすじ
日本中の銀行が預金取付の大津波に襲われ、異例の支払猶予令が断行された昭和金融恐慌。東京渡辺銀行などの倒産、破産が続出し、休業銀行の多くは預金の4〜5割を切捨てた。この大異変の背景には銀行の前近代性と、熱狂的投機ブームの反動で膨れた莫大な不良債権があった。在野の経済評論家として名高い高橋亀吉を主執筆者とし、金融恐慌の原因と実態を豊富なデータを駆使して解明した注目の書。
感想・レビュー・書評
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石橋湛山とともに、在野のエコノミストとして活動をおこなった高橋亀吉が中心となって、昭和恐慌の原因をさぐるとともに、その経緯をたどっている本です。
著者たちは、「昭和金融大恐慌史は、その誘発原因よりも、その遠因なり、近因なりの真相の究明が最も重大なポイントになる」と語り、日本の銀行制度の「前近代性」が深刻な恐慌を引き起こした根本的な原因だと指摘しています。この「前近代性」とは、日本の銀行が機関銀行としての性格をもっており、密接な関係をもつ取引先に対して放漫な融資をおこなってきたことを意味しています。とくに、恐慌の中心となった鈴木商店と台湾銀行の癒着の実態について、くわしい解説がなされています。
また、関東大震災後に政府による緊急措置がとられたものの、すでに破綻に瀕していた会社や銀行の延命措置のために利用され、近代化が遅れたことで、その後の恐慌の深刻化を引き起こしたことが指摘されています。こうした原因の検討がなされたうえで、金解禁にいたるまでの政策決定のプロセスや、取り付け騒ぎにはじまる恐慌の経緯についての説明がなされています。
著者の一人である森垣淑は、1993年に文庫化されるにあたって書かれた「はしがき」で、バブル崩壊という当時の日本の状況に触れて、「近代化いまだ不十分というべきか」と嘆じています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
専門書だが、あいにくこの分野に対する知識はゼロに等しい。とりあえず理解できるところだけをかいつまみながら、そのほかの部分は糸を通すようにして読んでいった。しかし、教科書的に理解していた当時の金融恐慌も、こうして詳細に知るとさまざまな要因があったのだと(当たり前だが)、気付かされる。
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高橋亀吉 「 昭和金融恐慌史 」昭和2年の金融恐慌の原因を究明した本。小銀行の濫立が 金融恐慌に至った経緯がよくわかる。小銀行の濫立は 現代の仮想通貨業者の濫立と結びつく。
時代に遅れた銀行制度=産業の銀行の強い結合→小銀行の放漫経営→預金者の取付騒ぎ→銀行倒産
恐慌の原因
*蔵相の失言→渡辺銀行への取付騒ぎ(預金者の預金払戻)
*台湾銀行と鈴木商店の絶縁→鈴木の経営する銀行の取付騒ぎ
*台湾銀行、十五銀行(華族銀行)の休業 -
ちょっとした読み物としてまぁまぁ面白い。
文体というか記述スタイルはいかにも昔の“講談調”、時代を感じさせてくれる。
「歴史は繰り返す」、これはよく言われる警鐘だが、実は歴史をフレームという観点から見れば至極当たり前のこととも言える。要するにフレームを構成する要素が時代とともに変わっているだけで、その本質は基本的には変わらないということ。
だからバブルは繰り返す、それが人間の宿命なんだろう。とは言うもののやっぱり一番腐ってるのは政治。政治=人間のコミュニケーション行為の極限であるがゆえに善悪の全てが高次元(?)に備わっている。だからしゃあないと言えば身も蓋もないんですが、それでもどうしても納得できないというのは当方の青さの成せる業ですか。 -
タイトル通り、昭和金融恐慌の歴史を辿った一冊。金融恐慌の背景として銀行経営の前近代性を挙げている。鈴木商店と台湾銀行の抜き差しならなくなった関係については日本経済史の授業で必ず触れるところだと思うが、改めて読むと、信じられないくらいに恐ろしい。
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戦前に発生した昭和金融恐慌の研究本。どのようにして金融恐慌は発生し、どのような結末を迎えたかが丁寧に書かれている。ニューヨークと上海(戦前のアジア市場の中心)の投機筋が円をおもちゃにしていた事実や、政商達の放漫経営のつけを国が払う事を国民が拒否し、結果国民が痛手を受けた事。まるで、平成金融恐慌を見ているような錯覚を覚え、『人間ってあまり変ってねー』と絶望する一冊。
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むかーし、読んだ。内容を、ほとんど憶えていない。
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当時の時代背景や銀行の性質が分かるが難しすぎてよく分からない。
これを理解して読むには専門知識が必要だろう。
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