現代の社会科学者: 現代社会科学における実証主義と理念主義 (講談社学術文庫 1096)
- 講談社 (1993年10月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (525ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061590960
作品紹介・あらすじ
十八世紀から現代にかけて、社会科学は実証主義と理念主義の二大潮流を形成した。前者はコント、ミルに始まり、ワルラスの均衡理論はミクロ経済学の礎となり、パーソンズの機能理論は社会学発展に寄与した。一方、ヘーゲルに発する理念主義はディルタイの歴史主義、フッサールの現象学、そしてマルクス主義を生んだ。本書はこの社会科学の大河に分け入り、源流から現代に至るまでを克明に論述する。
感想・レビュー・書評
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哲学史では経験論と合理論をカントが調停したとされているが、本書ではカントはドイツ観念論を生み出しヘーゲルによって理念主義を形成、他方経験論は実証主義へと発展し、社会科学領域においては両者は思想的なコントラストがあるというストーリーで、大変読み応えのある興味深い内容になっている。
著者によると両者の調停を試みたのがウェーバーであるとの見解のようだが、人文科学と自然科学の中間に位置する社会科学という学問領域において、未だに理念主義と実証主義との対立構造は解消されているとは言えない。とは言え、昨今では政治思想や経済思想が下火となり、社会学を中心とする調査分析系の人気が高まっている事を考えると、社会科学全体が実証主義の方向に傾いているのではないかと感じるところもある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自然科学の場合には社会科学よりももっと専門分化の度合いが高く、まgた個別分野ごとの知識の専門性の度合いが一層大きいと思われるけれども、ただ逆にそうであるがゆえに、個別科学の視点を一応離れて、いわば全体を外からマクロに見る科学史といった研究領域がそれ自体1つの専門的役割として成立し、ある程度まで制度化されている。
社会科学においてはそれぞれの個別科学のの内部に、考え方を全く異にした用語からして根本的に異なる複数の学説が同時併存しあっているのが、むしろ常態である。 -
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