探究2 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061591202

作品紹介・あらすじ

『探究1』で、独我論とは私にいえることが万人に妥当するかのように想定されているような思考であると指摘した著者は、『探究2』では「この私」を単独性として見る。単独性としての個体という問題は、もはや認識論的な構えの中では考察しえない。固有名や超越論的コギト、さらに世界宗教に至る各レベルにおいて、個(特殊性)-類(一般性)という回路に閉じこめられた既成の思考への全面的批判を展開する。

感想・レビュー・書評

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/740017

  • [ 内容 ]
    <Ⅰ>
    本書は〈他者〉あるいは〈外部〉に関する探究である。
    著者自身を含むこれまでの思考に対する「態度の変更」を意味すると同時に、知の領域に転回をせまる意欲作。

    <Ⅱ>
    『探究1』で、独我論とは私にいえることが万人に妥当するかのように想定されているような思考であると指摘した著者は、『探究2』では「この私」を単独性として見る。
    単独性としての個体という問題は、もはや認識論的な構えの中では考察しえない。
    固有名や超越論的コギト、さらに世界宗教に至る各レベルにおいて、個(特殊性)―類(一般性)という回路に閉じこめられた既成の思考への全面的批判を展開する。

    [ 目次 ]
    <Ⅰ>
    第1章 他者とはなにか
    第2章 話す主体
    第3章 命がけの飛躍
    第4章 世界の境界
    第5章 他者と分裂病
    第6章 売る立場
    第7章 蓄積と信用―他者からの逃走
    第8章 教えることと語ること
    第9章 家族的類似性
    第10章 キルケゴールとウィトゲンシュタイン
    第11章 無限としての他者
    第12章 対話とイロニー

    <Ⅱ>
    第1部 固有名をめぐって(単独性と特殊性;固有名と歴史;名と言語;可能性と現実性;関係の偶然性)
    第2部 超越論的動機をめぐって(精神の場所;神の証明;観念と表象;スピノザの幾何学;無限と歴史;受動性と意志;自然権;超越論的自己;超越論的動機)
    第3部 世界宗教をめぐって(内在性と超越性;ユダヤ的なもの;思想の外部性;精神分析の他者;交通空間;無限と無限定;贈与と交換)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 『探求I』を読んでしまったならば、『探求II』も読まねばなるまい、という気持ちで読んだ。
    岩井克人の本と併読、あるいは続けて読むべし。

  • 最近読んだ『感じる脳』 (Looking for Spinoza: A.R.ダマシオ)で、スピノザについて参照されていたので、同じくスピノザを援用して著者の持論が展開されていた柄谷行人『探求 II』を手に取り再読した。

    結果、ダマシオのスピノザと柄谷のスピノザは全然違うもので、改めてテキストというものは多様に読めるものでらうということがわかった。単純化して説明すると、ダマシオが『エチカ』第二部の「精神の本性および起源について」や第三部の「感情の起源および本性について」に強い反応をしているのに対して、柄谷はより根源的であろう第一部の「神について」に対して強い反応を示す。スピノザが「無限の実体」として規定したような「神」が、外部性や他者についての思索を深めていたこの頃の柄谷にとってピタリとはまるものであったのか、ずいぶんとスピノザに依拠して論を進めている(スピノザだけではないが)。

    今あらためて読んでも、はっきり言って自分が理解できているのか分からないが、有無を言わさず読むものを説き伏せてしまうような力強さは相変わらず。
    第一章では、一般性に回収されない「この私」の「この」性、つまり柄谷のいう「単独性」について語られる。基本的にはこの本の中では、主題となる「単独性」を巡る言説が、デカルト、スピノザ、レヴィ=ストロース、フロイトなど古の哲学者の言葉を挙げながら繰り返される。固有名(第一章)や世界宗教(第三章)もいわゆる「この」性を探究するために挙げられた要素である。「世界に神秘はない、世界があることが神秘だ」とウィトゲンシュタインがいった場合の"この"世界についての思考とも言える。
    超越論的自己にも繰り返し言及し、自由意志や自発性、受動性についても興味深い論が展開される。「主体または自己は、本来身体の変様として受動的であり、さまざまな「原因」によって規定されているにもかかわらず、そのことを知りえないがゆえに自発性と思い込まれた"想像的なもの"である」という点でスピノザに共感を示す。この辺りの自由意志の話は現代の脳神経科学の知見にも沿っているようで、興味深い考察となる。

    「むろん私は、別にデカルトやウィトゲンシュタインは本当はこうなのだと主張するつもりはない。マルクスに関しても同じだ。私は私の考えをいっているだけだと考えてもらってもかまわない。ただ、私のいうようなことが考慮されていない議論は、どんなに綿密であっても、たんに退屈なのだ。」と言い切ってしまう傲慢さが心地よい。倫理的に批判を突き詰めているという趣があり、緊張感が感じられる。個人的には柄谷行人が最も輝いている時期の最高峰の著作である。


    ---
    『感じる脳』(アントニオ・ダマシオ)のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4478860513

  • 共産主義だとか、マルクス主義だとか、古典的な資本論だとか、僕が学生時代に既に見向きもされなかった思想や背景について、「合点がいく」説明を初めてしてくれたのがこの著書です。 なぜ大学で教えてくれなかったのか、とマネタリズムを勉強しながら、一方マルクス経済学の講義を受けていた僕は思いました。

  • 大学に入ってすぐに大きな影響を受けた一冊。
    全般的な主張よりも、「単独性」が指し示す「この私」の「この」という概念に惹かれた。

    私がいつまでも「他者性」を問題にしてしまうのは、この本が一つのきっかけ。

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著者プロフィール

1941年兵庫県生まれ。東京大学経済学部卒業。同大学大学院英文学修士課程修了。法政大学教授、近畿大学教授、コロンビア大学客員教授を歴任。1991年から2002年まで季刊誌『批評空間』を編集。著書に『ニュー・アソシエーショニスト宣言』(作品社 2021)、『世界史の構造』(岩波現代文庫 2015)、『トランスクリティーク』(岩波現代文庫 2010)他多数。

「2022年 『談 no.123』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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