歴史学概論 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061591448

作品紹介・あらすじ

歴史学とは何か。古代ギリシアのヘロドトスから、ローマ帝国末期のアウグスティヌス、ルネサンスの人文学者やフランスの啓蒙思想家を経て、十九世紀ドイツのランケに至って近代歴史学は成立した。その発達段階を明快に分析しながら、古代から中世への転換期の歴史意識の研究など、現代歴史学の問題点をも論及。西洋史学の泰斗が、「歴史することの妙味」と歴史を学ぶ心構えを懇切に説いた必読の書。

感想・レビュー・書評

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  • (以下、個人的メモです)

    内容としては、広大な視野に基づいて書かれていて、なかなか示唆に富むものだった。
    柴宜弘先生が述べられていた地域史の重要性、この時代から既に強く叫ばれていたようだ。ただし、柴先生とはやや異なる文脈だったように思う。体系的な歴史把握を最終目標に据えたうえでの、厳密かつ現実的な基礎付けとしての地域史、ということだった(乱暴な要約だと思います)。
    いわば複雑系?的な考え方なのかもしれない。地域史の限界として、ミクロな観点への埋没の危険性、高度かつ広範な補助学を必要とするゆえの操作誤りの危険性、が述べられていた。このことも勉強になった。

    読みやすさについて。
    色々と論文等をつぎはぎしたようで、章ごとに文体や文章構造が違うところがある。ただ、全体的には、著者なりに読みやすくしようと工夫を試みたことは感じられた。しかしながら、第三~四章の史学史に関する叙述は、知識がない者にとっては難解に感じられる。文章は一文が長いうえ重層構造的で、しばしば脱線もあり。格調高い文章ということだと思われるが、社会科学系の論文の書き方指導で叩き込まれるルールの真逆をいっていて、ある意味自由で清々しい。私は仕事合間にしか読めないため、随所でメモをとりつつ、時折一度読み返すなどして、何とか構造把握に努めようとして読んでいた。

    ただ、述べられている中味はホンモノであり、含蓄があって、なんにせよ勉強になった。時間がたったら、要約したメモ書きを読み返してみたい(本書を一から読み返す気力はないかな…)。そのうち巻末の推奨文献にも手を伸ばしてみようかなと思う。

  • アナール学派以降の新しい歴史学の潮流を押さえつつも、伝統的な歴史学の枠組みを踏まえて、歴史学という学問の概要が紹介されています。そういう意味では、少し古いタイプの歴史学の入門書だと言えるのかもしれませんが、研究史的なヴィジョンを得ることができるという点で、良い入門書だと思います。

    著者自身は西洋史の専門家ですが、日本の歴史学に対する意見もところどころで表明されていて、おもしろく読みました。

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著者プロフィール

1908~1997年。奈良県生まれ。一橋大学経済学部教授を経て一橋大学学長。一橋大学名誉教授。歴史学者。1995年文化勲章受章。著書に『独逸中世史の研究』『西洋中世世界の成立』『ヨーロッパとは何か』『都市』『大学でいかに学ぶか』など多数。

「2021年 『ヨーロッパ中世の社会史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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