俳句の世界 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061591592

作品紹介・あらすじ

名著『日本文藝史』に先行して執筆された本書において、著者は「雅」と「俗」の交錯によって各時代の芸術が形成されたとする独創的な表現意識史観を提唱した。俳諧連歌の第一句である発句と、子規による革新以後の俳句を同列に論じることの誤りをただし、俳諧と俳句の本質的な差を、文学史の流れを見すえた鋭い史眼で明らかにする。俳句鑑賞に新機軸を拓き、俳句史はこの1冊で十分と絶賛された不朽の書。

感想・レビュー・書評

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  • 小西甚一 俳句の世界

    俳句の趣を知るには、受容者(聞く側)に 補充する感覚が必要という命題のもと、不言の言という言葉を使って、その感覚を伝えようとした本

    この本で たくさんの句に触れたが、句に隠された 寂寥(せきりょう)が好き〜晩年の松尾芭蕉 や 山口誓子 が特にいい


    〈貞享元年 芭蕉41歳〉
    海暮れて鴨の声ほのかにしろし
    *波音からほのかに聞こえる鴨の声〜景色だけを詩句にまとめ 宇宙の大真理と感合する
    *芭蕉は禅をベースにして 宇宙の大真理を潜ませる自然を詠じた
    *白し=視覚領域〜聴覚現象を視覚で把握する

    〈貞享3年 芭蕉43歳〉
    古池や蛙とびこむ水の音
    *蛙そのものを深く見つめ、水音だけに焦点が集中し、あたりの静けさが際立つ
    *描写は消えても景色は消えない〜はじめ見えなかった波紋、静寂さを愛する心境の深さまで表現される
    *不言の言〜描写しないことにより描写する以上に表現する

    〈貞享5年 芭蕉45歳〉
    身にしみて大根からし秋の風
    *大根のからさがしみる感じと秋風がしみじみ心に迫る感じの融合
    *宇宙の無限なる「いのち」に深まってゆく〜真の美
    *俳諧が芸術であることの表明

    〈元禄2年〜〉
    夏の夜や崩れて明けし冷やし物
    *昨夜の心づくしの冷やし物が形崩れて別物のよう
    *楽しみを尽くした後の虚しさ〜かるみの代表作
    *かるみ=流行=そのときどきに移り変わっていく表現

    この秋は何で年よる雲に鳥
    *今年の秋は どうしてこんなに老年の寂しさが身にしみるのか〜秋の空に消えていく鳥
    *漂泊者の寂寥
    *雲に鳥=実景でなく 一番それらしいあり方→意識の深層において把握される現象の本質

    秋深き隣は何をする人ぞ

    旅に病んで夢は枯野をかけめぐる


    正岡子規
    幾たびも雪の深さを尋ねけり〜雪の日の深い寂しさと病人特有の神経を表現


    山口誓子
    学問のさびしさに堪へ炭をつぐ〜本の中の寂寥に抵抗する感じ







  • 『古文の読解』、『日本文学史』に次いで読み進めた小西先生の本。教育も非常に重視されていたという評伝のとおり、読む人の事を考えた作りになっていた。

    俳句/俳諧は、学校の教科書で習ったぐらい、つまりずぶの素人だったが、それでも「全てを語り切らずに語る」という俳諧の核を理解できたのは、小西マジックの為せる業。ご存命中に、その講義も受けたかった。

  • 俳句を「叙述しない表現」、「無言の表現」と位置づけ、連歌と俳諧の違いから昭和の俳句までを概観。芭蕉、蕪村をはじめ、有名無名の人物の作品を取り上げ、時にユーモラスに、時になたをふるうように評釈する。底本の初版は1952年と大分古いが、今後もかれの俳諧・俳句論は色褪せることはないだろう。「菫ほどな小さき人に生まれたし 漱石」文中、私が最も心打たれた作品。

  • 論旨は明快ながら、細かい点でけちがつく。例えば、個々の俳句の解釈をせずに、良い句である。と断じる点や、時系列に沿うのが唯一の理解の仕方といいながら、俳句時代の評釈が前後している点。その点で、山本健吉に及ばない。

  • 俳句の歴史をたどりながら、鑑賞の仕方を説いた本。高校から大学の教養課程にかけての学生たちを読者として書かれた本で、非常に読みやすい文章でありながら、たいへん豊かな内容を持っている。

    本書では、俳諧連歌の発句として生まれた俳諧と、正岡子規の革新以後の俳句との間に、はっきりとした区別を設けている。その上で、連歌と俳諧の本質的な違いに気づいた山崎宗鑑や荒木田守武から説き起こして、貞門俳諧、談林俳諧を経て、松尾芭蕉による「さび」と「かるみ」の境地の確立へと進んでゆく。

    その後、与謝蕪村を中心とする江戸時代の俳人たちについて概説したあと、子規以降の近代俳句の解説に進む。子規以降の鑑賞では、著者自身の評価が強く押し出されているように感じたが、読者の一人ひとりが自分で俳句を鑑賞するための導きになってくれるように思う。

  • 13/03/23、ブックオフで購入。

  • この著者の本はどれもユーモラスで読みやすい.
    ただの俳句の歴史の概説を越えて,著者の一歩踏み込んだ芸術論が展開されるのも好きだ.

  • 俳句の源流からさかのぼって旅をするような解説。
    たしかに「俳句史はこの一冊で十分」と言われるのも納得。

    特に芭蕉と禅の関わりについての解説は素晴らしかった。

    もっと小西甚一氏の著作を読みたいと思った。


    これ以外の、この本の感想、引用は以下にあります。
    http://micahopinion.tumblr.com/post/29045869700
    http://micahopinion.tumblr.com/post/29045137958

  • 小西甚一『発生から現代まで 俳句の世界』
    (1952刊/1994復刊)を読む。表4解説にこう書いてある。

     「俳句鑑賞に新機軸を拓き、
      俳句史はこの一冊で十分と絶賛された不朽の書。」

    看板に偽りなしであった。
    そもそも小西先生の『古文研究法』に高校生のときに出会った。
    つい先日、『古文の読解』が復刊したのを
    坪内祐三のコラムで知り、
    その機会に先生の著作を何冊か買い求めた。
    『俳句の世界』はそのうちの一冊である。

    連歌、俳諧、俳句の違い。
    雅と俗のキーワードで大胆に日本文藝史を読み解く小西理論。
    連歌師から現代の俳人までの歴史を
    文庫400頁に書ききった視野の広さ、知的体力。
    面白い面白いと読み進めてしまった。

    凡庸な俳句の本とは異なり、
    著者が天才と認める芭蕉、蕪村、誓子らの句についても
    傑作だけでなく低迷期の作品まで批評し尽くす鋭さがある。
    著者自身も実作に励み、
    そうでなければ俳句の心は分からないと
    理論と行動でこの芸術の奥義に肉薄していく。

    もともとは昭和22年の大学での講義ノートに基づく著書。
    名講義を半世紀以上過ぎて味わえるのが至福である。

    (文中一部敬称略)

  • 俳句へのいざない

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