新しい歴史学とは何か: アナール派から学ぶもの (講談社学術文庫 1201)

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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061592018

作品紹介・あらすじ

19世紀後半からフランス歴史学界の主流を占めた実証主義に対して、アンチ・テーゼとして登場したアナール派。その主張は、限定した学問体系を別個に打ちたてることではなく、逆に歴史を狭い専門領域の囲いから解放することであった。歴史における時間と空間の多層性を認識の前提にして、「フォークロア」や「死と生」「都市空間」など多様な領域をとりあげ、歴史学を人間諸科学の総体として捉えた好著。

感想・レビュー・書評

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  • マルク・ブロック、リュシアン・フェーブル、フェルナン・ブローデルらが雑誌『アナール』を拠点に推し進めた、アナール学派の歴史学の意義を解説している本。

    19世紀における実証主義的な歴史学の確立は、国民国家の形成と並行関係を持っている。そこでは、政治史こそが歴史学の中心とされ、それに対するアンチ・テーゼとしての文化史によって補完されるという枠組みが支配的だった。また、ヨーロッパの歴史をモデルにした時間・空間認識を前提に、文明の拡大という文脈の中で歴史が語られてきた。

    こうした19世紀歴史学の枠組みを打ち破ったのがアナール学派の果たした役割だった。彼らが提唱した社会史の視点は、歴史的な事件を長期的時間枠組みの中で見なおし、それが持つ多層的な意味を明らかにしようとした。同時に地域史の視点は、国民国家の形成をモデルとする従来の政治史の枠組みから歴史学を解放した。

    本書では、こうしたアナール学派の歴史学が扱った「フォークロア」や「生と死」、「都市空間」などのテーマを紹介し、20世紀の歴史学が人文・社会科学のあらゆるテーマを扱う総合的な学問として捉えなおされたことが分かりやすく解説されている。

  • 分類=歴史学(福井憲彦)・アナール派。95年10月。

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著者プロフィール

学習院大学文学部教授
フランス近現代史
〈主な著書〉
『フランス史』世界各国史12(山川出版社、2001年、編著)『ヨーロッパ近代の社会史――工業化と国民形成』(岩波書店、2005年)『歴史学入門』(岩波テキストブックスα、2006年)『近代ヨーロッパの覇権』「興亡の世界史」第13巻(講談社、2008年)など多数。

「2016年 『ドイツ・フランス共通歴史教科書【近現代史】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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