つくられた桂離宮神話 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 162
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061592643

作品紹介・あらすじ

「桂離宮の発見者」とされるドイツの建築家ブルーノ・タウトは一九三三年に来日、翌年『ニッポン』を刊行し、簡素な日本美の象徴として桂離宮を絶讃した。著者は、タウトに始まる桂離宮の神格化が、戦時体制の進行にともなうナショナリズムの高揚と、建築界のモダニズム運動の勃興を背景に、周到に仕組まれた虚構であったことを豊富な資料によって実証する。社会史の手法で通説を覆した画期的日本文化論。

感想・レビュー・書評

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  • まさに、いかがわしく、いかもの。

    ブルーノタウト は、この本を読んで、多分 最初に言う言葉は「いかもの」というだろう。
    重箱の隅をつついて、自分のいいとこ取りをするだけなのである。
    タウトの発言の吟味も十分にされていない。
    井上章一は、「私は審美家である。美的な感受性のゆたかな人間である」と思っていたが、
    私には、桂離宮の良さがわからない。」「桂離宮を見ても美的感動はなく」「退屈」と告白する。
    この桂離宮に対しての編集する力は、実に優れている。
    破調の批評である。ある意味では、建築史の「へうげもの」かもしれない。
    桂離宮は、「日本美の典型」「建築芸術、庭園芸術の精華」「空間造形の粋」と言われているが、
    井上章一は、それは、わかんないというのである。
    井上章一は、不思議なことに、
    桂離宮についての歴史的な背景やその細部に対しての分析はほとんどない。
    桂離宮の現場に一切立とうとしない。とにかく、井上章一は高みの見物なのだ。
    自分を、危険に晒さないところに、彼の強さがあるのかもしれない。
    井上章一はいう「美を語らなかった本書こそが、美を逆説的に暗示する」
    実に、レトリックの使い方のうまいことよ。
    井上章一は、本についてのマーケティング能力があると感心する。
    自虐で始まって、みんなで渡ろう赤信号と言って、自分だけわたらないのである。

    そして、ブルーノタウト の書いた言葉に、「標的」を決めるのである。
    タウトはいう「私は桂離宮の発見者だと自負して良さそうだ」ということに対して、
    日本の建築史の大枠を設定した伊東忠太は、桂離宮に対して、少し冷淡だった。
    伊東忠太は「桂離宮などを、パルテノンと同等に比較するような人物」と言って
    バッサリ、タウトを切らせるのである。
    その弟子 岸田日出刀は、それとは違って、
    「伊勢、桂離宮の建物が古近を超越した絶世の傑作」と言っていた。
    タウトより先に、岸田日出刀は、桂離宮のことを良いと言っていたというのだ。
    そのから、日本人がいうより、外国人が言った方が日本人はよく聞くという
    論調で、結局 タウトなんて、大したことないのだという。
    しかし、タウトは 「日本美の再発見」と言っているように、
    日本美の発見とはいっていないのだ。日本美を見つけた先人がいて
    タウトは「再発見した」というスタンスをしている。
    つまり、桂離宮が良いと思えば、それでいい話だのだが、
    結局 自分の審美感のないのが、タウトのせいにして、
    タウトを持ち上げたモダン建築派の日本の建築家が問題のようにいう。
    「桂離宮は、美術の世界において神格化された」と駄々をこねるのである。

    こうやって、駄々をこねたとしても、
    結局 井上章一の審美感がないことが、解決するわけでもない。
    そして、追従する姿勢についても、明らかにしない。
    全く、最初の陣美観がないことが、
    大山鳴動 ネズミは自分だったというわけである。

    タウトは、伊勢神宮も褒めているのだが、このことについては、井上章一は
    全く触れようともしない。
    タウトが言っている桂離宮のことについて、
    桂離宮には、建築家の自由さがあり、日東東照宮には、建築家は権力に隷属している
    と言って、建築家のあり方について、述べていくことについても、
    一切 無視しているのである。

    しかし、注目に値する仕事は、とにかく 「桂離宮」に関する本やパンフレットの類を
    全部分析して、今だったら、AIが全部やってくれそうだが、
    明らかにされるのは、
    タウトの評価している桂離宮と
    そのころの復興したモダニズムの人々の評価する桂離宮と
    モダニズムが没落しつつある時の評価する桂離宮と
    脱モダニズムの評価する桂離宮と
    なぜか、桂離宮は同じなのに、時代によって評価が変わるなぁ
    ということが、明らかにされていることだ。
    そういう意味では、桂離宮を冒涜しているわけでもなく、
    偶像破壊しているわけでもなく、神話をでっち上げて解体しているわけでもない。

    結局 最後まで 桂離宮の正体に肉薄することなく
    玉ねぎの皮をむくがごとき論調で、全く美を語ることができないままに
    タウトの言ったことなんか、忘れちゃった という川端康成の小説で、
    跡を濁して、飛び立って行くのである。

  • ブルーノ・タウトや桂離宮、建築に興味があるかどうかは問題ではない。「常識を疑うこと」この一点めがけて明快で緻密な論理で外堀を埋めながら本質に迫るさまは、まさに知の冒険と呼ぶにふさわしい興奮。

  • ドイツ人建築家ブルーノ・タウトによって「発見」されて以来、「日本美」の象徴となった桂離宮。本書ではその「神話」を作り上げた歴史的、社会的仕組みを、膨大な資料を駆使して解体して見せます。「固定観念」に懐疑の念を抱くことの大切さを教えてくれる一冊です。
    (選定年度:2019~)

  • つくられた桂離宮神話

  • 移動の合間に読了
    桂離宮行ったことないけど

    桂離宮に限らず、神話っていうものが、どうやって作られていくのか

    アジェにしろゴッホにしろ変な神話は一回、疑ったほうが良い

    この本、後半こじれてくる

    前半分だけで良い

  • ほとんど評価されていなかった桂離宮の建築が、ドイツ人建築家ブルーノ・タウトや当時の日本の建築家によって神格化されていく過程を数少ない資料から再構成する試み。筆者自身が、最初に見た時にたいして関心しなかったという、非常に個人的な小さい違和感から出発する点がすばらしいと思った。

  • 読もう読もうと思って放置してきた本。

    国威向上から必要とされたビルや工場建設の普及に際して、桂離宮と外国人を利用してモダニズムを普及させるため、”桂離宮がすごい”という”神話”を成立させ、その普及過程を追っている。

    マーケティング、プロパガンダの成立とその後の影響についてと考えると非常に面白い。この種の”思い込み”や”常識”はある種の宗教であると思っているので、洗脳のプロセスとも言い換えられると思う。

    あくまでも桂離宮に関する内容であるため、神話成立に関与した建築家の戦後の公職追放などには言及されておらず気になるが、検索してみるほどの好奇心はない。

  • 確かに意地の悪い本だった。けれども人が時代という枠組みにいかに制約されているかということがよく分かるし、モダニズムがいかにすごい勢いだったのかも見えてくる。
    桂離宮の時代解釈はどんどん変化していくが桂が古典になったという事も面白かった。

    あとがきで建築史学会に無視されたとあるが、建築史学会が無視したことが本の価値を高めたと思う。

  • まだ読んでいる最中なのだけど、いや、面白い。基本的に日本の建築史がベースなのだけど、その知識なく読める。ブルーノ・タウトが桂離宮の「美」、価値を「発見した」という「神話」を検証するもので、実はそこにはモダニズムを認知させようとするグループの存在やら日本人の国民性、そして時代の流れが存在していた、という。
    これを読みながら思い出したのが「日本の古都はなぜ空襲を免れたか 」(朝日文庫:吉田 守男著)。京都など文化財の残る古都が米軍の空襲を免れたのは、欧米がその価値を認めていたからだ、という「定説」がまったくの誤りであったことを検証するもの。

    メインテーマから外れるかもしれないけど、人は自分が見たいものを見て、聞きたいものを聞き、信じたい情報のみを受け入れるそういうものであることがこの桂離宮受容の歴史にもあるように思います。

    また、桂離宮の価値が一般庶民が受容していく家庭を分析する手法も面白く読みどころの一つ。これはハワイを含め各種観光資源の分析にも利用可能な手段だと思う。
    ---
    本日読了。著者あとがき読むと僕は誤読していたかもしれない・・。だけど面白かったからいいか。って、そういう問題じゃないかあ。結局、桂離宮の評価どうこうで本書の価値を判断すべきじゃないのだよね。

  • 桂離宮のイメージは作られたものであった。そのイメージの裏側にあるものを読み解いていく本。
    人々の認識は往々にしてイメージ、先入観による物である。思考する時、私たちはそれを疑い、その背景にあるものを捉えなければならないと気づく。

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター教授

「2017年 『学問をしばるもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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