進歩の思想・成熟の思想―21世紀を生きるために (講談社学術文庫)

著者 : 加藤尚武
  • 講談社 (1997年12月発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061593107

作品紹介

急速な科学技術の発展によって進歩と成長を続けてきた現代の社会。環境破壊や遺伝子操作、脳死問題など、今、われわれは既成の理論や哲学では解決できない多くの課題に直面している。科学と人間、さらには文化と政治とのかかわりを、環境倫理学や歴史哲学を視点に捉えなおし、成熟の社会を目ざすべき二十一世紀に求められる哲学・思想のあり方を探る卓抜の論考。注目の丸山真男論もあわせ収める。

進歩の思想・成熟の思想―21世紀を生きるために (講談社学術文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 学生時代、政治学における知的巨人、丸山眞男氏の著作をいくつか読んだが、どうも違和感を覚えて仕方がなかった。そんな時、ちょうど雑誌『諸君!』1986年12月号に掲載されたのが、本書所収の「堕ちた偶像・丸山眞男」だった。この論文はまさに「事件」だった。
    「厳密に言えば、『日本政治思想史研究』で丸山の用いる西洋哲学用語は全部間違いである。たしかに旧制高校の秀才の常識という程度の、通り一遍の意味では間違いとはいえない。しかし言葉の歴史的な背景に一歩踏み込めば、どれ一つとして適切ではない。丸山には言葉の深層にまで達する水準での西欧思想体験がないのである」
    進歩的知識人としての丸山の政治的スタンスに対する批判は多いが、彼の学問的業績に対するここまで徹底的な批判は初めてだったのではないか。もちろん、私も一市民として丸山の学識には敬意を表する。今後も彼の著作は読まれ続けることだろう。但し、その時にはぜひ本書の併読をお奨めしたい。

  • 無限の進歩という理念が成り立たなくなった現代の倫理的課題について論じた本です。

    全体は3部に分かれており、第1部では応用倫理学や環境倫理学からなされた問題提起の意味について論じられています。第2部では、デカルトによって西洋の合理主義が確立され、ヘーゲルによって進歩の理念が高く掲げられたという見取り図が批判され、さらに中国や日本の近代化など現代社会が直面している問題についての考察がおこなわれています。

    第3部は、丸山眞男批判に当てられています。著者は、図式的なヘーゲルの哲学史に基づく丸山の西洋思想の理解は、「哲学史の標準的な教科書の水準を超えでるものではない」と断じています。その上で、丸山の近代主義の立場が、ヘーゲルの発展史観にのっとって組み立てられていることを指摘し、その批判をおこなっています。

    近代主義、相対主義、そして「近代の超克」や「東洋への回帰」といったオプションとは異なる道を、哲学的・倫理学的な根底から説き起こしつつ、現代社会のアクチュアルな問題にも目くばりもなされている本書の議論によって、哲学の意義についての認識を新たにさせられました。

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