- Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061593343
作品紹介・あらすじ
天竺にこそ仏法がある!七世紀、唐の都・長安からひとり中央アジアの砂漠を征き、天に至る山巓越えて聖地インドを目ざした三蔵法師。数々の苦難を乗りこえ、各地の大徳を訪ねて仏教の奥義を極め多くの仏典を携えて帰国した。小説『西遊記』はこの旅行から取材したもの。帰国後は勅許を得て経典翻訳の大事業を成しとげた。本書は、求法の生涯を貫いた名僧玄奘三蔵の最も信頼すべき伝記である。
感想・レビュー・書評
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西遊記で有名な玄奘三蔵法師は、7世紀の中国、時代で言えば隋末から唐代の実在の人物です。仏教の教義の核心に迫りたい、との強い思いから、国禁を犯して西域に一人で赴くこととなった玄奘の足取りを記したのが、本書の原典である「大唐大慈恩寺三蔵法師伝」ですが、悪路、妨害、族の襲来から通過する国々の国王による引き止めまだ、艱難辛苦を強い信念で乗り越えていく玄奘の精神の強さに感銘を受けました。
玄奘の伝記を読もうと思ったきっかけは、先日訪れた奈良の薬師寺の玄奘三蔵院伽藍に掲げられた”不東”の文字でした。これが、玄奘が道中渇死の危機に見舞われるも、「もし天竺に至らざれば、終に一歩も東帰せず」と決意しインドを目指して歩み続けたことに由来することを知り、実在の玄奘の人となりに関する本を求めたからでした。中国からタクラマカン砂漠を越え、サマルカンドから現在のアフガニスタン、パキスタンを超えてインドに至る道を踏破したその原動力であった玄奘の探求心の強烈さがいかほどのものであったか。不東の2文字に体現されているように思えます。
18年の西域の旅を終えて唐に戻った玄奘は、皇帝の庇護を得て持ち帰った大量の仏典の翻訳を高僧たちを組織して行い、残りの半生をそれに全て費やすこととなります。この間の玄奘の胸に去来したのは命を賭した天竺往還の成功に対する達成感などではなく、持ち帰った経典を正確に翻訳することに対する強い思いであったようです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
普通に読んでて面白いので、ぜひ購入して手もとに置いておきたい。
この本は玄奘の旅の往路だけなので、続きもぜひ完訳して出版していただきたいのだけど、無理なのだろうか? -
新書文庫
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玄奘の弟子である彗立と彦ソウが書いた玄奘の伝記『大慈恩寺三蔵法師伝』のインドへの旅の部分の現代語訳。
解説によると、『大唐西域記』は地理書であるので、玄奘の旅の実際の様子は『大慈恩寺三蔵法師伝』のほうが詳しいとのこと。
文章は平易で読みやすく、注釈もついている。
伝記なので玄奘と仏教のの素晴らしさを称えるものになっているのは仕方がないか。
当時の雰囲気を知るにはこういった古典も読まないと駄目だなと最近つくづく痛感する。古典があまり得意ではないので敬遠していたんだけど(えー)
一次史料があっての歴史なんだよな、やはり。
『大唐西域記』も読みたいと覚え書き。
当時の西域の様子や風俗について知ろうと思うのならやはり『大唐西域記』のほうがいいのかな。 -
この本はあの偉大な玄奘三蔵の伝記「大慈恩寺三蔵法師伝」の前半(入竺紀行の部分)の現代語訳だそうで、法師が西域・天竺をどのように旅したか、克明に書かれている。また帰り道と帰ってきてからのことは解題に簡潔に記されている。
玄奘というと「西遊記」に出てくる三蔵法師として知ってはいるが、具体的にどんな事をしたのかはあまりよく知らない。そこでこの本により、玄奘が仏教の真髄を求めて、仏教発祥の地であるインドへ旅し、大変な苦労をしながらも中国へ帰り着き、中国の仏教の発展に貢献したということを知った。
本文は仏教用語の多さと、法師が辿った国々の国名の羅列が多く、大変読みにくかった。しかし途中、山賊に襲われたり、訪問国の国王に大歓迎されるなどのエピソードが、法師の人柄を彷彿とさせ、とても面白く読めた。
なお、訳注、解題、索引、そして史跡の写真までもが充実しており、精読の大きな手助けとなった。それに比して地図の貧弱さは否めず、法師の行程を辿るのには大変不満が残った。
余談ではあるが、1984年、中国共産党胡耀邦総書記の招きで、日本の青年3000人が中国を訪問した際、私もその中の一員として、北京、西安、上海を訪ねることができた。あの忘れもしない天安門事件の5年前、現在のような経済発展期に入る前である。西安では慈恩寺の大雁塔を訪れることができ、一番下にある唐代の名筆家で知られる褚遂良の筆になる「雁塔聖教序」を金網越しに見ることができた。これが玄奘が天竺から持ち帰ったものを書き残したものだと思うと感動で鳥肌が立ったのを覚えている。 -
本物の三蔵には当然のことながら悟空たちはいないわけで。独力で天竺まで経文をとりにいった、すごい人!「西遊記」だと玄奘三蔵ってどこか情けない感じなんですが、この本を読んで、本物の玄奘三蔵に惚れました!ある意味「最遊記」の三蔵よりも遥かに破天荒な人ではなかろうかと(笑)