東と西の語る日本の歴史 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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本棚登録 : 280
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061593435

作品紹介・あらすじ

日本人は同じ言語・人種からなるという単一民族説にとらわれすぎていないか。本書は、日本列島の東と西に生きた人々の生活や文化に見られる差異が歴史にどんな作用を及ぼしてきたかを考察し、考古学をはじめ社会・民俗・文化人類等の諸学に拠りながら、通説化した日本史像を根本から見直した野心的な論考である。魅力的に中世像を提示して日本の歴史学界に新風を吹き込んだ網野史学の代表作の一つ。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の東西文化の違いについて記した、壮大な網野史観の本。縄文時代から江戸時代まで、それぞれの時代における東西の政治文化の特徴や傾向を史料や考古学の観点から丁寧に示していくことで、やはり東西には明確な違いがあるとしてもよいと謙虚に主張している。私のようなド素人が読んでも、1つ1つのトピックの妥当性が判断できず、「ふーん、そうなのかも」という感想しか持てなくて情けない限りなのだが、それでも知的好奇心を十分にくすぐってくれる良書だと思う。
    ちなみに、本書によると西日本と東北は親和性があり、東日本と九州も親和性があるらしい。そして、この傾向は少なくとも平安時代には見受けられる。この場合の西日本と東日本の境界は、ざっくりと福井県ー岐阜県ー愛知県を結ぶラインだと思って差し支えない。
    私がこれまで名古屋・福岡・川崎で合計40年生きてきた感覚として、関西地方や中国地方はどこか「本質的に違う」と感じるところがある一方、福岡にはそれなりに馴染むことができたという経験からも、本書の主張にはかなりの部分で共感できた。

  • <目次>
    学術文庫版まえがき
    一 はじめに
     くらしのなかの東と西
     単一民族説への疑問
     ゆがめられた日本史像
     地域への視点
    二 「ことば」と民俗ー東と西の社会の相違ー
     二大方言の対立
     人口の移動
     習俗の相違
     イエとムラ
    三 考古学からみた東と西
     石器の語る東と西
     縄文の地域差
     弥生の東進と縄文の抵抗
     古墳の拡大
    四 古代の東国と西国
     大和と西日本
     大和と東国ー統合と自立ー
     「通説」への疑問
     古代東国の役割
     西の海と船、東の弓と馬
     東国と東北の「蝦夷」
    五 「僦馬の党」と「海賊」
     「海賊的武者」と西日本
     「弓射騎兵型武者」と東日本
     東国の製鉄
    六 東の将門、西の純友
     「東国の乱」
     西国の海賊
     「本天皇」と新皇将門・海賊純友
     東国人の二つの道ー自立への志向ー
    七 源氏と平氏ー東北・東国戦争と西海の制覇
     「鼓を打ち、金を叩いて」
     「亡弊の国」-東国の叛乱ー
     東北の国家ー東北人の二つの道ー
     東北・東国戦争ー東の源氏と東北の藤原氏ー
     「海賊的武者」の主ー西の平氏ー
    八 東国国家と西国国家
     平氏と西国国家への道
     西国国家の基盤ー海の道ー
     海民の世界
     西国国家の海洋的性格
     源氏と東国自立路線
     西国国家機構創出の試み
     義仲と「北国政権」
     東国国家の「日本国」支配
    九 荘園・公領の東と西
     「おやもうたれよ子もうたれよ」
     荘園・公領の単位と規模
     年貢ー東の絹布、西の米ー
     東の畠作、西の水田
    十 イエ的社会とムラ的社会
     東の豪族的武士と西の中小武士
     人間・社会の関係ータテの論理とヨコの論理ー
     西の「職能国家」と東の「主従制的国家」
    十一 系図にみる東西
     女系系図の世界
     男系系図の世界
     東西、婚姻のかたちー結合と拒否ー
    十二 東は東、西は西
     東国自立への模索
     東国の勝利と御成敗式目
     二つの国家、二つの都
     モンゴル襲来と東西関係
    十三 東と西を結ぶもの
     東と西の交流
     海の道
     陸の道と山の道
     東国武士の西国移住
     諸地域の対立と連合ー東国・九州と西国・東北ー
     東アジアのなかで
    十四 東国と九州、西国と東北
     飛礫と騎馬武者
     東国・尊氏・九州ー西国・後醍醐・東北
     直義と尊氏・師直の対立
     諸地域の出現ー中国と四国ー
     山の民、海の民
     日本海沿海地域と「倭寇」
     東西の結びつきと対立
    十五 東の文化と西の文化
     東国国家と日光
     元号と叙位任官
     祭祀・年中行事の体系
     花押の東西
     「関東八州国家」と後北条氏
     印判と書状の様式
     東西の里制
     東西、都市の形成ー渡・津・泊・市・宿ー
     「職人」と地域の意識ー東の馬・西の船ー
     天皇と頼朝ー「由緒」と特権ー
     九州の「職人」と頼朝
     西国と朝鮮半島
     東国・西国戦争ー関ヶ原から「鎖国」へー
     江戸時代の東と西
     日本史学の二潮流
     現代の東と西ー新たな日本人像を求めてー

    あとがき(原本)
    解説 山折哲雄
    索引

    *****

  • 中世期前後の東西の日本史上の比較。
    上辺だけを多く扱い、あまりにも範囲が広く、
    有る程度、網野善彦の書物を読み込んでいないと理解しにくい。

  • 2014/08/24 読了

  • 再読:平成26年1月29日
    気になった箇所が。

    P269  ・・・若狭の小浜には、応永十五年(1408)、「亜烈進卿」という名のパレンバンの「帝王」の遣わした「南蛮船」が着岸、「生象一疋黒、山馬一隻、孔雀二対、鸚鵡二対、其他色々」を日本国王に進上している。・・・

    という記述が・・パレンバンから若狭まで来てたなんてすごいですね^^


    http://bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=1593439
    東と西の語る日本の歴史
    著者: 網野善彦

    発行年月日:1998/09/10
    サイズ:A6判
    ページ数:340
    シリーズ通巻番号:1343
    ISBN:4-06-159343-9
    定価(税込):1,155円

  • 古本で購入。

    フォッサマグナを境とした東と西をそれぞれ独自のものとして捉え、如何なる相違が存在し、互いにどう関係してきたかを述べていく。
    環境考古学の成果によると、東西の文化の相違は既に2万年前にはその根を持っていたとか。
    細石刃文化から見ると、東には北方の亜寒帯的要素が、西には南方の温帯的要素が強く結びついていたという。
    こうした地域差は縄文時代に入ってからも歴然と受け継がれていく。

    東と西の相違は多岐にわたる。
    東の「畠作」と西の「水田」。
    東の「馬」と西の「船」。
    東の「馬を操る盗賊」と西の「海賊的武者」。
    東の「主従制・惣領制国家体制」と西の「座的結合・職能国家的性格」などなど。

    東国の独自性を主張し、在地領主のイエ的・家父長的な支配を強調してそれに基づく主従制原理に貫かれた武家政権を軸に中世国家を捉えようとする研究者たちの多くが東出身。
    対して、座的な構成を持つムラ、村落の平民百姓を支配下に置く荘園・公領の支配者、公家、寺社、武家などによって相互補完的に形成される権力として中世国家を理解しようとし、「日本国」意識を強調する研究者の多くが西出身。
    このように、中世史研究者の中においでも東と西の相違は鮮やかなのだという。
    ちょっとトンデモ説のようではあるが、話としてはおもしろい。

    また東国と九州、西国と東北の結びつき、というのもおもしろい。
    南北朝期の日本列島を巻き込んだダイナミックな動きが、これを前提にしていたというのは初めて知った。

    多くの研究を引きつつ(書かれたのが30年近く前なのでだいぶ古いが)展開される東西の相違・独自性は、実におもしろい。
    ただ、「なぜこれほど東西で異なるのか」というところまで言及されていないのが惜しい。

  • 日本史を東と西の違いで分けてみるとこうも違うのか、という驚きと、いかに日本には多様な民族・部族が存在・関係しあっていたかを教えてくれる本だ。いわゆる教科書的な日本史が(シンプルなコンセンサスを記述する必要があるとは言え)いかに狭い範囲で記述されていたか思い知らされた。文庫だが、その中身の濃さには脱帽。

    日本列島の東西の違いは、旧石器時代にまで遡るという。例えば、狩猟採集が主軸であった縄文時代までは、ブナを中心とした冷温帯落葉広葉樹林の広がる東日本と、シイ・カシに代表される照葉樹林の西日本では、東日本の方が人口が多かったそうだ。また文化面から見ても、縄文土器は東の方が圧倒的に多様で複雑な文様だったという。ところが、いわゆる弥生時代になって、水稲文化が九州を経て西日本に入ると、西日本には数十年で一気に広まったが、おそらく稲の北限の問題で東日本には一向に稲の文化が馴染まなかった。ここで、東西の優勢が逆転するのだ。この時点で、北海道、東日本(東北、東国)と西日本(畿内、北九州)そして琉球列島という、地域に分かれてくると考えられるのだと言う。そして本書では、扱いきれないということで、北海道と沖縄は除外されているのだが、それにしても、東日本と西日本でこれほどまでに差が見えてくるとは驚きである。

    この後、著者の専門とする中世に至るまで、懇切丁寧な引用とともに、東と西の勢力図や民俗の違いが説明される。例えば・・・

    文化的に分裂した東日本と西日本も古墳時代になると、一斉に古墳が広まり、少なくとも古墳については東西の差が薄まる、という事態が起き、この時代が「日本人単一民族説」の原点になりやすいこと。西日本に大和王朝が成立する時期には、東国の蝦夷、九州南部の異民族・隼人(はやと)などがいたことが分かっていること。製鉄技術はタタラで有名な西国とは独立して東国にも起きていた可能性があること。豊かな馬の産地であることを背景に、弓馬で闘う東軍と、活発に用いられた海路(朝鮮・山陰・九州・瀬戸内など)とクス(紀伊半島・船の材料)などの木材のおかげで水軍が発達した西日軍、これが源平の違いに発展していく・・・。

    民俗的に見ても、興味深い。年貢を米と定めているのが西日本で、繊維・家畜・瓦・油、その他地元の名産品など多様性があるのは東日本。これは、稲作文化と畑作文化を反映しているという。また、職人のあり方についても、職人が一座を形成するムラ文化が西日本で、棟梁の名の下に一対一の主従関係を結ぶイエ制度が東日本。これは、昔、日本史で習った、東国武士のあり方と全く同じではないか、と驚いた。

    また、どの時代を見ても、常に、さまざまな地域で朝鮮半島と密接な交流があり、その結果、文化面でもよく似ていたことがよく分かる。朝鮮半島と日本列島の関係史を丁寧に見直しても良いのではないかと思った。

  • ようやく読み終わった。100頁頃まではダラダラだったが、そこから一気に読み進められた。やはり一気に読んだ方が、内容が掴みやすい。歴史に中立などありえない。歴史を叙述するということは、ある世界観や認識の体系に自ら与することである。東日本のイエ系社会、父系社会と、西日本のムラ系社会、母系社会の対比。韓国、中国、北方との、日本各地の地理的に対応している部分との交流の歴史、それが江戸時代の鎖国という体制下で閉ざされたこと。日本の政治家たちは、恐らく史観を持ち、大局を見据えた政治判断をしてきたのだろうと想像する。統一日本という形を作るには、鎖国はやむを得なかったのではないか。しかし、それが現代日本に至るまで、排他的風土を遷延させてきた一因かもしれない。一方で、交流というと聞こえが良いが、侵略を受ける可能性もあったのであろう。そして、現代でも、国際秩序という規範の下では、軍事増強、核問題、資源確保など、国の線引きを前提に派生する問題は山積している。地球的視野という考え方は、一人一人の地域住民が持ち得るのだろうか。

    そんなことに想像を巡らせた、読了後の感想。

  • 西と東で違うのはうどんやそばのスープの濃さだけじゃないのよ。

  • 網野善彦先生の本です。
    歴史や考古学、民俗学、社会学など、著者の意識の幅広さがよくわかります。
    文庫版前書きでも書かれていたとおり、琉球やアイヌは話題にしていませんが、それでもあまりある内容。
    日本の東西の文化の違いは、縄文時代から分かれていたとか凄すぎる。

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