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Amazon.co.jp ・本 (356ページ) / ISBN・EAN: 9784061594388
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著者G.H.フォン・ヴリグトはスウェーデン出身で主にフィンランドで活躍し、ケンブリッジでウィトゲンシュタインの後任教授をつとめた哲学者。原著(スウェーデン語)からの翻訳で監修者は主にフィンランド語訳を参照したとか。
内容は20世紀初頭から1960年代にかけての論理学史および哲学の概説だが、時代の空気を感じられるドキュメント。面識のあったウィトゲンシュタインの記述には彼への尊敬が惜しみなく表れていたり、様相論理への懐疑的態度、マルクス主義や実存主義への言及等、当時の哲学業界の雰囲気が伝わってくる。ヴリグト自身が採用している「分析哲学」という用語も定着したものではなかったようで、言語哲学や意味論哲学という語が用いられていたという指摘は興味深い。
本書の特徴を挙げるなら、分析哲学の源流を論理学の展開と共に眺望する観点だろうか。日本語の著作ではありそうでなかなかない。もっとも、論理学と哲学のどちらにも通暁している人には、「20世紀前半の歴史のまとまった説明」という印象があっても、突出した何かがあるという気はしないかもしれない。かつ、どちらかというと内容があれこれ詰め込まれているため、初学者にはかなり読みにくいと思う。(個人的には、特に論理学の知識に乏しいため、知らないことも多々あり、適宜メモをとって勉強させてもらったが。)
第1部が簡単な論理学および数学史となったおり、アリストテレスによる公理系の発想と、ライプニッツの計算法を対比させた後、ブールの論理代数、フレーゲとラッセル(論理で数学を基礎づける)、ヒルベルト(数学の無矛盾性を証明したい!論理学は公理化したい!)およびゲーデルが少々、ブラウアー(数学的知識の基礎は「直観」だ)とウィトゲンシュタインによる批判を経て、非古典論理までカバーしている。
興味深いのが非古典論理の記述で、「古典論理の特徴は、(1)矛盾律と(2)排中律をみとめること。どちらかを否定するのが非古典論理」(cf.p.154)という態度。もちろん時代が時代であり、まだ矛盾許容論理など登場してないので、(1)の事例として挙げられているのはヘーゲル論理学であるが、敬意ある記述になっている。(2)に相当するのはウカシェヴィッチの多値論理とC.I.ルイスによる厳密含意のアイディア。様相論理の源泉として位置づけられている。
第2部は哲学編。主に言語哲学がテーマである。ラッセルの記述の理論に始まり、『論考』のウィトゲンシュタイン、論理実証主義(ここが一番面白かった)に加え、意味論重視の傾向を示す特徴としてフレーゲの意味と意義の区別やタルスキの真理論、クワインのイデオロギーとオントロジーがさらりと触れられ、変わり種としてムーアの紹介。後期ウィトゲンシュタインが今後の哲学的問題のあらゆる端緒となるだろうという雰囲気でしめくくられている。(なぜかオックスフォードの日常言語学派は割愛。)
専門家以外には「勉強向け」の一冊だが敢えてこの本をおすすめする強い理由も感じられない。とはいえ、300頁でこれだけボリュームのある内容が読める点、特に論理学と哲学の密接な関係を意識した作品としては貴重であろうし、また1964年発行という点で、史料としての価値はあると思う。
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