コーヒー・ハウス (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061594517

作品紹介・あらすじ

十七世紀半ばから一世紀余にわたり繁栄を見せた欧州カフェ文化の先駆、コーヒー・ハウス。そこは政治議論や経済活動の拠点であると同時に、文学者たちが集い、ジャーナリズムを育んだ場として英国に多大な影響を与えた、社会の情報基地でもあった。近代都市・ロンドンを舞台にした、胡乱で活力にみちた人間模様と、市民の日常生活を活写する。

感想・レビュー・書評

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  • コーヒー・ハウス(Coffeehouse)とは、17世紀半ばから18世紀にかけて、イギリスで流行した喫茶店で、社交場の機能も兼ね、大きな社会的役割を果した。
    17世紀後半〜18世紀にかけての英国は「コーヒーハウス文化」の時代だった。

    コーヒーハウスは政治的議論を交わす場でもあり、金さえ払えば誰でも入れる「人種の坩堝」でもあった。ビジネスに関わる情報が集まる場所でもあったので必然的に商談の場にもなった。そこからロイズのような保険業を生み出し発達させていった。

    この時期、読書人口も増えたが本の値段はまだまだ高く大衆の手が届く存在ではなかった。コーヒーハウスは図書館的な役割も果たして、この場で本を読み議論を交わしていた。

    チャップブックという20Pほどの小冊子が出て、本を読む人の多くはこれを読んでいた。内容は滑稽な話や宗教的な話やベストセラーの改変など。「ロビンソンクルソー」はこの時代のベストセラーだが、多くの人はチャップブックの改変を読んでいた(今で言うとラノベ&新書みたいな感じ?)。因みにこれを売る人をチャップマンという。

    コーヒーハウスは「人種の坩堝」なので多くの情報が集まった。これを編集し発行する新聞も発達したが、多くの人はコーヒーハウスで新聞を読んでいた。持ちつ持たれつの関係が成り立っていたわけである。


    コーヒーハウスが変質し衰退して言った理由は5つあげられる。
    1)数が多くなりすぎた。全政治にはロンドンだけで3000店もあった!
    2)モラルの低下・・・当初は珈琲を出しアルコールはさないというパブとの差別化が図られていたが、店舗が増えるにつれ酒を出す店も増えてきた。「人種の坩堝」が仇となりギャンブルなどが増えモラルが低下していった。
    3)「人種の坩堝」的側面が失われていった。常連客がつくことによって「一見さんお断り」的雰囲気が醸し出されていった。
    4)社会的背景…チャールズ2世による閉鎖令(反対運動が起こり1週間で廃止)、女性からの反対運動などが起きたが、コーヒーハウスの経営者はこれは上手く切り抜けていった。政府の植民地政策が変り、珈琲の価格が高騰していったことが経営不振を招いた。
    5)家の変化・・・一般の人々が住む家が良質化し、客を自宅に招くのが一般化した。

  • 18世紀ロンドン、上流階級の興味、新聞・雑誌、文学

  • 資料番号:010237675
    請求記号:233.3/コ

  • イギリス社会の発展においてコーヒー・ハウスが果たした役割について概略的に紹介している本。もう少し掘り下げて紹介してほしいかな、と感じる部分も何か所かあったけど、総じて読みやすく、18世紀以降の流れを知るには有益だと思います。

    コーヒー・ハウスが保険業や郵便業の拠点となったというのは他の本でも読んだことがあったけど、ジャーナリズムの一つとして雑誌もコーヒー・ハウスを軸に発展したというのが個人的には新しいポイントでした。考えてみたら、報道機関としての新聞がここを拠点とした以上、同じ紙媒体である雑誌も影響を受けていない訳がないんだけど、それが自分の中では繋がっていなかったので、この本できちんと整理できた感じです。

    さらに、所期の作家たちの作品発表の場としても機能していたということを知り、イギリスの社交と文字文化が発展するにあたって不可欠な場所であったことが分かりました。後半、若干息切れしている感も否めませんが、読んで損はない。

  • イギリスと言えば紅茶のイメージしかなかったのだが、
    コーヒーが流行っていた時期もあったのだなぁ。
    その裏には文化、政治、はては植民地までもつながっているのが興味深い。

  • ○17世紀半ばから18世紀半ばのイギリスで流行したコーヒー・ハウス(喫茶店の前身)。人やモノ、そして情報の集まる拠点として機能し、それが衰退(変質)してゆくまでにどのような経緯があったのか。コーヒー・ハウスの社会的な役割を捉える面白い一冊です。

    ○コーヒー・ハウスはコーヒーの流入と合わせて17世紀半ばのイギリスに登場しますが、こんにちの喫茶店と異なるのは、人や情報の集まる社会の拠点だったということです。もちろん仕事や娯楽(会話)の場という今日的な空間でもありましたが、そこは、才人が集まって議論を交わす政治、経済、文学の拠点であり、当時最新の情報が集まる場だったといいます(ちなみに、エドワード・ロイドがつくった商取引・情報やジャーナリズムの拠点としてのコーヒー・ハウスの延長線上に、保険会社のロイズが誕生する)。この本は、コーヒー・ハウスがイギリスに登場し、そのような拠点としての性格をもって政論や職業などによって分化するようになり、やがて19世紀に入ってその性格を失ってゆくという経緯、つまり「コーヒー・ハウスという場所」の性質が変化してゆく様子を、イギリスの歴史のなかから描き出しています。

    ○コーヒー・ハウスは政治や文学の議論の場としての色彩が色濃かったため、ときには政府が密偵を送り込んで、反乱分子の動向を確かめていたそうです。そうした議論の場としてのコーヒー・ハウスがやがて衰退し、トランプゲームなどの娯楽にふける人達だけが残ってしまうという話のは、コーヒー・ハウスの大衆化といえるのかもしれません。しかし、もともとコーヒー・ハウスは”人間のるつぼ”、暇をつぶす人や、商談に使う人、さらには恋人を募る人やうさんくさい藪医者が出入りしていた場所でもありました。そう考えると、コーヒー・ハウスという場所がどのように変質していったのかということが気になります。

    ○すこし読み進めづらい感じだという印象をうけたので、ぼくのおすすめの読み方は、内容全体が見事に要約された262ページで全体を押さえて、そこから全体を通読するという読み方です。

  • 17世紀イギリスにおける「喫茶店」をテーマに、政治・経済やジャーナリズム、文学への影響を考察する本です。著者は英文学の研究者です。

    本書を読んだきっかけは、佐藤優氏がある本で、J.ハーバーマスの『公共性の構造転換』(細谷貞雄・山田正行訳/未來社)を理解するために有用な本として、紹介していたことだったと記憶しています。

    『公共性の構造転換』を理解することが最終目的であれば、あえて細部にこだわらず、全体の雰囲気のようなものをサクサク読み取っていくほうが有効です。細部や引用に気を取られるとそちらに引き込まれてしまい、「雰囲気」がつかめなくなってしまいます。

    逆にいうと、本書には当時のロンドンの空気を生き生きと描くエピソードや引用がちりばめられており、どれも興味深いので、じっくり読むことでようやく本書の楽しさがわかる、ということも確かだと思います。

    例えばわたしのHNにこじつけると、世の船主様各位にはお馴染みのロイド船級協会。P.188~ではロイド様の黎明期のご様子が、ロイズ・コーヒー・ハウスをきっかけに詳しく取り上げられており、海運関係の方には特に興味深い内容かと思います。(ときに船主様、僭越ながらロイド様と言えばP.クルーグマン/山形浩生訳『クルーグマン教授の経済入門』(ちくま学芸文庫)のP.228~にも興味深いお話が載っておりました。こちらなどもご覧になってはいかがでしょうか)

    P.262~ではコーヒー・ハウスが果たした役割、P.268~はコーヒー・ハウスが18世紀中ごろから衰退していった原因、が整理されており、おもしろいけれど話にまとまりのない数多の「コーヒー文化」系エッセイとは一線を画しています。良書です。

  • 18世紀のロンドンで流行したコーヒーハウスは、ただコーヒーを飲むだけの場所ではない。様々な人が集い、議論するこの場所で、ジャーナリズムや文学が育った。保険や郵便のシステムも。

    難しくはないのに知的好奇心がくすぐられ、満たされた、心に残っている本です。大学時代の最初の一冊。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    文庫&新書百冊(佐藤優選)155
    国家・政治・社会

  • 筆者は1949年生まれ。専門はイギリス文学、文化。本著は1984年に刊行されたものが2000年に学術文庫として出版されたもの。

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著者プロフィール

英文学者、英国文化研究家、上智大学教授。東京都生まれ。上智大学大学院文学研究科中退、1975年同志社女子大学助手、1979年専任講師、1982年助教授、1985年ヨゼフ・ロゲンドルフ賞受賞、1988年教授、1995年上智大教授。1999年「憂鬱な詩人-アレグザンダー・ポープの政治諷刺」で上智大文学博士。『女王、エリザベスの治世』、『諷刺画で読む十八世紀イギリス ホガースとその時代』、ジョン・クリーランド『ファニー・ヒル 快楽の女の回想』(翻訳)など、著書、翻訳多数。

「2013年 『第6巻 エロティカ・アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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