<戦前>の思考 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061594777

作品紹介・あらすじ

「共産主義が終わった」「五五年体制が終わった」-。二〇世紀最後の十年は「終わり」が強調された時代だった。そして、それは戦前の風景に酷似している。あの戦前を反復しないためにこそ、自身を"戦前"において思索することの必要性を説く著者が、明晰な論理展開で繰り広げる思考実験。ネーション=ステートを超克する「希望の原理」とは何か。

感想・レビュー・書評

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/740266

  • 「日本近代文学の起源」よりも詳しく言文一致のことが書いてある。日本には、習合状態、あるいは双系的なものを一元化しないような装置がある。これは外部からの強制に対して抵抗するという素地がないとも言える。筆者が注目するのが漢字仮名交用という装置である。いくら外部から概念が入ってきても、てにをはで繋げるだけで、ガイネンガ内面化されない。したがって、言文一致運動は西洋の概念を漢文に換えたが、内面化はされなかった。
    ただし、例外が一つあって、それは戦後の日本国憲法だと言っている。

    扱うテーマは広いが、自由と平等の矛盾についても。自由と平等の矛盾が露呈するとき、それを友愛が想像的に揚棄する。ファシズムも共産主義も、創造的なもの・美学である。では、未来の進歩が期待できなくなる時代に、何がとられるか?共産主義はもはや支持を得られない。
    したがって、ファシズムが出てくる。

  • [ 内容 ]
    「共産主義が終わった」「五五年体制が終わった」―。
    二〇世紀最後の十年は「終わり」が強調された時代だった。
    そして、それは戦前の風景に酷似している。
    あの戦前を反復しないためにこそ、自身を“戦前”において思索することの必要性を説く著者が、明晰な論理展開で繰り広げる思考実験。
    ネーション=ステートを超克する「希望の原理」とは何か。

    [ 目次 ]
    帝国とネーション
    議会制の問題
    自由・平等・友愛
    近代の超克
    文字論
    双系制をめぐって
    自主的憲法について
    韓国と日本の文学
    湾岸戦時下の文学者

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    文庫&新書百冊(佐藤優選)136
    戦争・歴史・天皇

  • 世界は繰り返す。今も。そしてFutureも。

  • 現実的なインタレストを捨てざるを得ないのは死が不可避的なとき。「末期の眼」に映った風景は美しい。なぜならそこには生きる可能性がある限り生じるようなインタレストがないから。「美学」は現実的な矛盾を現実的に乗り越えることができないところにおいて支配的になる。あらゆる矛盾が止揚されてしまう西田幾多郎の「絶対矛盾的自己同一性」も「美学」的なものである。
    大東亜戦争は、理屈によって解釈されるのではなく、「運命」として参入することによってのみ「美」となる。

  • 現代を代表する思想家である柄谷行人氏による、「戦前」において思考する重要性を説く著。とても内容が濃い。自分の浅薄な知識でもって評するのは憚られますが、「ネーション=想像の共同体」という立場から、ナショナリズムの起源がそう遠くはない近代的なものであるということ、さらには戦前という文脈において文学が高いポテンシャルを持つという内容の言説が興味深いです。

  • 歴史の終焉。近代の終焉。~の終焉という文脈は現実的にはありえないことを証明した傑作。ものを考えるときには極端なケースから考えることで、考えるべき方向性とそのパースペクティブが得られるということがよくわかる。

  • 80年代からの共産圏の崩壊とブルジョア革命そして、日本帝国の思想を達観してみた思想実験
    ネーション=ステートの考え方は理解できる、

    嗚呼、真実だなと思ったのはブルジョア革命を起こすのは資本主義者なわけでとりわけ愛国主義者が起こす保守的な思想なんだなと思いました。

  • 読了後、今TVなどで活躍中の、はるな愛さんがシンクロしました。

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著者プロフィール

1941年兵庫県生まれ。東京大学経済学部卒業。同大学大学院英文学修士課程修了。法政大学教授、近畿大学教授、コロンビア大学客員教授を歴任。1991年から2002年まで季刊誌『批評空間』を編集。著書に『ニュー・アソシエーショニスト宣言』(作品社 2021)、『世界史の構造』(岩波現代文庫 2015)、『トランスクリティーク』(岩波現代文庫 2010)他多数。

「2022年 『談 no.123』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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