アマテラスの誕生 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061595453

作品紹介・あらすじ

古代、各地方にあまねく存在していた太陽神は、壬申の乱を契機に天皇家の祖神へと変貌した。古代天皇制の理論的・宗教的背景となる伊勢神宮・アマテラス・記紀神話。その成立過程を民俗学と日本神話研究の成果を用いてダイナミックに描き出す。律令国家の形成にむかう激動の七世紀末、大和と伊勢を舞台に展開した、血脈をめぐる壮大なドラマの全貌。

感想・レビュー・書評

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  • 本棚にあった本を再読。
    2002年第1刷発行とあるから、その頃読んだ本だと思う。1962年に原本刊行、意外に古い本。

    伊勢神宮の元がもっと山の中の離れた処にあったというのは覚えていたが、その他の細部は一体何を読んでたんだろうというぐらい覚えていなかった。

    プロローグはアマテラスは蛇だった、アマテラスは織姫だったと民俗学的なアプローチから始まる。
    伊勢神宮の本体は五十鈴川で、川を臨む手洗場が本来の拝所との論。太陽神の顔だけでなく、雷神であり、水神であり、風神でもある自然神が本来という。五十鈴川を再び渡った処にポツンとある風日祈宮や神宮内の沢山の社を思い出す。荒魂や和魂って何だろうと思っていたが、神の沢山の姿の投影と思えばいいんだナ。

    伊勢神宮の発端が伊勢の海部族と大海人皇子こと天武天皇との繋がりに求めているけど論証されたとは言い難いのでは。丹後の天の橋立の近くの籠神社が海部族の神社で元伊勢と云われていたので、個人的には、この仮説に心惹かれる。

    伊勢を本拠にする天語部や猿女の巫女の神話が天の岩戸神話に反映されている。そしてアマテラスとサルタヒコは本来同じ神という。こうした論旨も面白いが、王権に屈服していく伊勢の氏族の嘆きが日本武尊の悲劇に繋がっているというのはどうだろう。何でもかんでも伊勢に繋げてないか。稗田阿礼を若い女性の語部としているのは折口信夫の説にあったかな。まだ断定は難しいのでは。

    持統天皇が女帝として君臨し、自分の孫に皇統を継がせたことが本来男神だった日神アマテルを女神アマテラスに変え、天孫降臨の物語を産み出したというのは、最近でもよく言われる論考。それでも本書の言説は説得力がある。やや文学的解釈かも。

    天照(アマテル)以外にも天日別命とか天押日命など天皇家以外の祖となった天つ神はあった。成程。天日鷲命は房総では四国から渡ってきた忌部氏の富尊(トミノミコト)や子孫が祀っている。
    天日鷲命を祀る人々が房州から入植できる土地を捜しながら北上した場所が千葉から東京、北関東に点在する大鳥神社や鷲神社と素人考えをしている。更に云えば日本武尊についていたんじゃないかな。
    それは兎も角、冬至の頃の大鳥神社や鷲神社の酉の市は、太陽の復活祭というのは中沢新一さんの本にもあった話。成程、天日鷲命は太陽神なのだと納得。

  • 伊勢の地で信仰されていた太陽神が、天皇家の祖先神としての「アマテラス」へとつくりかえられていった経緯について論じています。

    著者は、アマテラスが天皇家の祖先神とされたのは天武天皇・持統天皇の時代であり、それ以前には「アマテルオオカミ」と呼ばれていた伊勢の大神は太陽や風、雷などの自然神であったと主張しています。そして、大来皇女が斎王となったという『日本書紀』の記事や、伊勢神宮の神職を務める渡会氏や荒木田氏と天皇家とのかかわり、さらに三種の神器の来歴についても、著者の立場から考察が展開されています。

    著者は折口信夫のもとで学んだ民俗学者で、稗田阿礼を女性であるとする説を採用しています。こうした立場にたって著者は、伊勢の地における自然神信仰のありかたについての考察をおこなっています。他方で著者は、歴史学者の直木孝次郎による伊勢神宮研究の成果を踏まえ、伊勢の自然神が天皇家の祖先神としての「アマテラス」へと変貌した経緯を解き明かすことをめざしています。

    青木周平による「解説」では、岡田精司と松前健による、著者の説に対する評価が引用されており、「機能的な実証性」にやや問題があることが指摘されながらも、歴史学および神話学の立場からも、著者の説に一定の評価があったことが紹介されています。

  • 2019.12―読了

  •  古事記、日本書紀成立以前の日本列島における素朴な信仰のかたちが、ヤマト王権によって朝廷の支配の正統化のために整備?簒奪?されていく様を、わかりやすく、合理的理由付けによって説明されています。
     とは言え、なにぶん1300年ほど前の時代の事を論証しようとしているので、立証不十分、著者の強引な推論なのでは、と感じられるところもあります。

  • 2019年の5月より元号が令和になるタイミングで伊勢参りを計画していたので、それに先だって伊勢神宮の祭神であり、皇祖神にして日本国民の総氏神であるアマテラスについて一から勉強する目的で購入。

    他の書評にも書かれているように、本書は冒頭から「アマテラスは蛇だった」という小見出しで読者の興味を引くところから始まる。その後、アマテラスが幾度か神格を変えながら最終的に女性神であり皇祖神として定着するまでの変遷を、筆者独自の視点で解説している。
    また、アマテラスのみにスポットを当てるのではなく、伊勢神宮(皇大神宮)が場所を移しながら現在の場所に落ち着くまでの変遷や、伊勢と大和ならびに伊勢と日本神話との関係性などについても併せて解説されており、改めて日本の歴史や文化の重層性を感じられ、非常に興味深く読み進めることができた。

    本書は学術文庫という位置付けであり、いわゆる"古代史の謎解き系"的なエンターテインメント要素はない。しかしながら著者が執筆時に高校教師ということもあってか、平易な文体で著されており読みやすい。
    著者の視点や述べられている内容が、学術界ではどう捉えられているかはさておき、令和を迎えると同時に二見興玉神社に浜参宮した後に外宮・内宮と参拝した貴重な旅路のお供としては、コンパクトで内容の濃い良書であった。
    何年かに一度、読み返したい本である。

  • ひとつ前のと全く同じタイトルだけど、50年以上前の本

    人間味のある語り口が、研究者じゃなくて高校教師だからか

    色々と比較しながら、古い情報は、頭の中で編集しながら読んだけど、どちらが正しいのか、究極にはわからないよね

    かなり持統天皇に寄った視点

    面白い

  • アマテラスは持統天皇が作ったというお話。この本だけ読むと、なるほどそうだねと納得してしまいそう。でも、それではB層です。少し他の人の本も読んでみようかな?そんなことを思わせてくれる本です。

  • アマテラスが地方の自然神から変容していった様をドラマチックに描いている。
    そのドラマに引きずられた感は否めないところはあるが、歴史を紐解く事の面白さを十二分に伝えてくれる本だ。
    個人的に興味を惹かれたのは各地の土豪が服従の意を示すにあたって、祭事および神にまつわる物語を朝廷に奉納することがあったという描写だ。神が死んでも、宗教が弱くなっても物語はいまもささげものである。アマテラスの名前が変わりながらも同じものとして信仰されうるのなら、死んだとしても同じものとして指さされない何かが物語の中にあるのではないかと思う。

  • 説明が冗長で読みにくかった。
    最後の持統天皇のくだりは面白かった。

  • 面白い

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