信長と天皇 中世的権威に挑む覇王 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061595613

作品紹介・あらすじ

将軍義昭の追放、一向一揆の鎮圧、そして割拠する戦国大名にも彼に伍する者はすでにいない。中世的権威を否定することで統一事業を推し進め、いまや天下を手中にせんとする覇王の前に立ちはだかった最大の障壁は正親町天皇だった-。天下人・信長は天皇を超えようとしたのか?信長の政治構想を追究し、天皇制存続の謎と天皇の権威の実体に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 副題は「中世的権威に挑む覇王」とありますが、実際には「覇王に挑むしたたかな天皇」のお話です。

    "天皇"と普通名詞で語られていますが、実際に取り上げられているのは、戦国時代にともすれば廃位・簒奪などの危機にさらされた「万世一系」の皇統を、たくみに守り通した正親町天皇について書かれた本です。

    いや、まったくこの天皇はすごいです。

    他の信長に諂ったり、反発したり、怯えたりする小物登場人物(将軍、公家、宗教関係者、戦国大名)に比べて、なんと冷静でしたたかなことか。軍事的にはまったく無力な天皇ですが、実に政治的人物であり、英雄です。

    すばらしい一冊です。

  • 今谷先生の名著
    本願寺がキモだな

  • 将軍義昭の追放、一向一揆の鎮圧、そして割拠する戦国大名にも彼に伍する者はすでにいない。中世的権威を否定することで統一事業を推し進め、いまや天下を手中にせんとする覇王の前に立ちはだかった最大の障壁は正親町天皇だった。天下人・信長は天皇を超えようとしたのか?信長の政治構想を追求し、天皇制存続の謎と天皇の権威の実体に迫る。(親本は講談社現代新書1992年刊、2002年文庫化)
    ・はじめに
    ・序  章 上洛志向
    ・第一章 入京直後の公武関係
    ・第二章 勅命講和
    ・第三章 天皇の平和
    ・第四章 神格化の挫折
    ・終  章 本能寺の変なかりせば
    ・学術文庫版あとがき

    本書は、「室町の王権」「戦国大名と天皇」の続編となる内容であり、秀吉・徳川篇「武家と天皇」と併せた天皇史の4部作といえるものだという。ゆえに、どちらかというと正親町天皇の方が主人公という感じがする。本来は4部作を読んで感想を書きべきであろうが、本書についてのみ感想を記すこととしたい。(他の本は未読)

    著者があとがきに記すとおり、いまや古典と言えよう。著者は「信長に対して厳しすぎる視点で書いたように受け取られるかもしれない」が真意は、「信長を偉大な政治家と規定したうえで、なお中世以来の天皇史の立場から見ればどうなるか、という角度からとらえ直すこと」を主眼としたという。ゆえに(刊行当時の)他の信長関係書と異なって信長に対して厳しい見方をしていると言える。
    面白い部分もあるが、文中の些細なミス等が気になる。また、牽強付会で強引な論理や推測も目立つ。例えば、金ヶ崎の退き口を「一兵も損なわず無地に朽木越を通って京都へ引き揚げた」p72とするが疑問を感じる。また、三河物語を「「徳川家康の帳下の兵士の手になる」p90としている。間違いではないだろうが、書き方に疑問を感じる。
    「信長が最終目標の征夷大将軍に任官しえないのは、関東を現実に支配していないという既成事実の欠如だけであった。」p125というのもどうだろか。征夷大将軍に任官するためには、実際に関東を支配している必要があったのだろうか。
    織田勝長を信長の許に押送したことにより、「公式に武田と織田の間は手切れの状態になった」p186というのもユニークな見方である。対して信忠と松姫の関係は、表向き破約を言い出さず切り札として残しておく腹だったとするp186が、裏付けは何であろうか。
    天正十年の武田攻めについて、織田軍に比べ、徳川軍の動きが遅れたのは、あらかじめ計画されていたうえでのことであり、「家康は、わざと悠長に行軍するよう、かねて信長に言い含められていたに違いない」p189というのも推測で、根拠は明示されていない。実際は、信忠の侵攻は早かっただけではないだろうか。

    以上、気になる点を挙げて行ったら、トンデモ本のようになってしまったが、「天皇と信長」という部分では、得るところもあった。

  • 先入観で思ってるほど信長が圧倒的権力を持っていた訳ではないというのがよくわかる。
    正親町天皇の政治力の高さが垣間見えた。

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著者プロフィール

今谷 明(いまたに・あきら)
1942年京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得。文学博士。日本中世史専攻。横浜市立大学教授、国際日本文化研究センター教授を経て都留文科大学学長、現在、国際日本文化研究センター名誉教授。主著『室町の王権』(中公新書)、『武家と天皇』(岩波新書)、『象徴天皇の源流』(新人物往来社)、『近江から日本史を読み直す』(講談社現代新書)、『戦国期の室町幕府』(講談社学術文庫)、『日本中世の謎に挑む』(NTT出版)、『象徴天皇の発見』(文春新書)ほか多数。

「2019年 『文庫 中世奇人列伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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