吉田松陰 留魂録 (全訳注) (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061595651

作品紹介・あらすじ

志高く維新を先駆した炎の思想家吉田松陰が安政の大獄に連座し、牢獄で執筆した『留魂録』。愛弟子へ切々と訴えかける最後の訓戒で、死に直面した人間が悟り得た死生観を書き記した格調高い遺書文学の傑作を味読・精読する。

感想・レビュー・書評

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  • かくすれば、かくなるものと知りながら、やむにやまれぬ大和魂

    身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂

    時の日本にとって、吉田松陰を得たことはなんと幸運であったと。日本が結果、独立を保てたのは、松陰が後進に託した大和魂であったと思います。

  • 吉田松陰が死の2日前に書かれたという「留魂録」。解題が最初にあってそれから本文・現代語訳、そして最後に吉田松陰の史伝、という3部構成で、とても分かりやすくまとめられていました。
    それにしても、明治維新の志士を育て上げた吉田松陰。最後の死が壮絶だったからこそ、皆を奮起させたのかと思わされました。まさに、旅と読書と人から学ばれた様子が伝わってきました。

  • 吉田松陰が死の前日に書いた遺書であり、自らの魂を受け継がせる塾生に宛てた手紙である。
    留魂録を読み、死ぬこととはどういうことか、その日まで自分の命をどう使うか、その死生観を考えさせられ、30歳の若者が死の前日にここまで落ち着いた文章で、自分の人生を総括できるものなのかと驚嘆する。
    松陰の死生観と至誠をもっと学んでみたい。

  • 激烈なまでの大和魂で、処刑されるまで疾駆した吉田松陰。本書は死に臨んで同胞達に訓戒した書である。あまりに死を超越したような覚悟をもって大言壮語する様子は痛快だが、現代においてこうまでして激烈な思想信条をもって行動を取る姿勢は、時代の歓迎を受けないだろう。一つに、科学を取り込んで冷静に考察する態度は重要である。とはいえ、科学の思考をもってただ言論を交わしているということでは、科学など取るに足らないと考えてしまうだろうが、科学によって実際に果実を手にすることができると分かれば、気合い一点張りで進めることはやめ、科学の冷静さを認めることになるのではないか。確かに、吉田松陰の熱情は、今触れてみても、痛快である。しかし、現代において現実を動かすには、熱意は必要だが、それに加え、科学によって冷徹に外堀を埋めるということは、かなり重要であると思う次第である。

  • 吉田松陰
    処刑前日に書き終えた遺書「留魂録」

    身はたとひ 武蔵の野辺に朽ちぬとも
    留め置かまし 大和魂

    無念のうちに散ったの思える松陰も
    留魂録の中ではこう言っている。

    人それぞれの人生には四季がある。
    10代で死ぬ者も、その人生の中には四季があると。自分の29年という人生も、実は身を結んでいるのだと。
    年数ではなく、その与えられた人生を如何に生きたかにこそ価値があると。


    吉田松陰が教育者として当時の中で一線を画していたのは、
    身分制度を越えた横の関係で、塾生と繋がっていたことだろう。
    身分に関係なく師と生徒が互いに学び合う。

    身分制度の束縛が強すぎると藩に松陰が提言したほどの封建制の社会。
    西欧の民主主義の概念を吉田松陰が知る前に、既に藩主に提言していたのだから、元からして近代的な思想を持っていたと言える。

    横目でアヘン戦争によってズタズタにされているあの大国である清の惨状を見れば、ペリー来航による危機意識をもつのも当然のことと思える。

    松陰神社に静かに佇む、松陰の墓を目の前に、
    松陰の影響は小さくはなかったと、想いにふけった。

  • たかだか五千字程度に著された人生の深淵。
    死ぬ事とは何か、至誠とは何か。
    暗中模索で駆け抜けるその姿はまさに自ずから咲き誇る花なり。

  • 斉藤さんに薦められて読んだ本。

    吉田松陰の「死生観」に触れられる。

    >死して不朽の見込みあらば、いつ死んでもよいし、生きて大業をなしとげる見込みあらば、いつまでも生きたらよいのである。
    つまり、私の見るところでは、人間というものは、生死を度外視して、要するになすべきをなす心構えが大切なのだ。

    ”不朽”は小山さんの「人は2度死ぬ」にあたり、
    ”なずべきをなす心構え”は斉藤さんの「立志」にあたる、と思う。

    紹介して頂き、感謝☆

    ***

    留魂録は、吉田松陰の”遺書”と位置づけられている。
    処刑される2日前に筆をとり、前日夕方に完成した5000字程度の文書。
    自分の死期を知り、それに恐れる心の変化を冷静に書き、死んだ後の門下生のために書いた。
    死ぬと分かっている人が、自分が死んだ後の事を考え、どうすればよいのかまで言えるのだろうか。言えない。
    だからこそ、吉田松陰が死して不朽の存在なのであろう。

    本は3部構成。
    1.留魂録の時代背景
    2.留魂録
    3.吉田松陰の人生

    吉田松陰にあまり詳しくない人にも読める内容になっている。

    ***

    今年の夏、萩の松下村塾にいった。
    バイクで全国巡りの途中である。
    朝5時に宇野を出発した時に、道路看板に「萩」の文字が見えた。
    予定になかったけれど、向かった。

    これは必然だったのか。

    吉田松陰の人生30年。
    俺はあと4年で追いつく。追いつけるのか。何ができるのか。
    考えさせれる。

    ***

    祝☆月間レビュー50冊突破☆

  • 留魂録自体はかなり短く、状況の説明のような部分も多いので見所としては辞世の句と8章の四季の部分。紙面のほとんどを占めるのが吉田松陰の史伝。吉田松陰に対する尊敬の念は計り知れないが、この本自体の評価は3つ星くらい。
    ただ吉田松陰の史伝で人となりは分かった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/740287

  • 全訳されているため、意味は現代語で理解できる

    自身の誠を持って話せばわかってくれると
    最後まで信じていた吉田松陰が死を前に
    門下生を焚きつけた文章。
     →間部詮勝暗殺計画を自ら口走ってしまった
    人には何歳で人生が終わるとしても四季がある
     →その中でどんな実を結び、次の種をつくるのか
    飛耳長目、外に目を向けることに重きを置いていた

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著者プロフィール

作家

「2017年 『西郷隆盛 英雄と逆賊 歴史小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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