- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061596207
作品紹介・あらすじ
時代は江戸初期。江戸藩邸に詰めて幕府・諸藩との折衝にあたった萩藩江戸留守居役、福間彦右衛門の日記『公儀所日乗』。そこには二千人の藩士が暮らす藩邸の生活の様子や留守居役の実像が細かく記されている。由井正雪の乱や支藩との対立など、迫りくる危機を彼らはどのように乗り越えたのか。第一級史料が描き出す、藩の命運を賭け奮闘する外交官の姿。
感想・レビュー・書評
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江戸時代・寛永期の萩藩、江戸お留守居役だった福間彦右衛門の
日記から、そのお役目から大名屋敷の様子等を読み解いている。
プロローグ-福間彦右衛門の登場
第一章 お留守居役と幕閣・旗本
第二章 支藩との対立
第三章 萩藩の江戸屋敷
第四章 他藩との交渉
第五章 町人と江戸藩邸
第六章 御家のために
第七章 二つの代替わり
エピローグ-彦右衛門の引退
図版・図表一覧、主要引用史料一覧、主要参考文献一覧有り。
寛永期は家光の時代。
まだ戦国末期の名残があり、島原の乱の影響や改易等での牢人が
多く存在した時代に萩藩の江戸藩邸にて、お留守居役を勤めた
福間彦右衛門。
藩主の信頼、幕閣や旗本との関係、支藩との対立、そして、
当主や家光の死、由井正雪の乱など、波乱に満ちたものでした。
それらを乗り越える交渉術等、外交官としてのお留守居役の役割が
詳細に描かれています。
また、大名屋敷の内部や生活の様子など、興味深い史料も多く、
大いに参考になり、かつ、楽しめました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
支藩との対立関係に、わくわくハラハラどっきどきー
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江戸時代の高級官僚の様子が良くわかる。
不思議な程、今と全く変わらない人との付き合い。
これを読むと忠臣蔵の浅野家の留守居役は仕事をしていなかった!と言う事かな。 -
家光時代の、毛利氏の江戸留守居役のつけた日記から、当時、江戸の「大名屋敷」が如何なる役目を果たしていたのか、が明らかにされている。この書を読むと、江戸時代の藩というものが現代が思うよりずっと独立度の高い存在だったことがわかる。そうした中で幕府の意向を汲み、疑義をかけられぬよう気づかい、武家・大名としての体面も堅持していく、という高度で難しい交渉・調整が為されていたことがわかって興味深かった。(図書館にて)
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江戸初期、萩藩の留守居役福間彦右衛門が残した記録から、幕府・他藩との折衝を初めとした留守居役の職務を読み解き、なおかつ幕府と藩の関係についても考察をめぐらす一書。
初版は1991年で、94年に文庫化され、2003年に講談社学術文庫として再々刊されている。歴史学者が書いた最近の本で2度も再版されるというのはけっこう珍しいのではないだろうか。それだけ、この本が「ウケる」ということなのだろう。
どことなく、留守居役の仕事は会社の課長や部長といった人たちのことを彷彿とさせるように書かれている気がする。なんというか、島耕作シリーズを読んでいるような気に途中からなってきた。逆に言うと、現代に生きる人たちが共感を得るように、この本は書かれているのかもしれない。
しかしここには落とし穴があるような気がする。留守居役もなんだかサラリーマンのようであるなあ・・・と思ってしまうことは、近世社会の独自性というか歴史性というか、社会の原理みたいなものが見落とされてしまうのではないだろうか。という気がしてしまう。
まあこの本が「日本エッセイストクラブ賞」を受賞したのは、「この本はエッセイですよ」という意味でまことにもってむべなるかな、という感じだ。でも歴史学者が本業にかかわる部分でそういう仕事をしていて良いのであろうか、という気も少ししてしまうのである。じゃあ、多くの人たちが理解できないような小難しい話をすればいいのか、と言われると、それはそれで違うとは思うのだけど・・・。歴史学が取り組んでいることを、いかに面白くわかるように伝えるか。「歴史叙述」の問題としてとても重要だけど、どうしたらいいかはわからない。
著者プロフィール
山本博文の作品





