- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061596207
感想・レビュー・書評
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江戸初期、萩藩の留守居役福間彦右衛門が残した記録から、幕府・他藩との折衝を初めとした留守居役の職務を読み解き、なおかつ幕府と藩の関係についても考察をめぐらす一書。
初版は1991年で、94年に文庫化され、2003年に講談社学術文庫として再々刊されている。歴史学者が書いた最近の本で2度も再版されるというのはけっこう珍しいのではないだろうか。それだけ、この本が「ウケる」ということなのだろう。
どことなく、留守居役の仕事は会社の課長や部長といった人たちのことを彷彿とさせるように書かれている気がする。なんというか、島耕作シリーズを読んでいるような気に途中からなってきた。逆に言うと、現代に生きる人たちが共感を得るように、この本は書かれているのかもしれない。
しかしここには落とし穴があるような気がする。留守居役もなんだかサラリーマンのようであるなあ・・・と思ってしまうことは、近世社会の独自性というか歴史性というか、社会の原理みたいなものが見落とされてしまうのではないだろうか。という気がしてしまう。
まあこの本が「日本エッセイストクラブ賞」を受賞したのは、「この本はエッセイですよ」という意味でまことにもってむべなるかな、という感じだ。でも歴史学者が本業にかかわる部分でそういう仕事をしていて良いのであろうか、という気も少ししてしまうのである。じゃあ、多くの人たちが理解できないような小難しい話をすればいいのか、と言われると、それはそれで違うとは思うのだけど・・・。歴史学が取り組んでいることを、いかに面白くわかるように伝えるか。「歴史叙述」の問題としてとても重要だけど、どうしたらいいかはわからない。詳細をみるコメント0件をすべて表示