江戸幕末滞在記 (講談社学術文庫)

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感想 : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061596252

作品紹介・あらすじ

王政復古直前に来日したデンマーク人が、フランス公使ロッシュの近辺で見聞した貴重な体験を綴る。将軍慶喜との謁見の模様やその舞台裏、横浜の大火、テロに対する緊迫した町の様子、また、日本人のきれい好きから悪習や弱点までも指摘。旺盛な好奇心、清新な感性、鋭い観察眼と洞察力。若き海軍士官が幕末日本の姿を鋭く鮮やかに描く。

感想・レビュー・書評

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  • ・幕末前後に来日・滞在したフランス海軍士官(デンマーク人)による日本・日本人観察記。複数ある類似書に比べて、要職ではない自由な立場から若者の視点で日本・日本人を描写。以下は印象に残った記述
     #外国人は日本での駐在に満足している。自然の美しさ、陽気で善良な住民、気候、平和など。
     #中国人執事(買弁)との対比:その狡知、計算高さ、商売上手において日本人などは足許にもお呼ばない。けれども日本人は、こうした性質の不足を、正直と率直、疲れを知らぬ我慢強さで補っている。
     #日本人はこと宗教問題に関してはまったくの無関心で有名であり、・・・政府は国民がキリスト教を拝もうが仏を拝もうがたいして関心を寄せていない。政府の恐れは、伝道師たちが下層階級の間で多大な影響力を持つようになり、ヨーロッパの思想なり世界観なりを浸透させるのに利用するのではないかという点にあり・・・
     #日本人は何ひとつ隠そうとせず、持ち前の天真爛漫さでもって、欧米人ならできるだけ人の目を避けようとする行為さえ、他人の目にさらしてはばからない(胸をはだけ化粧する女)
     #日本の芸子はほかの国の娼婦と違い、自分が堕落しているという意識を持っていないのが長所(ほかの人間と同様、パンをえる仕事のひとつ。褒められないが恥じるべきでないという意識)
     #礼儀正しい国民・子供のころから徳行を叩き込まれ・・・顔の表情や行為にまで、住民中最下層の人々の間ですらきちんとした礼儀が要求される。
     #青少年に地位と年齢を尊ぶことが教えられる一方、自己の尊厳を主張することも教えられている。こうした社会的秩序、ならびに諸階級の間で非常によく発達した独立心は、日本人はがなぜ中国人やほかのアジアの民族よりすぐれているかを説明…
     #熱く燃える祖国愛はこの国の最高の徳の一つで・・・学習教育は非常に高い水準にあり…。
     #悪習らしい悪習は二つ。酒にすぐ手をだす、あまりに女好きだが、これは上流階級(役人にのみいえること)。
     #日本の社会秩序中もっとも悲惨な部分、女性の地位・・・。ほかの数多くの異教徒国家同然、ここでも女性の地位は外見こそよさそうにみえても奴隷のそれとさほど違わない(夫の離縁権)
     #こんなにも早く日本女性の花がしぼんでしまう最大の原因のひとつは、毎日のように浴びている熱い湯の風呂である!

  • この手の書籍は以前読んだ”逝きし世の面影”それ同様、幕末開国直後、江戸、横浜に訪れた外国人の日本滞在記。生活に密着した個人的な感想を記したレポートが面白く、とても生き生きした当時の日本を感じさせてくれる。
    ”逝きし世の面影”もそうなのだが江戸幕末の日本人はとにかくニコニコしてて人なつっこく、読めば読むほど私がホーチミンを訪れたときのベトナムの人の気質と重なります。さらにこの時代の海外の人たちから見た当時の日本の姿が気になります。

  • 幕末を書いた本は幕府側や薩長側(新政府側)を中心に書かれたものが多く、庶民レベルが果たしてどういう様子だったのかを感じ取れるものは読んだことがなかった。
    スエンソンというフランス海軍の視点から見た正直な日本の様子は、まるで当時のその場にいるような感覚にさせてくれた。外国人の観点から改めて日本を見つめると、普段気がつかない私たちの当たり前について考えさせてくれる。
    日本人と社会の関係、日本人と宗教の関係、日本人の民族性など幅広く、深い考察を与えてくれており、読んでいる途中で思わず笑ってしまうほどだった。

  • エドゥアルド・スエンソンはデンマーク人だがフランス海軍士官として幕末の日本に滞在。下関戦争で燃える建物を海上から目の当たりに見たり、大阪に来た薩摩藩の侍に睨まれたり、なかなか恐い経験をした。また最後の将軍にも大阪で拝謁した。大阪の庶民はは立派な軍服を着た外国人を見てゲラゲラ笑いっぱなしだったらしい。
    彼にとって芸者の舞いも三味線も退屈きわまりなく、遊郭の女性の化粧、食事の時ゲップをする大名に不快感を隠さない。
    でも彼は後年日本に戻り、海底ケーブルを設置して明治5年に長崎とヨーロッパに通信出来るようにし、非常に貢献している。

  • 講談社学術文庫で時折出る幕末外国人ネタの一冊。テンプレのような勘違い日本観は可愛げがあるが、所々にじみ出る19世紀西洋人特有のジャイアニズム精神にウンザリさせられる。「横浜の街を日本人に奪われる」とか何とか言ってるけど、そこオメーの街じゃねーから!

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