思想からみた明治維新: 「明治維新」の哲学 (講談社学術文庫 1637)

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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061596375

作品紹介・あらすじ

日本人の自力による史上唯一の「革命」は、いかにして成しとげられたか。維新の百年前、幕藩体制を否定し自らの信念に殉じた先駆者山県大弐、はるかな時を経て山県の思想を吉田松陰に伝えた僧黙霖、佐久間象山・松陰師弟、久坂玄瑞らの松陰門下、真木和泉、勝海舟、坂本龍馬…。維新として結実したさまざまな人々の熱い思想の系譜をたどり返す。

感想・レビュー・書評

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  • 明治維新への胎動を生み出した人びとと、彼らの思想について考察している本です。

    江戸時代には多くの一揆があったものの、農民たちは体制変革の展望を欠いていました。そんな中で著者は、江戸幕府の体制への根源的な批判を抱いていた思想家として、山県大弐に注目しています。その後、僧の黙霖を通じて第二の思想が吉田松陰に伝えられ、明治維新につながっていくことが解き明かされていきます。著者は松蔭の立場に「自覚的尊攘派」という名称を当てています。これは、「信仰的尊攘派」と呼ばれる愚かな排外主義とは異なり、リアル・ポリティークに基づいて、日本の独立を可能にするような新体制の確立をめざす立場とされています。

    著者は、「おのおのの人間が、自分の責任を問われる必要のない事柄から、さまざまな苦痛を受ける度合いを減らさなければならない」と主張し、この尺度によって歴史の進歩を定義しています。本書は、明治維新を歴史の進歩を画す市民革命の一種として捉える試みと言ってよいと思います。

  • 結構難しい本です(笑)。が、結局はタイトルがそのまま表しているとおりのもの。思想史の観点から幕末維新をみている、ということにまず注意。私はなかなか理解がしがたくて、3回ほど読み直したときにやっと「あぁ、なるほど」と思えました。飲み込めてからは内容が非常に面白く感じると思います。

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著者プロフィール

1922年大阪に生れる。1945年大阪大学理学部卒業。1951年から2年間、マンチェスター大学及びロンドン大学哲学科大学院に留学。成蹊大学名誉教授。1989年死去。著書『哲学的分析』(岩波書店、1963)『「明治維新」の哲学』(講談社、1967)『歴史を創るもの』(第三文明社、1978)訳書 ラッセル『西洋哲学史』(1954-56)ライヘンバッハ『科学哲学の形成』(1954)ブローダ『ボルツマン』(共訳、1957、以上みすず書房)インフェルト『ガロアの生涯』(日本評論社、1969)ほか。

「2020年 『西洋哲学史【新装合本】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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