渤海国 (講談社学術文庫)

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感想 : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061596535

作品紹介・あらすじ

七世紀末、中国東北部・高句麗の故地に建国された渤海は、奈良・平安時代を通じて三十四回も日本に使節を派遣した。当初、唐や新羅に対する軍事上の連携から始まった交流は、北方産の毛皮と日本の絹などとの交易が主体となり、華麗な宮廷外交を展開。菅原道真と漢詩の応酬をした大使父子も登場した。二百年の交流の実像に、最新の研究をふまえ迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 現在の北朝鮮から中国東北部およびロシア沿海州に広がる地域にかつて二百年もの間繁栄した国があった。それが渤海国である。もと高句麗の地に建国し、奈良朝、平安朝の日本と外交関係を持っていた。渤海国と日本の宮廷人とのあいだで漢詩の贈呈など華麗な外交交際があったという。最初は共通の敵である新羅への対抗で日本に派遣されてきたが、後半期には経済的交流と文化的交流になったようだ。渤海からは毛皮が持ち込まれ、日本の絹製品、綿製品との交換が望まれたようだ。926年、繁栄して文人化した渤海国は契丹の侵略であっという間に滅亡してしまった。

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  • 古書店にて半額セールで購入。なんとなくハザール王国を念頭に置いて読んでみた。契丹に滅ぼされた際に徹底的な破壊を受けたため、当時の資料に乏しい古代王国・渤海。それが200年ほどの歴史の中で奈良・平安朝期の本邦とも積極的に交易を行っていたことなど今の今まで知らずにいたし、第一この本には初見の記載が目白押しだ。何せ最も勉学に勤しむであろう学生の時分ですら、渤海の歴史など教科書のほんの数行で片付けられていたのだから。遣唐使廃止後には日本の唯一の交易国になっていたこの国に関して知ることは、古代日本の理解にも繋がる。

  •  「渤海国」を知っている日本人がはたしてどれほどいるのだろう。本書にもそんな疑問がいたるところに何度も出てくる。朝鮮半島の三国時代における、高句麗、新羅、百済や、その後の統一新羅、高麗や李氏朝鮮などはよく知っているのに、「渤海」となるとまるで知名度が低い。

     何を隠そう実は自分も最近までその存在すら知らなかった。中学の社会の教科書に記述があったかどうかわからないが、習った記憶がない。(上の学校・高専では世界史は習わなかった。)一般に高校の世界史の教科書においても記述はせいぜい数行どまりで詳しく書いているものはないそうだ。

     ところが、この渤海と日本とは当時約二百年の間に、実に三十回以上もの使節のやり取りをしており、立派な国際交流をしていたのであった。それなのにどうして忘れられてしまったのか。主に二つの原因があるという。

     その一つは、渤海が大陸国家であったにもかかわらず、およそ戦争とか征服とかいうことに縁のない平和な文化国家であったこと。

     原因の二つ目は、その跡地にその後千年以上も国家というほどのものが続かなかったことにあるようだ。だから人に歴史地図なしでその国のことを説明することが不可能であり、そのように具体的に捉えることのできない地理的条件が渤海国を認識することを妨げている。

     私は今回この本を読んで、目からうろこが落ちるような、ある意味恥ずかしいような思いに駆られた。これほどに友好的に長期にわたり我が国と交流していた「渤海」という国があったということを、我々日本人は認識すべきである。教科書の執筆にも問題がある。ぜひとも正しいことをきちんと書いて子どもたちに教えるべきだ。

     もともとは放送大学の講座「北東アジアの歴史と朝鮮半島」を受講して、初めて「渤海国」の存在を知った。それまでは本当に何も知らなかったのである。

  • 現在の朝鮮、中国、ロシアにまたがった地域に二百年ほど存在した、日本とも国交の盛んだった、あまり知られていない国、渤海。下手をすると教科書でも唐と混同されかねない国についての、数少ない本である。

  • 教科書でも数行で記述の終わる、古代のマイナー国家、渤海国の話。
    しかし、かの国は古代律令国家の日本にとって実質的に最大の友好国であり、古代の外交史を語るには外せない存在である。

    特に渤海使を迎える際の当時の文化人との交流の深さはまさに古代の文化人オールスターといっても差し支えない輝きを誇っていた。


    本書は日渤の交流史を中心に扱っていることから、日本史や漢文がわからないとさっぱりな内容ともいえる。個人的にはもっと渤海国自体の歴史について語ってほしかった。



    (2009/6/14読了)



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著者プロフィール

1931年生まれ。日本海事史学会、日本暦学会共に理事。
著書に『日本渤海交渉史 増補版』(共著、彩流社)、『渤海国―東アジア古代王国の使者たち』(講談社学術文庫)、『遣唐使全航海』(草思社)などがある。

「2016年 『文科系のための暦(こよみ)読本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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