日米戦争と戦後日本 (講談社学術文庫)

著者 :
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レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061597075

作品紹介・あらすじ

「真珠湾」から半年余、わが国が緒戦の戦勝気分に酔っていた頃、米国ではすでに対日占領政策の検討に着手していた。そして終戦。三年の歳月を要した米国による戦後日本再建の見取り図はどう描かれ、それを日本はどう受け止めたか。またそれを通じ、どう変わっていったか。米国の占領政策が戦後日本の歴史に占める意味を鳥瞰する。吉田茂賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • いよいよ平成の時代が終わりを迎え、象徴天皇として歩まれた天皇陛下のお姿を紹介する報道、論評を耳にすることが多くなりました。
    本書は、日本外交史の専門家による第二次大戦の戦後処理を概説した一冊。象徴天皇制がどういう政治過程で決まったのかについても言及され、興味深く読みました。

    1941年12月の日米開戦を受け、米国が戦後の日本占領政策の検討に入ったのは1942年夏。日本が緒戦の勝利に酔いしれていた時期でした。
    第一次大戦時に明確な戦後処理計画をもたなかったことが、敗戦国ドイツに対する苛烈な賠償要求、その結果としてナチスドイツの伸長につながった反省から、米国内の日本専門家が国務省に集められました。
    開戦からわずか半年で占領政策を構想し始めたという時間的視野も勿論ですが、「日本と戦い占領するなら日本をもっとよく知らなければならない」というプラグマティックな思考の柔軟性にも圧倒されます。敵対国の言葉を使うことを潔しとしなかった日本との違いを嘆じずにはいられません。

    こうしてまとめられた対日占領政策は当初、米国民の反日感情の強さを反映した、日本にとって非常に厳しいものでした。天皇制廃止、米国による直接統治、非軍事化の徹底。
    この案がそのまま採用されていたら、わが国のあり様はずいぶんちがったものになったように思われます。

    この案を、日本の実情に合うよう穏当なものに変えていったのが駐日大使だったグルーや、陸軍長官スティムソンら知日派の存在です。
    好戦的で危険な国(のように見える)日本には、幣原や若槻といった国際協調を重視するリベラル派がいること、天皇は軍部に担がれて開戦を決断したが、決して好戦的ではないこと。かつての良き日本への信頼を基盤として、政府内の議論を転換しようと繰り返し試みます。
    こうした彼らの努力に加え、ローズベルト大統領の死とトルーマンの就任、対日強硬派だったハル国務長官の交替など、さまざまな偶然が作用した結果、「史上もっとも敗戦国に寛大な占領」と呼ばれる占領政策が実現するに至りました。

    戦後日本の出発点を米国側から照射するという筆者の意図は、本書でも十分に成功しています。
    これは、実際に米国の公文書館で当時の政府文書を閲覧、分析を重ねるという地道な作業から得られたものです。
    約30年前の学生時代、神戸から出講されていた筆者の講義を受ける機会に恵まれました。その際、日米の文書管理に対する姿勢の違いについて仰られたことが印象に残っています。
    「米国は(ベトナム戦争のように)ときにひどいこともする。しかし、自分たちの行為について後世の判断を受けるという意識が非常に強い。公文書は厳格に保管され非公開期間が経過すれば必ず公開される。歴史に向き合うということはそういうことです」
    彼の国は今、政治的な混乱の渦中にありますが、こうした姿勢は謙虚に学びたいと思います。

  • [ 内容 ]
    「真珠湾」から半年余、わが国が緒戦の戦勝気分に酔っていた頃、米国ではすでに対日占領政策の検討に着手していた。
    そして終戦。
    三年の歳月を要した米国による戦後日本再建の見取り図はどう描かれ、それを日本はどう受け止めたか。
    またそれを通じ、どう変わっていったか。
    米国の占領政策が戦後日本の歴史に占める意味を鳥瞰する。
    吉田茂賞受賞作。

    [ 目次 ]
    序章 日本占領―勝者と敗者の弁証法
    第1章 日米開戦と占領政策の立案
    第2章 終戦―ヤルタからポツダムへ
    第3章 占領と改革
    第4章 自立に向かって
    終章 通商国家―その発展と試練

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 真珠湾攻撃後にアメリカは日本の占領政策の方針を立て始めたと言うところは印象的であった。

  • 開戦から終戦までの動き、占領後の政策など今まで知らなかったことが多かった

  • 簡潔でわかりやすかった。

  • この本のメインはアメリカ国内の知日派の動きによって、アメリカの対日占領政策がどのように変わっていったのかを中心に説明する。それは第一次世界大戦の講和への準備不足の反省に立っていたと言う。そこから欧州で戦争が始まった時にアメリカは戦後秩序の構想を始め、日本が緒戦の「勝利」にわいている時に、対日占領政策を始め戦後のあらゆる問題への対応が始まった。

    当時のアメリカ国内の感情を反映し、ルーズベルト大統領も無条件降伏を求めており、終戦二ヶ月前のアメリカ政府の決定は軍政の直接統治だった。しかし、アメリカ国内にいた、わずか数十人の知日派が政策に加わり、対日占領の性質が日本の「無力化」(当初は本土戦を想定、その後直接統治による政府の解体を想定)から、「安定と復興」にシフトしていく様は、アメリカ政治の通気性の良さと優秀なスタッフに驚く。知日派と言われる人々は立場に差はありながらも、戦前の穏健派(具体的には若槻、浜口、幣原などロンドン軍縮条約時の主導者を評価している)を挙げながら、日本人自身の手で民主化を実現させ事は可能で、それを占領政策はそれを誘導するものとすべきだと主張した。読者はその過程で知日派の働きで、東京の空襲で皇居が外された事、皇室が残された事、原爆の対象に京都が外された事などを知る事が出来る。(一方で宮家の大幅な削減がなされているが)

    それと比して、日本の政策決定の遅さと政治指導者のセクショナリズムに目に余る内容だ。グルーはソ連とのヤルタ協定を知り反発し、また原爆の完成、投下を懸念し、対日降伏を早急に引き出すべく天皇制の存続を保証すべく奮闘するが、ポツダム宣言ので天皇制の保証はなされなかった。ポツダム宣言の意図を正しく解釈し、国体護持のみを条件に降伏すべきと主張する外相に対し、広島に原爆が落とされた後も、上記に加え戦争犯罪者、武装解除、占領のあり方を条件にし、広島への原爆投下の後も、アメリカの原爆は一つかもしれないという軍部の主張には、唖然とする。また、広島に原爆が落ちた後、3日経った最高戦争指導会議開催に筆者は「犯罪的な緩慢さ」であるといい、ソ連対日参戦と二個目の原爆は防げたかもしれないと示唆している。

    読後感として、3,11以後の危機対応に同じものを感じる。政治指導者のリーダーシップの欠如などと言われるが、明治憲法における政策決定過程と、現行憲法には制度上は雲泥の差がある。しかし党派問わず今の政治にも国民生命への危機感及び責任感は感じられず、官僚の保身的セクショナリズムも変わってはいない。知日派の思いとは裏腹に手続き的な制度だけを輸入しても日本人のエートスはあのころのままなのだろう。

    終戦への過程で天皇が自ら語らざるを得なかった。「…人民を破局より救い、世界人類の幸福のために…」と仰せ、再度、「自分はいかになろうとも、万民の生命を助けたい」と口にした。この事は慣習を破った事を意味したが、緊急事態における政府停止の故のものであった。今まさに、国難のさなか、声明を出し被災地へ向かう姿に、被災者の高齢の方々は感銘をうけただろう。国難に際し政治が希望を与えられない時、国民へ語る天皇は、「封建制の残滓」ではなく、日本人の琴線に触れる存在となる。

  • 「やってみなければ分からない」と行き当たりばったりに対米戦争に突入した日本と、戦いながら戦後の日本の姿までデザインしていたアメリカの姿は実に対照的です。

  • アメリカは戦争中から日本占領後のグランンドデザインを計画していたことが分かる。

  •  米国の占領政策は、真珠湾攻撃を受けた半年後すでに、対日占領政策について議論されていた。そして3年の歳月を要した。
     米国による戦後日本再建の見取り図はどう描かれ、それを日本はどう受け止めたか。またそれを通じどう変わっていったか。(本書あとがきより引用)

     明治、日露戦争時にはいかに戦争を終わらせるかをが戦闘当初に議論されたように、日本でも戦争の終結をにらんだ方策が取られていたのだが結果的には、圧倒的な物量のアメリカに抑えられたことよりも、どういう形で戦争を終わらせるかを十分に検討できなかったことが大きかったと思う。
     実は、この考え方は戦争に限らず、すべての闘い【ビジネス】に必要なことであり、戦略がなければ、ビジネスは「絵に描いた餅」となる。歴史書というよりもすべてのビジネスマンにも読んでほしい1冊ともいえる。

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著者プロフィール

2017年5月現在ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長、熊本県立大学理事長。

「2017年 『防災をめぐる国際協力のあり方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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