- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061597266
作品紹介・あらすじ
太平記よみの語りは、中世・近世を通じて人びとの意識に浸透し、天皇をめぐる二つの物語を形成する。その語りのなかで、楠正成は忠臣と異形の者という異なる相貌を見せ、いつしか既存のモラル、イデオロギーを掘り崩してゆく。物語として共有される歴史が、新たな現実をつむぎだすダイナミズムを究明し、戦記物語研究の画期となった秀作、待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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北畠親房と足利尊氏の理想が同じという点に驚いた。楠木正成はじめ、武臣ではない者たちが好意的に語られる点において、太平記の作者を考察するところが面白い。鎌倉〜室町時代の前例主義がうかがえるところも読んでいて気持ちがよかったが、100ページで断念する。
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ちょっとした太平記ブーム。
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楠木正成の実像を知るために、三冊を同時に読み始めました。しかし本作は史実を詮索することがテーマではなく、芝居や講談で繰り返し再生され、現在も日本の社会や国家を呪縛している楠木氏的な物語がテーマです。それは太平記に起源を持ち、近世、近代に流通するフィクションとしての南北朝の歴史であり、その影響力は、同時代の思想家の言説とは比べようもなく、言い換えれば「南北朝時代史」という物語が思想家や学者の言説を構成しているとしています。本書では具体的にそのことを述べていきますが、非常に面白い内容です。私は太平記の歴史が幕末には共有されていたため、尊皇攘夷というスローガンで簡単に倒幕が出来たのではないかと理解しました。また正成の実像に迫るヒントも与えてくれました。何度でも読むであろう学術書です。
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いや、この方の本はホントにおもしろいです。「南北朝」という物語的言説が先にあり、それにあわせて「南北」の対立構図ができあがっていったという話は、読んでいてひざを打つ思いでした。「言説(物語)としての歴史といったばあい、歴史は書物のような『もの』として<strong>ある</strong>のではない。それは、ある制度化された言表行為として読まれ、また語られることで歴史に<strong>なる</strong>のである。」(「原本あとがき」より、太字箇所は出典では傍点)という一節、ジョーシキっちゃあジョーシキですが、非常に重要ですよね。(20071003)
著者プロフィール
兵藤裕己の作品





