中世ヨーロッパの都市の生活 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061597761

作品紹介・あらすじ

中世、城壁が築かれ、都市があちこちで誕生した。異民族の侵寇や農業・商業の発達はそれに拍車をかけた。一二五〇年、シャンパーニュ伯領の中心都市、トロワ。そこに住む人々はどのような生活を送っていたのか。主婦や子供たちの一日、結婚や葬儀、教会や学校の役割、医療や市の様子などを豊富なエピソードを盛り込み描く。活気に満ち繁栄した中世都市の実像が生き生きと蘇る。

感想・レビュー・書評

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  • 研究者ではない作家の人が書いた本ということで、内容が優しく読みやすく、物語として楽しめた。大人になって世界史を勉強しなおしていて、中世ヨーロッパの世界観をもっと理解したいと思ってよみ始めたのだが、同じ著者のシリーズが他にも講談社学術文庫から出ているので読んでみたいと思う。

  • 同シリーズの『城の生活』よりも『農村の生活』よりも圧倒的に読みやすく面白いのは、時代も場所も違えど同じ"都市"に住む身であるからだろうか。
    フランスはシャンパーニュ地方の都市であるトロワにおける1250年とは、

    馬のひづめの足音、ガチョウの鳴き声、夜明けとともに鳴り響く教会の鐘、
    魚屋、肉屋、皮なめし屋とひどい臭いの店が立ち並ぶ一角、
    商店の陳列台に並ぶ長靴、ベルト、財布、ナイフ、スプーン、ロザリオ。

    といった『中世』と聞いて誰もが思い浮かべるファンタジーの世界であった。
    そして本書には、そのファンタジーを具象化する詳細にあふれている。

    夏市のためにバポームから古代ローマ時代にできた道をたどって南下してくるフランドル地方の毛織物隊商たち。
    ブドウ酒のコップは隣の人と共用なので、コップに口をつける前に唇について油を拭き取る礼儀に従っていた裕福な市民たち。
    「ゾウが恐れるのは竜とネズミだけ」といった自然史を後者のない学校で教えられる生徒たち。

    記録に残されやすい裕福な貴族や修道士の生活にとどまらず、
    例えば洗濯女の『シャツやテーブルクロス、ベッドリネンなどを木桶に入れ、木の灰と苛性ソーダを混ぜたものに浸け、叩き洗いをし、すすぎ、日光に干す』や、
    乳母の『乳が足りなくなると、エンドウ豆、インゲン豆、牛乳で煮たオートミールを食べた』といった、
    一体どこから探してきたのか検討もつかないほどの庶民の生活まで紹介される。

    教科書通りの歴史の授業では、普通に暮らす人々にとっては異常でしかない事件のみしか学べないが、
    その裏で営まれた何の変哲もない日常こそ、今に繋がる"歴史"と言えるのではないだろうか。

  • 中世ヨーロッパ(フランス)の都市トロワの記録。そこに生きる色々な人たちの生活の雰囲気を伝えてくれる。歴史的な出来事ではなく有名な人物の話ではなく、一市民の普段の生活の雰囲気が知れるのはタイムスリップ感もあって面白い。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/740527

  • 訳:青島淑子、原書名:LIFE IN A MEDIEVAL CITY(Gies,Joseph;Gies,Frances)

  • 中世って、つまんないかと思いきや、いやいや面白い。
    貴族や豪商より、豊かな生活してんだな、現代の私達…。ありがたや、ありがたや。

  • 読みやすく、わかりやすかった。ただ、フランス以外の13世紀の都市もこんな感じだったのかどうかは全然わからなかった。

  • 書名こそ、『中世ヨーロッパの都市の生活』とあるけれど、漠然と中世を扱っているのではなく、本書に書かれているのは、「1250年のフランスの都市、トロワ」での生活風景です。

    目に浮かんで来るようでした。


    書かれている内容。
    主婦の生活、出産、結婚、葬儀、商人、医師、建築、学校、演劇、そしてシャンパーニュ大市…、などなど。
    それらのことを「1250年のフランスの都市、トロワ」で述べています。


    歴史を知る上で、当時の具体的な生活風景のイメージをつかむことは重要だと考えますが、そういう意味で、この本は良書かもしれません。

    そういうことを抜きにしても面白い本です。

    歴史書というより、中世ヨーロッパの都市の当時の、つまり、「1250年のフランスの都市、トロワ」のようすが目に浮かんでくるような具体的な生活の叙述が多く、ルポみたいでした。


    本書であった、おもしろい内容をいくつか。

    「肉を切るナイフはあってもフォークはまだ発明されていなかった」、「窓はあっても窓ガラスを持っているのは貴族の一部だけだった」

    ええっ!みたいな。




    あと、今の時代のようにボタンひとつで簡単にコピーできる時代ではない中世。
    本は、もちろん筆写。
    そこで、筆写した人が、本のしめくくりに、いろいろ書いていたとか。

    「これで終わり、やれやれ」。
    わかる(笑)。

    他には・・・。
    「筆写した者が作業を続けられ、よいブドウ酒を飲めますように」
    「これでおしまい。先生が太ったガチョウをくれますように」(学生から先生へ、かな)
    「筆写した者にいい牛と馬が与えられますように」
    「ここまでの苦労にこたえ、筆写した者に美しい女性が与えられますように」
    「筆写した者に牛と美しい女性が与えられますように」

    じつにさまざま、そして、本音。おもしろい。

    『中世ヨーロッパの都市の生活』、「1250年のフランスの都市、トロワ」での生活風景に浸ってみるのもいいかもしれません。

  • (目次)

    シャンパーニュ伯家の系図
    謝辞

    プロローグ
    第一章 トロワ 1250年
    第二章 ある裕福な市民の家にて
    第三章 主婦の生活
    第四章 出産そして子供
    第五章 結婚そして葬儀
    第六章 職人たち
    第七章 豪商たち
    第八章 医師たち
    第九章 教会
    第十章 大聖堂
    第十一章 学校そして生徒たち
    第十二章 本そして作家たち
    第十三章 中世演劇の誕生
    第十四章 災厄
    第十五章 市政
    第十六章 シャンパーニュ大市
    エピローグ 1250年以降

    訳者あとがき

  • 中世ヨーロッパと言いつつフランスのトロワ1250年というおそろしくピンポイント。立体的に生活が描かれていて息遣いも聞こえるようだ。がもう少し突っ込んだところが欲しくそこが残念。具体例の羅列でなく、成り立ちなど詳しくほしい。

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