十二世紀ルネサンス (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061597808

作品紹介・あらすじ

中世の真っ只中、閉ざされた一文化圏であったヨーロッパが、突如として「離陸」を開始する十二世紀。東方からシチリアへ、イベリア半島へ、ギリシア・アラビアの学術がもたらされる。ユークリッド、プトレマイオス、アル=フワーリズミーなどが次々とラテン訳され、飛躍的に充実する西欧の知的基盤。先進的アラビアとの遭遇が生んだ一大転換期を読む。

感想・レビュー・書評

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  • 古代ギリシャ、ローマの哲学、科学は中世ヨーロッパ・キリスト教社会では見失われていました。15世紀ルネサンスを準備したのは、それまでの間にアラブ社会に伝わり発展していたプラトン、ユークリッド、アルキメデスでした。

  • ルネサンスって三回あるんですよね。
    そのうちの一つが12世紀で起こったということです。

    大学の起源と深いかかわりがあり、科学史を理解する上ではとてもためになりました。

  • ルネサンス  歴史学  歴史  キリスト教  歴史神学

  • 中世の真っ只中、閉ざされた一文化圏であったヨーロッパが、突如として「離陸」を開始する12世紀。東方からシチリアへ、イベリア半島へ、ギリシア・アラビアの学術がもたらされる。ユークリッド、プトレマイオス、アル=フワーリズミーなどが次々とラテン訳され、飛躍的に充実する西欧の知的基盤。先進的アラビアとの遭遇が生んだ一大転換期を読む。


    アラビア世界から西欧へ
    中世の眠りを覚ます 創造的文明移転の時代

    中世の真っ只中、閉ざされた一文化圏であったヨーロッパが、突如として「離陸」を開始する12世紀。東方からシチリアへ、イベリア半島へ、ギリシア・アラビアの学術がもたらされる。ユークリッド、プトレマイオス、アル=フワーリズミーなどが次々とラテン訳され、飛躍的に充実する西欧の知的基盤。先進的アラビアとの遭遇が生んだ一大転換期を読む。

    第1講 十二世紀ルネサンスとは何か
    第2講 十二世紀ルネサンスのルートと担い手
    第3講 シャルトル学派の自然学
    第4講 シリア・ヘレニズムとアラビア・ルネサンス
    第5講 アラビアから西欧へ
    第6講 シチリアにおける科学ルネサンス
    第7講 ロマンティック・ラブの成立

  • ギリシアの学術知識はほとんどがビザンツに引き継がれ、西ヨーロッパには僅かしか伝わらなかった。伝播に寄与したのは異端とされ東方へ追放されたキリスト教徒であった。ギリシア語文献のアラブ翻訳によりアラビア学術は11世紀に黄金期を迎える。
    12世紀になりアラビア語を翻訳して西欧に伝わる。翻訳の担い手は修道士達が多い。西欧が世界史の中心となる知的基盤ができてきた。12世紀以後は暗黒時代ではない。その背景には封建制度確立、三圃制による農業革命、農業の効率化による商業の活性化、大学の設立がある。十字軍による知的影響は意外と少ない。12世紀ルネサンスは哲学、科学、法学の領域において特徴がある。
    文化伝播ルートの拠点はスペイン、シチリア、北イタリアである。先駆者として尊者ピエール、バースのアデラードがいる。アラビア文献を翻訳し、権威や常識ではなく理性を重んじた。
    シャルトル派は自然の合理的探求によって神の認識を目指した。これはのちのガリレオ、ニュートンら科学革命につながる。
    スペインの代表的翻訳者にクレモナのゲラルドがいる。
    女性に対するロマンティックな愛という概念は12世紀に発明された。古代ギリシアの愛は基本的に同性愛であり、異性愛の観念は11世紀アラビアで発達した。

  • ルネサンスと言えばイタリア!14世紀のフィレンチェ!
    こんな常識は歴史を無批判に解釈しすぎて、なんなら間違ってますよ!
    ルネサンスはイスラムとアラブ社会を経由して12世紀に達成されたんですよ!
    という講演録を活字にした本です。
    1984年の講演だそうですが、何故こんなに大事な内容が中学高校の教育内容に反映されないのか謎です。なんなら未だに十字軍がきっかけとか書かれてるらしいですからね・・教科書とかには。
    <もう少し具体的に>
    一度消えてしまったギリシア・ローマ文化を継承していたのはビザンツ帝国を追い出された異端のキリスト教徒。彼らがシリア、アラブでキリスト教を広めることで、その教義の元に流れるギリシア文化を伝播し、ヘレニズム文化をすでに継承していたイスラム社会との融合が起こり、新しい文化に発展させることができた。
    この新しい文化を受け取る許容(教養とするべきかも)があったのは、すでにイスラム教徒になじみのあったシチリアやスペインであった(フリードリヒ二世とかを思い出しちゃいますよね)という循環が12世紀に起こったルネサンスである、という内容です。
    「巨人の肩に乗る」の本家がでてきたくだりは感激でした。
    <教訓>
    新しい文化を継承できる人たちはえてして移民であるというのは、なんだか現代の問題のようにも感じられました。特に問題がなければ何も変える必要ないですからね。ということで過去を知って今に活かす、という大変興味深い内容でした。
    <レベル>
    市民むけの講演ということで分かりやすいですけど、初級者向けとは言いがたい。。あれですね受験とかの感覚でいうと、基本は学んだけどイマイチ意味が分からなかったというような人が読むと楽しめるんじゃないかしら。そして、意味がわからないのは合理的な説明になってないから、ということも同時に感じ取れるんじゃないかしら。大学の授業らしくて大変面白かったです。まだ疑問点は残ってますけど、その辺はまた別の本で勉強していきます。

  • 市民セミナーでの講義が元になっているので読み易いです。
    ヘレニズム期の科学がローマには余り残らずにその大半がビザンティンに伝わって、その知識を保持していたネストリウス派が異端となってビザンティンを追われて西アジアに逃れたけどもササン朝に取り込まれて、遂にはヘレニズム期の科学がアラビア世界に伝播していったという辺りの記述が興味深いです。

  • IS1a

  • 第一講 十二世紀ルネサンスとは何か
     一 はじめに
     二 十二世紀ルネサンスの動機
     三 十二世紀ルネサンスへの視角
    第二講 十二世紀ルネサンスのルートと担い手
     一 十二世紀ルネサンスのルート
     二 先駆者(一)尊者ピエール
     三 先駆者(二)バースのアデラード
    第三講 シャルトル学派の自然学
     一 自然の合理的探究
     二 シャルトル学派
     三 シャルトルのティエリ
    第四講 シリア・ヘレニズムとアラビア・ルネサンス
     一 ヘレニズム文化の東漸
     二 シリア・ヘレニズム
     三 アラビア・ルネサンス
    第五講 アラビアから西欧へ
     一 西欧におけるアラビア学術の移入
     二 十二世紀ルネサンスの開花
     三 十三世紀の翻訳運動
    第六講 シチリアにおける科学ルネサンス
     一 十二世紀シチリア研究の歩み
     二 ユークリッド『与件』の伝承
     三 『与件』の訳者と『原論』の訳者
    第七講 ロマンティック・ラブの成立
     一 トゥルバドゥールの登場
     二 ロマンスの淵源
     三 イスラム・スペインからヨーロッパへ

  • 新書文庫

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著者プロフィール

伊東俊太郎
1930年東京生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。Ph.D.(科学史・米国ウィスコンシン大学)。東京大学教養学部教授、国際日本文化研究センター教授を経て、東京大学名誉教授・国際日本文化研究センター名誉教授・麗澤大学名誉教授。日本科学史学会会長(2001-09年)、日本比較文明学会名誉会長、国際比較文明学会名誉会長。著書『文明と自然』(刀水歴史全書、2002年)、『十二世紀ルネサンス』(講談社学術文庫、2006年)、『近代科学の源流』(中公文庫、2007年)、『新装版 比較文明』(東京大学出版会、2013年)など。共著『思想史のなかの科学 改訂新版』(平凡社ライブラリー、2002年)など。全集『伊東俊太郎著作集』(全12巻、麗澤大学出版会、2008-10年)。2020年文化功労者。

「2022年 『人類史の精神革命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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