森のバロック (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061597914

作品紹介・あらすじ

生物学・民俗学から神話・宗教学に精通、あらゆる不思議に挑んだ南方熊楠。那智の森の中に、粘菌の生態の奥に、直観された「流れるもの」とは何か。自然や人間精神の研究の末織り上げられた南方マンダラの可能性とは?後継者のいない南方熊楠の思想、「旧石器的」な思考の中に、著者は未来の怪物的な子供を見出す。対称性理論への出発点となった記念碑的著作。

感想・レビュー・書評

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  • 南方熊楠、「偉人」「奇人」「巨人」近代日本の「神仙」・・1867年生まれ1941年没
    の75年の生涯の軌跡の見事さとその知性の鮮明な輝き、時代を100年以上も見抜く先見性にただただ、脱帽、敬服、同じ日本人として誇りに思う。明治という時代は彼と同期の漱石など何故これほどの傑物、人物を生み出したのだろうか?中沢新一はのこの本で、熊楠の伝記でなく、彼の論文や書簡を超えてそこに表現された言葉の閾下や内部でひそかに歌われている歌に全神経を集中し、熊楠という法外な生命体のもっとも内奥に潜む思想にせまりたいと言っている。
     それにしても、アノ時代に20歳で横浜からアメリカへ25歳でフロリダ、キューバ
    ハイチ、ベネゼラ、ジャマイカへ曲馬団と行動をともにしながら菌類、地衣類を採集、研究し26歳でロンドンへ・・34歳で帰国まで大英博物館他で勤務・研究、ネイチャー誌に論文多数掲載、帰国後、故郷の和歌山、田辺市で隠花植物、菌類の研究を在野のアマチュアー?学者として・・。
    熊楠の生物学、民族学、宗教学、神話に
    精通しこの世界の不思議、根源の構造へ
    挑んだ思想へのガイドラインであるが、いつの日か青春冒険譚を熊楠の生涯としての
    伝記映画など・・充分に迫力ある世界を
    誰かに描いてもらいたいものだ。
    今、ニートや引きこもり、イジメに悩む若者に勇気と夢、希望を与えてくれる素晴らしい偉人、巨人がそこにいた事を、教師・学校は語る義務があると思う。
    ■詳細読書感想はhttp://amato-study.comに。

  • 南方熊楠の伝記ではない。彼の生涯のうちで「もっとも深く体験されたもの」について取り出そうとする。特に思想モデルとして結実した南方マンダラに内蔵されている思想的可能性の展開について考えていく。

    「縁の論理」は、「力」をめぐるセリー論理の別名なのだ。それはマンダラの構造体を変化と変態の側面から、とらえようとする。 p103

    構造主義は、レヴィ=ストロースにしたがえば、知性である金剛界と、自然と生物である胎蔵界との間に、隠れた調和を発見しようとする、現代の試みのひとつなのだ。私たちは、こうして、南方熊楠の民俗学思想と、現代の構造主義の間にみいだされる、深い共通性の、真の源泉に触れるのである。 p193
    [more]
    【目次】
    1.市民としての南方熊楠
    2.南方マンダラの来歴
    3.燕石の神話論理
    4.南方民俗学入門
    5.粘菌とオートポイエーシス
    6.森のバロック
    7.今日の南方マンダラ

  • 三葛館一般 289.1||NA

    本書は、今回の展示でも紹介している「闘う南方熊楠 :「エコロジー」の先駆者」武内善信著[三葛館一般 289.1||TA]にて、【熊楠論】の代表と言われるものです。熊楠の伝記や、熊楠の研究に焦点をあてたものでなく、熊楠が深く体験したことから、熊楠の「思想」を紐解くものとなっています。なかなかに難解な内容ではありますが、伝記や業績から熊楠について知った後、その思想のマンダラに踏み込んでみるのはいかがでしょう?
                                  (ぶどう)

    和医大図書館ではココ → http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=88636

  • 南方熊楠について書かれた本です。とは言っても、南方熊楠の伝記というわけではありません。熊楠の生涯に触れながら、熊楠がそのときどきで、何を体験し、何を考え、何を伝えようとしていたのか、そういう点を掘り下げて行こうとされています。さて、南方熊楠とはいったい何者だったのでしょうか。いまで言う文化人類学についても考えていたようですし、いわゆる民俗学的な研究もしている。さらに粘菌を調べたりもしている。写真を見る限りでは存在感のある不思議な人物です。私と熊楠との出会いは30年ほど前で、暗黒舞踏の白虎社(いまでも活動しているのだろうか)主催合宿に参加したときのことです。主宰者の大須賀さんが、「ミナカタクマグス」を知らないのか?と言っていました。私の頭は「・・・」人の名前とも思えなかった。そう、合宿をしたのも熊野の山奥の廃校でした。(熊楠は熊野で粘菌を調べていました。)それ以降、気になって熊楠についてかかれたものを少しは読んでいたのですが、どんな思想を展開していたのか、じっくり考える機会はありませんでした。では本書を読んでよく理解できたかというと、それも全く自信はありません。(燕石の話しのあたりまではなんとなくついていっていたのですが、仏教の話が多くなるとさっぱりイメージできなくなりました。)ただ現在にも通じることを、早い段階で考えていたのだろうということだけは伝わってきます。ミナカタクマグスの思想を現在によみがえらす必要があるのでしょう。

  • [ 内容 ]
    生物学・民俗学から神話・宗教学に精通、あらゆる不思議に挑んだ南方熊楠。
    那智の森の中に、粘菌の生態の奥に、直観された「流れるもの」とは何か。
    自然や人間精神の研究の末織り上げられた南方マンダラの可能性とは?後継者のいない南方熊楠の思想、「旧石器的」な思考の中に、著者は未来の怪物的な子供を見出す。
    対称性理論への出発点となった記念碑的著作。

    [ 目次 ]
    第1章 市民としての南方熊楠
    第2章 南方マンダラの来歴
    第3章 燕石の神話論理
    第4章 南方民俗学入門
    第5章 粘菌とオートポイエーシス
    第6章 森のバロック
    第7章 今日の南方マンダラ

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 6月に読み始めて、途中で休読期間もありながら、読了するのに3ヶ月かかってしまった。
    20世紀初頭を生きた、南方熊楠という、生物学・民俗学・宗教学に精通した不思議な人物の伝記。

    思想というのは、アカデミズムに依ることで収束してしまいがちだが、彼の思想は、まさにその対極に位置し、収束せずに結実する、「南方曼荼羅」にたどり着いた。

    レヴィ・ストロースに代表される構造主義思考がほぼ無意識的に思考回路の底となっている昨今において、南方の原始性を損なわない発散的思考は、情報に溢れた現代において、むしろ参考となる点が多い。

    またじっくりと読んで、より深く理解したいものだ。

  • ここから、中沢新一の「対称性人類学」へ繋がって行く、と。
    南方熊楠「燕石考」について興味深く読みました。

  • 今まで読んだ熊楠関連本中でも一番いいとおもった。
    熊楠と中沢氏の2つの個性的な知の融合ってかんじ。
    すごい生命力が溢れてて、ワクワクした。

  • 南方熊楠の思想についての本。
    本草学と夢の思考と野生の思考は多様な領域をアナロジー
    分類の博物学からシステムとしてのオートポエーシスへ
    森のエコロジーは公楽論理の原神道マンダラ郷土
    ニルヴァーナと幽霊と高次元と粘菌

    中沢新一の本のなかでは一番読み応えがあった。一人の人間についてここまで粘っこく書いているのは他にない。それだけ南方熊楠は捕まえきるのが困難な多様な存在だったのだろう。こんな人間がいたことにわくわくしてしまった。中沢新一の以後の対称性人類学に繋がる一冊。

    粘菌は動物でも植物でもなく、性別も持たず、生と死も曖昧な存在。

  • 『読書の軌跡』阿部謹也より

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著者プロフィール

中沢新一(なかざわ・しんいち)
1950年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、明治大学野生の科学研究所所長。思想家。
著書に『アースダイバー』(桑原武夫学芸賞)、『大阪アースダイバー』、『カイエ・ソバージュ』(小林秀雄賞)、『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)、『森のバロック』(読売文学賞)『哲学の東北』(斎藤緑雨賞)など多数ある。

「2018年 『精霊の王』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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