文明の十字路=中央アジアの歴史 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社
3.52
  • (4)
  • (12)
  • (12)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 207
感想 : 10
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061598034

作品紹介・あらすじ

ヨーロッパ、インド、中国、中東の文明圏の彼方で、生き抜いてきた遊牧民たちの領域が中央アジアである。絹と黄金を運んだ悠久の交易路シルクロード。多くの民族と文化の邂逅と衝突。アレクサンドロス大王とチンギス・ハーンの侵攻…。仏教・ゾロアスター教・マニ教・ネストリウス派そしてイスラムもこの地を経由した。中央アジアの雄大な歴史をコンパクトにまとめた入門書。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  中央アジアの歴史というと、シルクロードのオアシス都市をすぐに連想する。
     中国史において西域との関係として史書に登場するほか、時代降ってチンギス汗のホラズム征服、あるいは近世ロシアの南下政策における関係などで対象となることはあるものの、ティムール帝国の勃興といったトピックを除いては、世界史における取り上げ方として従来は、周縁的な位置付けだったように思われる。

     最近でこそ中央ユーラシア史として捉える見方も増えてきたが、本書は中央アジアに焦点を当てて、その先史時代から現代(親本刊行時の1970年代)までの歴史を叙述したもので、取り上げる時代について精粗はあるものの、一般読者にとっては基礎的な知識を得るに適当だと思われる。

     一口に中央アジアと言っても、パミール高原から天山山脈にかけての地理的な障壁や環境の違いによって、東トルキスタンと西トルキスタンに大別され、その歴史にも大きな相違が生じた。その辺りが丁寧に説明されている。
     著者は、その戦い方や後世に残した影響などからチンギスに厳しくティムールの評価が高いが、この点についてはモンゴル帝国評価の時代的なものもあるのかなあと感じた。
     
     地図も載せられているのだが、広大な中央アジアが対象なので、もう少し分かりやすい地図が欲しかった。
     

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/740591

  • 古代から東西南北あらゆる方向から民族が侵入し、滅んでいくか、何処かにいくか、定着した。日本人には想像がしにくい世界を、古代から1970年代まで丁寧に紹介している。書かれた年代には、新石器時代辺りの歴史がほぼ不明だったが、最近の学術成果を取り入れた興亡の世界史で確認したい。

  • 中央アジア史を俯瞰して見られる電子書籍があまりに少なく、本書は旅行先で読めるものとして貴重だった。なん度も読み返し、この中央アジアの歴史の複雑性と悲運に頭がくらくらする。東西通商の中継地点として中央アジアを抑えることが中国やモンゴル、アラブやロシアなどの大国たちの定石だったんだろうが、それにしても王朝が入れ替わり立ち替わりで、血と涙が積もっているエリアだなぁと思った。

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    中央アジアの歴史を簡潔にまとめている。
    中央アジアの遊牧民がどのように生まれ、拡がっていたのか。
    世界史において中央アジアが果たした役割などを解説している。
    本書を読むことで理解できるのは遊牧民が農耕民に対し、遅れている民族という認識が誤っていることだろう。中央アジアの生態系や気候に適応したからという事が理解できた。

  • 2014/4/18
    砂漠とオアシスの未知の国、中央アジア。侵略と興亡でさまざまな民族が、人の往来を阻む砂漠や急峻な山脈を越えて通り過ぎる。ロマンチックである。考古学が強い著者なのか、古い時代は詳しく、新しい時代は駆け足のようだ。モンゴルから分裂したハン国のその後を詳しく知りたかったのに、あまり書かれていなかった。

  • これを読んでさらに分からなくなりました。(笑

    中央アジアの歴史の変遷というものは本当に激しく、ヨーロッパや中国などの比ではない。地元の勢力はあるものの、それより強大な帝国が時期ごとに東西南北すべての方向から波のように押し寄せてくる。これでは確かに安定的な政治体制の確立自体が難しい。

    それでなくても、定住できるオアシスが限られているので遊牧民が多く、都市的な発展をしにくかったという事情もある。読めば読むほど、今も燃えている火種がいかに消しがたいものかということはわかる。

    叙事詩のように淡々と各時代各帝国の英雄たちが現れ死んでいくので、テンポはいいが頭に入りきらないところもある。このような落ちこぼれのために最後に年表もあるのはちょっと嬉しい。

  • 1977年刊行

    中央アジアの歴史についての教科書という感じの本書。
    筆者が「歴史というものは、個々の事象を詳細に調べるということだけに止まるものではない。相当の期間にわたる変化の過程を一つのまとまったイメージとして理解することも必要である」というように、本書では中央アジアについて、その歴史全体の中で考えることができる。さらに、中央アジアは、中国やロシア、アフガニスタンなど、周辺国の歴史との関連からも考えることが非常に大切だと感じた。

全10件中 1 - 10件を表示

岩村忍の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
フェルナン・ブロ...
ヴィクトール・E...
三浦 しをん
タミム・アンサー...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×