英文収録 おくのほそ道 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061598140

作品紹介・あらすじ

元禄二年、曾良を伴い、奥羽・北陸の歌枕を訪い綴った『おくのほそ道』は日本文学史に燦然と輝く傑作である。簡潔で磨き抜かれた芸術性の高い文章、円熟した境地。私たち誰でもが馴染み親しむ数多くの名句も鏤められ、「わび」「さび」「かるみ」などの詩情が詠出される。日本人の心の文学は英語ではどのように表現されるのか。日本文学に造詣の深いキーン氏の訳で芭蕉の名作を読む。

感想・レビュー・書評

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  •  江戸時代(たぶん綱吉の時代?)に千住から東北の松島、平泉を経て、日本海側に出て、そこから新潟経由でずっと琵琶湖まで南下して最後は大垣で終わるという紀行文。『地球の歩き方』的な場所の説明(歴史とか)+その前後を含めた芭蕉自身がやったこと+感想+俳句(芭蕉と一緒に行った弟子の曾良の句も)、という内容。ドナルド・キーンの解説、英訳がついている。
     まず『おくのほそ道』がこんな短い話だとは思わなかった。ドナルド・キーンも書いているが「文庫本にすれば五十ページ足らずしかないテキスト」(p.88)で、字面を追うだけならすぐに出来てしまう。あと弟子と行ったということも知らなければ、てっきり東北に行って帰ってきた話かと思いきや、北限は平泉とかその辺で、そっから日本海側に行って大垣で終わるなんて思いもしなかった。あとは俳句が一杯あるのかと思いきや、思ったほどには俳句だらけという訳でもないのも印象と違っていた。「江戸を出発する前に松島の月を何よりも楽しみにしていたようであるが、松島についても俳句を一つも作らなった。松島に幻滅したというわけではないが、なにか真底、感動的な風景の前に立つと、芭蕉は口を閉じる傾向があった。松島の風景を見事な散文で描いたが、俳句は曾良に任せた。」(p.90)だそうだ。てっきり「松島やああ松島や」みたいな句が出てくるのかと思っていた。
     というのが全体的な話。あと解説には「どの旅にも不安が付き物だが、芭蕉は楽しみの多い旅行になるだろうと期待していた」(p.88)と書いてあるが、おれの印象では、結構「旅は大変、怖い、死ぬかもしれない、心細い、疲れた」みたいなネガティブなことがたくさん書かれている気がする。特に16の「飯塚」なんて「持病さへおこりて、消え入る計になん。」(p.41 英訳はI had an attack of my usual complaint, so severe I almost fainted.って「消え入る」はfaintedなのか、とか思った)とか、「遥かなる行く末をかゝえて、斯かる病覚束なしといへど~」(英訳 I felt uneasy over my illness, recalling how far away our destination was, but I reasoned with myself that when I started out on this journey to remote parts of the country it was with an awareness that I was risking my life. Even if I should die on the road, this would be the will of Heaven.)って、なんか江戸時代にアジアにやってくる宣教師みたいな感じだ。今の日本人からするとアフリカを彷徨うような感じなんだろうか。
     あとは英語。古文とか本当に普段読んだことないので、って古文というほどの古文ではないのかもしれないけど、まず古文を読んで、あんまりよく分からず、次に英語を読んで、こんなこと言ってたの?とか、これどういうこと?とか思ってまた古文を読み返す、という感じで進めていったので、意外と読むのに時間がかかった気がする。
     あとは面白いと思った訳のメモなど。「野夫といへども、さすがに情けしらぬには非ず。」(p.31 那須)は"He was only a rough, country fellow, but he was not without feelings." (p.151)。あと羽黒のところで「風土記」(p.56)が出てくるが訳はgazeteer(p.118)で、gazetteという単語を知らなかった。あと象潟の、「松島は笑ふが如く、象潟はうらむがごとし。」(p.60)というのも、なんか象潟の人が怒りそうな気がするが、とりあえず面白いと思った。ちなみに英語は"Matsushima seems to be smiling, but Kisakata wears a look of grief."。他にもいくつかあったので、もう1度通読して確かめる必要がある。
     東北の地名が色々出てくるので、大学の時に青春18きっぷであちこち旅行したことを色々思い出した本でもあった。最後の大垣だって、東海道線乗れば絶対乗り換える駅だし。こういう有名な日本の本というのをもっとこれから読んでみたい。(18/12/28)

  • 単純に意味が取れなかったり、古典を引いているのか何のことやら分からなかったりで、正直、その魅力を味わいきったとは思わない。ムダをそぎ落としたような文章で案外みじかかった。

    ドナルド・キーンの解説によれば、必ずしも事実に沿った紀行文ではなくてかなりの脚色が入っていることが、後年、曾良の日記がみつかったことで明らかになったという。収められた俳句も即興ではなく推敲に推敲を重ねたことがわかっている。芭蕉が理想とする旅情を演出したと言うとウソっぽくも感じられるが、とはいっても自分の脚だけで旅をするわけであり、出発に当たっての惜別の情だとか現代と違うものがあったのだろう。

  • 日本文学研究者のドナルド・キーン氏による英訳がついた『奥の細道』。表紙から読み進めれば日本語版の原文が、裏表紙から読めばキーン氏の翻訳による英語版が読めます。

    これを読むまで『奥の細道』が単なる旅先での俳句を集めただけのものではなく、紀行文としてきちんとした文章があり、その中でちょこちょこと俳句が置かれているというものなのだ、ということを知りませんでした。そんな浅学な自分であっても、日本語版を読むと芭蕉の文章の美しさというか、まさに「流麗でさらっと読み進められる」という感覚を味わうことができました。昔の仮名遣いの文章でそれが感じられるというのは、やはり凄いことだと思います。

    そんな中で、読んでいて日本語の意味が分からない部分については、英語の方を読むことで理解できたりするのがまた面白い。対訳のメリットを感じることができました。

    教養としても娯楽としても、本棚に置いておくメリットは大きいと思います。

  • 日本人とは違った見方が楽しめる

  • キーン氏の英訳は読んでいて楽しい。そこに到達するまでの道程をイメージする楽しみ。

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著者プロフィール

江戸時代の俳人。1644~1694。


「2015年 『女声合唱とピアノのための おくのほそ道――みちのくへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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