日本神話の源流 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061598201

作品紹介・あらすじ

太平洋の海洋文化圏、中国・朝鮮半島の遊牧・農耕文化圏、北方狩猟文化圏と接する日本列島。先史時代より、いくつもの波のように日本に到来した人々がいた。我々のルーツはどこなのか。日本神話は、東南アジア地域ばかりか、印欧語族の古神話と、同一の構造を備えていることも明らかになった。日本神話の起源・系統、その全体構造や宗教的意味を、比較神話学で徹底的に解読する。

感想・レビュー・書評

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  • 比較神話学の立場から、日本神話の起源について考察している本です。

    著者は、日本神話のなかの海幸彦と山幸彦の話や、オオゲツヒメが食物を生む農耕の起源に関する話などが、南洋の神話と共通点をもっていることを指摘し、中国江南地方にそのルーツを求める見方を示しています。その一方で著者は、イザナギとイザナミの黄泉の国の話が、ギリシア神話におけるオルフェウスが冥界に赴く話との共通性を指摘し、スキタイ神話や朝鮮の檀君神話などとの比較を通して、アルタイ系遊牧民を仲介する印欧語族の神話とのつながりを見いだせると主張しています。

    さらに著者は、デュメジルの比較神話学の観点から、日本神話と印欧語系諸民族の神話のあいだに個別的な共通点が見られるだけではなく、それらを統一的な神話へと組織するイデオロギーに共通の特徴が見られることを明らかにしています。

    河合隼雄も神話の比較をおこなうことで、日本神話のうちに「中空構造」という性格を見いだし、ヨーロッパ諸民族の深層心理との対比的な側面を強調していましたが、そこには母性社会と父性社会という河合独自の文化論が反映されていたように思います。これに対して本書は、デュメジルの神話学が下敷きになっていますが、日本神話の源流を印欧諸民族の神話に求めるのではなく、その構造的な類似性に注目することも可能だったのではないかという気がします。

  • 本書は40年も前に書かれたものが文庫としてよみがえったものです。神話・・・この古くて新しいテーマ。現在の研究がどのようになっているのか、私は全く知らないのですが、著者自身が文庫本の前書きで書かれているように、現在でも神話学の入門書として本書は十分に役立つものでしょう。日本の神話とヨーロッパやその他の地域における神話との比較研究によって、いくつもの共通項が見出されるそうです。それは偶然の一致では済ませられない。つまりルーツを同じくして、人類や文化の移動とともに伝わってきた神話が多々あるはずだというのです。少しこじつけのように感じられなくもないのですが、でも同じところと違うところを見つけ出すことで、古代の人々が何をどのように感じたかが伝わってくることもあるのでしょう。そのことが現在の日本人の心の奥深くにも刻まれているのかもしれません。それにしても何と不思議な神話が多いことか。読めば読むほど不思議な神話。そこから今何が読み取れるのか。もっともっと勉強の必要があります

  • 40年以上前に出された本を底本としているが、しっかりした内容でそんなに古さは感じなかった

  • 正直、薄いので期待していなかったが、いきなりやられた。
    直前に読んでいた大林太良著「日本神話の起源」で、
    日本の文化がいろいろな文化の影響を受けた「るつぼ」(236頁)と紹介されていた。
    しかし、私の個人的感覚では「吹き溜まり」なんだよなぁと思っていたところ、
    まさに最初の部分でその言葉があった。
    そうそう、「るつぼ」という言葉の持つ混沌や熱気よりは、
    地理的条件で受動的に寄せられてきましたという「吹き溜まり」の方が、日本文化の形容にはぴったりくる。

    内容がうまくまとめられて、かなりわかりやすかった。
    他の本で読んだ「日本の神話には、世界各地の神話が含まれている」という説明が、決して大げさでなかったことがよくわかる。

    現代社会で先進国といわれる日本で、
    鹿の模型を射て、その中に納めた食物を食べるという祭りが、
    伝承されており、
    ハイヌウェレ型神話(かなり残酷な形で具現化されることこともある)、そのまんま、という不思議さには、本当に感心した。

    日本は、渡ってきた文化をどういった基準で選択してきたのか、
    同一感を何によって保っているのか、
    まだまだ謎はつきない。

  • 日本神話と南洋地域との共通性は面白かった。
    古事記、日本書紀は朝廷が権威付けの為に編纂したものだろうけど
    それよりも古来から伝わる口承なんかもたくさん取り入れたんだろうなぁと思う。
    ギリシャとの共通点はよく分からなかった。確かに編纂時期より少し後に天平文化なんかもあるし。伝わってきたのかあるいは。

  • 神話学者 吉田敦彦氏の1976年の著書を底本とした
    文庫版。
    30年前の著書であるが、そこからとりわけ否定や異論を
    重ねていないところからすれば、
    おおよそその時点で吉田氏の見方ははっきりしたものが
    あったということであろう。

    大林太良氏とほぼ考え方を同じにしており、
    日本神話のルーツの研究状況においてはこうした研究者の
    知見を学ぶことができれば、教養としては十二分に
    得られるように思う。

    本書はオセアニア、東南アジア、中央アジアからギリシアに至るまでの
    広い世界の神話との比較研究から、日本神話のルーツを
    わかりやすく提示してくれる。
    大変読みやすい。

    興味深いのは、ニューギニアのマリンド・アニム族のマヨ祭儀という
    成人儀式の話である。
    現代的・西欧的感覚からすると非常に「残酷」な儀式であるが、
    それはあくまでそちらの価値観ではそう思われるということだ、
    ということを著者は指摘する。
    彼らが残酷な民族なのではない。その儀式には、彼らの神話体系の
    中で、食べるものを得る、その食べ物が彼らにもたらされるようになった
    ルーツの神話はまさに真実なのであり、それに基づいた伝統のやり方
    なのである。

    本書第六章では「日本神界の三機能的構造」ということで、
    三種の神器に対応する三種機能の分担があると指摘する。
    1が祭司=主権者、2が戦士、3が食糧生産者=庶民、
    ということである。

    p.202の短い記述を抜粋すると
    「日本神話の神界が、人間社会の理想的構成について神話が抱いていた
     観念を反映し、三種類の社会的機能を分担する神々によって構成
     されるとみなされていた」
    ということで、非常に納得した。

    そして、この三機能分類は中央アジアの古代のスキュタイ王家の神話に
    原点があるのだという。
    日本では、この三分類はそれぞれ
    「アマテラス、スサノオ、オオクニヌシ」に当てはまる。
    神器であれば、鏡、剣、珠、となる。

    となると、いわゆる「国譲り」の神話がなぜそうなるのかの説明が
    なんとなくできるような気がした。
    生産者の庶民を主権・祭司である天皇家が統治することを正当化する、
    まさにそういう話なのだ、と。
    庶民と祭司は「発生のルーツ」が違うのだから、ゆえにその血統も神格化
    される、という話かと思う。

  • 2008/7/11読了

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プロフィール

1960年大阪府生まれ。京都大学大学院教育学研究科修了。博士(教育学)。大阪府立大学人間社会学研究科・教育福祉学類教授。日本ホリスティック教育協会代表、トロント大学大学院OISE客員教授、NPO法人京田辺シュタイナー学校代表理事等を歴任。著書に『ホリスティック教育論―日本の動向と思想の地平』『ブーバー対話論とホリスティック教育―他者・呼びかけ・応答』『世界のホリスティック教育―もうひとつの持続可能な未来へ』ほか。

「2015年 『講座スピリチュアル学 第5巻 スピリチュアリティと教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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