- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061598256
作品紹介・あらすじ
敗戦二日後に誕生した東久邇内閣を皮切りとして、七年後の占領統治の終焉までに、幣原、吉田、片山、芦田、再び吉田と五人の首相、六代の内閣が生まれた。眼前には、非軍事化、民主化、食糧難、新憲法制定等、難問が山積する。占領という未曾有の難局、苛烈をきわめるGHQの指令のもとで、日本再生の重責を担った歴代首相たちの事績と人間像に迫る。
感想・レビュー・書評
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「まえがき」によると、「本書は占領下で重い荷を負った「首相たちの新日本」を再現せんとする試みである。五人・六代の首相たちが、何を想い、何を資源として、この地に堕ちた国を支え上げようとしたか。そして何に成功し、何に行き詰ったか。「人とその時代」を六つ重ね合わせるスタイルで描こうとの試みである。」とされている。
占領下の激動の時代、幣原内閣時の憲法制定を巡るGHQとの闘い、政党幹部の公職追放と吉田内閣の誕生、短命に終わった左派、中道政権、そして吉田長期政権へといった節目についての知識はある程度持っていたのだが、本書では首相に焦点を当てて、その政治指導者としての在り方にスポットを当てて読み物風に叙述がされているので、とても読みやすかった。
特に東久邇内閣は非常に短命に終わった宮様内閣といったイメージしかなかったので、その人物像を始め、閣内での近衛と重光外相との対立など初めて知ることも多く、非常に興味深かった。
そして、GHQ民生局(GS)のケーディス次長が吉田を毛嫌いし、片山哲、芦田均という進歩派による内閣をバックアップしたにもかかわらず、両内閣とも政権運営に失敗してしまった詳しい事情を知ることもできた。社会・民主・国協三党連立による片山内閣では、西尾末広官房長官と平野力三農相が実力者であったが、社会党内の右派、左派、その他勢力による党内バランスの崩れが影響し総辞職となり、後を引き継いだ形の民主党を中心とする芦田内閣も、直接には昭電疑獄事件による退陣であるが、著者は「芦田は首相にたどりついた時点で、もはや政策課題をもたなくなっていたように思われる」と厳しい評価であるが、同時に、もう少し早く首相になっていれば民主化改革ができたし、もう少し遅く首相になっていれば講和外交ができた人であった、ともしている。
占領下、民生局と闘った吉田が自分の政治を作ることに成功し、長期政権を作り戦後日本の方向性を確立した。それが本書の著者を含め、多くの識者による吉田政権への高い評価につながるのだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/740601 -
東久邇、幣原、吉田、片山、芦田各首相個人に焦点を置いた占領期政治史。時系列の史実を下敷きにしているが、通史というよりは反共保守主義的立場からの政局論兼リーダー論で、かなり主観的、恣意的。対象人物によって叙述に精粗の差がある(幣原の章が最もよく書けている)。
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あまり焦点が当たることがない、東久邇宮、幣原、片山、芦田内閣と人となりについての記述が豊富で、その部分は新鮮。吉田に関しての記述については、高坂『宰相吉田茂』をかつて読んだこともあってか、あまり感じなかった。